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第13.5話 幼いオルクスの使い方【ゲルマン編】
ーー5年前
「げ、ゲルマン先生僕は確かに剣術も勉学も凡庸で覚えもよくありません、しかしこんなところ行きたくありません」
「いやオルクスこれも大事な事なんだ、我が儘言ってないでついてきなさい」
そう言ってゲルマンはオルクスの手を引いて目の前のカジノへと入った。
「オルクスよ、お前は剣術も勉強も平凡以下で正直師匠として儂も肩身が狭い、しかしそんなお前にも一つだけ誰にも負けない取り柄がある」
「な、なんですか?」
「運じゃ」
長い廊下を抜け広いところに出ると沢山の貴族がルーレットを取り囲んで楽しんでいた。
「おい!黒だろ黒!」
「いや赤だね!」
「うるせぇな外野は黙ってろよ!」
オルクスはそんな大人たちの気迫を見て圧倒されてしまった。
「せ、先生!やっぱり僕は帰ります」
「おいおい何を言っておるんだ、お前がおらんと始まらんじゃろうが」
ゲルマンは嫌がるオルクスを無理やり抱き抱えルーレットの方へと向かった。
「おお、ゲルマンさん久しぶりだね!」
「やぁお前たち」
「でもゲルマンさん、子連れはまずいよ」
「大丈夫、大丈夫こいつはそういうの平気だから」
平気ではないと言いたかったが、オルクスは周りの大人たちの異様な雰囲気に気圧され話す事ができなくなっていた。
「さぁて、儂も参加するぞぉ」
「おいおいゲルマンさん、大丈夫かよこの前ぼろ負けだったじゃないか」
「大丈夫、大丈夫今日は息子も来てるし勝てる勝てる」
どうやらオルクスはゲルマンの息子として扱われているらしい。
やる気になったゲルマンはさっき換金したコインを全部机の上に乗せた。
「よし次のゲームで儂はここのコイン全部を賭けるぞ」
「おいおいゲルマンさん、やる気あんのかい」
「やる気?失礼な勝つ気しかないぞ」
「おいおい大丈夫かよ……」
ゲルマンはそう言うとオルクスに小さな声で耳打ちをした。
「おいオルクス、どの数字が当たると思う?」
「わ、わかんないですよ」
「なら好きな数字を言え」
「さ、31です」
「よしわかった」
ゲルマンはそのままオルクスの言った31に全額突っ込んだ。
「おいおいゲルマンさんそれじゃあストレートアップ(一点賭け)になってるよ」
「ああそのつもりじゃよ」
「あんた頭大丈夫かよ……」
「あっははおもしれぇなゲルマンさんは」
周りの大人達はゲルマンの賭け方を見て、心配したり笑ったりしていた。
「さぁはじめてくれ」
ゲルマンは自信たっぷりにそう言った。
約30分後2人はカジノから出てきた。
「オルクスよお前はそのままでいろ」
「い、いやですよ強くなりたくて先生に習ってるんですから」
「いやお前は弱くて良い、この運が有ればな」
そう語るゲルマンはとても卑しい顔をしている。
そして両手にはパンパンに膨らんだ大きなトランクを持っていた。
「そ、そんなにお金が大事ですか?」
オルクスはヤバめな顔をするゲルマンを見て不安になりそう訊ねた。
「オルクスよ人はお金のために働く、そして儂ら冒険者はより多くのお金を稼ぐために強くなる」
「はい」
ゲルマンはさっきまでの下品な顔つきとは打って変わり真剣な顔をして答えた。
「しかしなオルクスよお前はもうすでに沢山のお金を稼ぐ事ができる」
「え?」
「故にオルクス、お前はカジノで暮らせ」
「は、はぁ」
真剣な顔のままゲルマンはそう言った。
オルクスはそれを聞いてこんな大人にはなってはいかんなと素直にそう思った。
そして同時にゲルマンに対する尊敬の念が消えていった。
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