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サタン@異世界編PART2

ガリレオの娘マリアvsチンピラ

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【カイ・グランデ視点】


「ちょっ!!待て!!」


ーーープチュン。


空間が閉じる音がすると、目の前でルシフェルとカトリーナが飲み込まれて消えていった。

(転移魔法っぽいな……)

だから大丈夫ということでは全くない。

今までは最強のルシフェル(サタン)がいたからこそ、目の前のバケモンと対等に戦えていた。

しかし、今いるのは俺のみ。

刀を持っている所を見るに、メイド風の女は戦えそうだが、気を失ってしまっている。

もう1人はイスに縛られて動けない。

(クソが……。絶対絶命だな……)


あとはカトリーナが忘れていったポーポーのみ。

瞳のレンズが光っている所を見ると、録画になっているようだ。

(俺が死んだら、この教会をぶっ潰さなければ気が済まねぇ……。どっちにしても炎上させてやる……)

エーギルは転移魔法で魔力を食ったのか、少し息が上がっている。

俺は急いでポーポーに駆け寄ると、速攻で操作して『ライブ配信モード』に切り替えた。

すぐにポーポーの目に、視聴者数が表示される。

(切り替えて一瞬で2万人って……。どんだけ人気なんだよ)

俺は視聴者にも今の状況がわかるように、しかしエーギルにライブ配信がバレないように声を上げた。

「テメー!ルシ……『サタン』とカトリーナをどこへやった!?ピッピンプンスカ教会、悪の大司教エーギル!!」

「なんですか、その口調は……。ククク、ですが、もう助けは来ませんよ。諦めて死になさい。死に損ないのサンプル③」

「テメー……今まで実験とか言って、何人殺してきた……?その中には女子供もいたんだろうが!!」

「はぁ?……信者のことなどいちいち覚えていませんよ。100か200くらいじゃないですか?」

「イカれてやがる……」

「怪物ウニで頭ラリって気持ちよく財産を吐き出して、さらに私の研究の礎になるのです。むしろありがたく思ってほしいものです」

エーギルは袖で口を押さえながら笑う。

ポーポーの目には、リアルタイムでコメントが流れる。



『これ、マ?』


『殺しを100~200って言って覚えてないあたり、サイコパス極めてる』


『てか、これ隠し撮り?ここまで全部自白してたら詰んだでしょ』


『ピッピンプンスカ教会、黒確定で草』



(よし。もう十分だな……。あとは、ルシフェルたちにお土産残しといてやるか……)

「あと、ガリレオの娘、マリアを知っているか!?彼女とその旦那はどこだ!!」

「ああ……。マリアですか。彼女も『プリビアスキャッチャー』でしたので、色々と実験しましたよ。そして、今は完全なる『意志持つ神の僕(しもべ)』として布教しています」

「意志持つ神の僕……?」

「ククク。彼女は私の中で最高傑作です。……マリア!出てきなさい」

そう言うと、奥の部屋からぬるりと人影が現れた。

トッ、トッ、トッ……。

一歩一歩踏み出してくるが、足取りも普通の人間とリズムが少し違う。

さらに歩みを進めたところで、全体が見えてくる。

身長は170cmちょい。サラサラの金髪で鼻立ちも整っている。

歳は30代だろうか。

女性用の教会の祭服を着て、両手でペペンのミニチュア像を握りしめていた。

「ククク。彼女は他の信者と違います。しっかり自分の意志でここにいるのです」

「自分の意志だと?」

「そうです。……マリア、彼に自己紹介を」

そう言うとエーギルは彼女の背後に回って、壁に寄りかかった。

マリアは俺の2mくらいまで近づくと、生気なく血色の悪い顔で、笑顔を作った。

「マリアと申します。以後よろしくお願いします」

「な、なんだ?洗脳されてねーのか?」

てっきり俺は「ペペーーン!」とか言って襲い掛かってくるものだと思っていたので拍子抜けする。

「洗脳?なんのことでしょう?」

「まあいい。俺たちはガリレオとかいうあんたの父親の依頼であんたを連れ戻しにここに来た。一緒に帰ってもらうぜ」

「そうですか。父が……。ですが、神の教えを広めることこそ私の使命。そのためには家族など………か、家族な……ど……」

「……マリア。ペペン神の御前ですよ」

一瞬、何かを思って止まったように見えたが、エーギルが一言放つと、マリアはハッと顔を上げた。

「え、ええ。エーギル様。……こほん。失礼しました。……家族もきっと理解してくれるはずですわ。ペペン様の僕になれたのですから……」

「いや、理解してくれてねーと思うぜ。こんな怪しすぎる教会と豚みてーな神のことなんざ」

「……言葉を慎みなさい。あなたも祭服を着ているところを見ると一度は教会の門をくぐった者でしょう。神への侮辱は大罪ですよ」

「豚で決」

「貴様……!ですが、あなたに私のことをとやかく言われる筋合いはありません。今すぐお引き取りを。……黄泉へですが」

「あ?」

そう言うとマリアはペペンの像を両手で掲げ、言った。

「消えなさい」
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