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サタン@現実世界/カイ・グランデ編

虐待叔父へ、渾身の"育ててくれてありがとうパンチ"

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その後、俺は叔父の家を20歳の頃に出た。

その頃の俺はケンカ三昧だったせいもあり、叔父やいとこ(男)の体格も軽く凌駕。

だから、仁義に厚い俺は、家族に対して育ててくれたお礼をしていくことにした。

叔父に対してはガードする腕を引き剥がしながら、"育ててくれてありがとうパンチ"を顔面に50発くれてやり、さらにぐったりしたところで腕をバンザイの状態にして足を限界まで振り上げた膝蹴りを30発顔面にお見舞いして、ドブ川に放り投げた。

まだ息があるだけありがたいと思ってもらいたい。

が、その後も怒りの収まらなかった俺は、叔父がこっそりギャンブルでやっていたイカサマを元締めマフィアの人に教えてあげたところ、その後姿を見ることは無かった。

きっとどっかの地下で元気にやってるだろう。

そして、いとこ(男)は勉強嫌いのバカの分際で反政府のレジスタンスに加盟。定期的に会合に行って、虎視眈々と進めているようだったので、パリの警察に反乱分子の情報と、いとこを尾行するよう教えてあげた。

するとレジスタンスのアジトはすぐにバレ、いとこは現行犯で連れて行かれた。(その後は知らん)

いとこ(女)は俺の母親の金で行った学校を結局中退し、クソ叔父に似たのか、ギャンブルで多額の借金を作り、娼婦に成り下がっていた。

しかし、なじみの男から身請けの良いお話があったらしく、とても喜んでいたので、俺はその男性へ接触。

いとこの家族として、あの女の醜悪さと、性病持ちを隠していることを伝えた上で、隣街の超美人の娼婦の情報を教えたところ、あっさり乗り換え。

身請けの話は、白紙に戻して差し上げた。

ミランダ叔母さんは、叔父と息子の失踪、娘の娼館行きにより、孤独になっていた。

「ねえ、あんた。旦那とあの子は生きてると思うかい?あたし、寂しいよ……」

ある時、俺にそう聞きながら、涙を拭う。

だが、こいつも俺が叔父からぶん殴られてる時も見て見ぬふりをしていた。

しかも、俺の母親の金で娘を学校へ通わせるという最低極まりない行為までしていた。

自分のゴミクズのような家族のために実の姉の頼みを無下にしたのだ。

少し母親に似た横顔だが、それが余計に腹が立つ。

だから、俺はこいつにやられたように無関心でいることを決めた。

「………知らん。多分、死んだっしょ。別に何の役にも立たないクズなんだし、生きてても死んでても変わらねーじゃん」

そう言ってあくびしてやった。

「お前が犯人なんだろ!!」

「はぁ?」

「お前があの日、お父さんに手をあげて川に投げたの、知ってるんだよ!」

ミランダ叔母さんは大声で泣き始めた。

「だったらなんなんだよ?」

「育ててもらった恩を仇で返すなんて!」

叔母は絶叫したが、俺は耳の穴をポリポリしながら投げやりに言った。

「聞こえねーな。俺ァ、あのクズのおかげで右耳が聞こえなくなっちまったからよ」

「ううう……あの人たちを返して……おくれよ………」

「まぁ、一応、どうなったか知ってるけど、多分確実に死んでるよ」


「う、うわあああぁぁぁぁぁ!!!」


その回答を聞いた叔母は半狂乱で絶叫した。

叔父や息子とかのゴミクズを思いやる気持ちがあるなら、その愛情を少しでもこっちに向けとけやクソババア。

ーーー因果応報。それだけだ。

その女々しい泣き声を聞きながら、俺は育った家を出て行ったのだった。




ーーーそこから10年以上経ち、31歳になるも、未だに本を読んでくれる人は見つからないままだ。

そりゃそうだ。類は友を呼ぶ。

俺の周りにはスラムと暴力しか無かったのだから。

たが、この前あの謎の男を銃撃した後、何を思ったのか、あいつは俺に仕事を与えてきた。

ここら辺ではかなり設備の整ったネジ工場だ。

(何者なんだあいつ……)

ここの工場長と知り合いらしく、あれよあれよという間に決まってしまった。

その日暮らしの生活をずっとしていたが、初めての定職。

学の無い俺が初めて安定した収入を得られるのは、正直嬉しかった。

ーーー今日はその初日。

工場のシャッターの前に着いた。

だが、工場の奴らに舐められる訳にはいかない。

少しでも舐めた奴がいたら、思いっきりぶん殴って辞めてやる。

そう決めていた。

(……っし。いくか)

少し埃っぽい重いシャッターを開けて、中に入っていく。

「おう、おめーか」

「ん?なんだお前?」


ーーーその瞬間、俺の頬を巨大な拳が襲った。


「ぶっっっっっふぇっ!!」
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