隠れ勇者の居残りハーレム

Na7saka

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第一章 ファーストセックスから始まる物語

第3話  良心の行方

 朝がきた。

「……」

 天井とにらめっこをするのもそこそこに起き上がる。靴を履いて窓際に行き、カーテンを開けた。

「ふわぁ……」

 いい天気にあくびが出る。この日の昇りようからして朝と呼ぶには遅い時間だというのが予測できた。確かめるため壁にかかる時計を見ると十時半。感覚が間違っていなかった嬉しさ半面、怠惰な起床時間にやっぱりあくびが出た。

 この世界でも一日の時間、そして曜日の間隔も名称以外は変わらない。

「……お腹空いたな」

 呟いて待っても食事は運ばれてこなかった。当たり前だけど。

 寝室から移動して執務机を見る。その上に紙切れが一枚、昨日イヴが言ってた敷地図か。どうやら建物は森を開いて建てられているらしい。随分と広いな。大きな建物が三つとその周りに小さな建物がいくつか。騎士以外のスタッフも多いことが窺えた。

 グラウンドは大きく取られている。そして、建物を挟んだ側が中庭に見えた。そこに大きな池が一つあるようだ。

 敷地図に書かれた建物を中心に指を滑らせて文字を確認していく。食堂は……この建物の一階か。建物は三階まであって、さらに地下にも一階ある。掃除だけでも大変そうだ。

 敷地図の確認を終えて部屋を出る。窓から差し込む明かりで廊下の雰囲気が夜とは違う。ただ、静かなのは変わっていなかった。

 窓から外を覗くとグラウンドが見える。

「何かやってるな」

 遠目でよく分からないけどトレーニングか? 七人の集団が三つあり、一人がその様子を少し離れた場所から見ていた。

 全員で二十二人。確か騎士は二十三人と言っていたはず。どういう構成になっているのか気になります、とか思ったりして。この世界では当たり前のことも俺にとっては珍しい。現実で剣を振り回す姿にわくわくしないほど男として枯れてはいなかった。

 階段を下りて洗面台が並ぶ場所を見つけたので顔を洗う。大量に積まれているタオルを一つ取って水を拭き取り、使ったタオルはここに投げ入れろと主張するボックスに放り込む。

 それから向かった食堂は五十人が同時に食事をとれそうな空間だった。壁際に長いカウンターがあって、その向こうが広い調理場だ。

「あ、噂の男の子?」

 調理場から一人の少女が顔を出す。髪の毛を布で覆っていることから調理師であることを推理する、というか調理場にいる時点でな。さらに言えばメイド服のような作りの服を着ているから騎士ではないと思う。くるりとした目が印象的で、薄いそばかすが田舎を連想させた。いや、偏見か。

「どんな噂?」

「えー、あたしの口からは言えないなぁ」

 ろくでもないことなのは分かった。

「ご飯?」

「もらえるのなら」

「作るからちょっと待っててね」

 調理場に引っ込んだそばかす娘を置いて長いテーブルに一人寂しく座った。

 寝て起きてご飯を食べる、実にいい身分だ。まあ勝手に異世界に呼ばれたんだからそれぐらいしてもらってもバチは当たらないと思うけど。本来は魔王を倒すための存在だったんだよな。なら今の俺はただのごく潰し?

 仕事を探したほうが、って考えは真面目すぎか。俺に落ち度があってこんな状況になったわけじゃないんだし。イヴの言葉を思い出せば性処理要員。そういえば相手は騎士って言ってたような。そばかす娘は別枠? 別に襲うつもりはないんだが。

 天井に吊り下がるシャンデリアの掃除も大変だよなぁ、と余計な心配をしていると横からテーブルにお皿が置かれた。

「へいお待ち。残り物サンドイッチに残り物スープになります」

「ありがとう」

 サンドイッチが二つにコーンスープかな。残り物にしては美味しそうだ。

「あたしジェシカ。調理場のスタッフだよ」

 隣に座るのかよ。

「クロクスだ。えっと、孤児でヘンドリクセンとかいうとこの養子になった」

 名前、合ってるよな。

「ええ! あのヘンドリクセン家!?」

「へぇ、有名なんだな」

 そこまでは知られてなかったのか。

「何人も有名な騎士を輩出してる名門だよ! 何で知らないの?」

「あー、世事に疎いとかそういうやつ」

「なるほど、秘密ってことだ」

「そのままの意味で受け取ってくれ」

 噂に変な尾ひれがつきそうだ。

「あ、気にせず食べてね」

「いただきます」

 輝かせた目を向けられては食べにくいが、サンドイッチを手に取って頬張る。中身はベーコンに目玉焼きだ。ソースはケチャップかな。当然美味しいし、馴染みがある味なのも嬉しかった。

「どう?」

「美味しいよ」

 そばかす娘、もといジェシカは返答に笑顔を見せる。イヴみたいに美人強度マックスではないけど、親しみやすい笑顔は人を惑わせそうだった。

 コーンスープもサンドイッチに負けず劣らず。いい食堂だ。

「ジェシカ以外に人が見当たらないのは時間外だから?」

「そうだね、食事時はもっといるよ。いつでも提供できるように一人は常駐してるんだよね」

 こう仕事ぶりを見せられるとごく潰しでいるのが心苦しく思えてしまう。性分だから仕方ないか。





 食事を済ませて食堂を後にする。しかし、やることがないのであった。

 グラウンドではまだトレーニング中だ。近くで見学でもして仕事をした気になるのもいいかもしれない。アドバイザー的な。厳しい顔して頷いてればそれっぽく見えるに違いない。サングラスでもあれば完璧だけど、この世界にあるのかどうかが問題だ。

 外に出て日の光を浴びる。基本的にこもりっぱなしだったし、意識を失っていた期間も考えれば久しぶりの光合成と言える。くさタイプでなくても気持ちが良かった。

 水はけが良さそうな土を踏みしめながら近づくにつれ、離れて立っているのはイヴだということが分かった。髪の毛以外にも立ち姿に雰囲気がある。

 昨日とは違った服装だな。下がショートパンツみたいで露出度が増しているが、トレーニング用とかなのか。刺繍がされていて安物感は皆無だ。

「クロクスか、おはよう」

 気配に気づいたイヴが振り返って挨拶をしてくれた。遅い起床に突っ込みはなし。こんな美人になら攻められるのも悪くないと思ってたのに。

「おはよう、イヴ」

 馴れてないからか、呼ぶのも呼ばれるのもムズムズする。

「昨日の話、考えてくれただろうか」

「騎士団の従士になるって話?」

「所属する騎士を好きにしてよいという話だ」

「……」

 改めて聞いても頭の悪い話だな。グラウンドで走る騎士はパッと見でも綺麗どころしかいない。そのために選ばれたと思うのは勘違いなのかどうか。

 イヴの言うことは魅力的でしかないが、望んで初対面、しかも異世界からきた相手に抱かれたいと思っている騎士がどれだけいるか。自己評価ではそれほど不細工ではないつもりだけど、わざわざ俺を選ぶかっていう。

 ここはイヴに犠牲になってもらうのも手かな。総長とか言ってたし、この中では一番偉いはず。無理やり襲って他の騎士にはドン引きしてもらおう。俺にだって良心はあるのだ。でも、色々考えてるうちに憤りも湧いてきた。ちょっとぐらい好きにしたってな。

「イヴ」

「なんっ!」

 イヴの腰を抱いて引き寄せ、唇を奪った。

「んぐっ……!」

 柔らかい唇に吸いつきながら強く抱く。イヴは手の置きどころに迷っているのかこちらの肩をつまむように掴んできた。

「ちゅ、ん……むぐ!」

 鼻息が顔に当たる。舌を潜り込ませようとすると一瞬拒まれたが、ゆっくり唇が開いた。

「あはっ! あっ、あむっ、ん!」

 熱い吐息と甘い唾液が興奮を誘う。

「ぷはっ! はぁ、はぁ、はぁ……」

 口を離すとイヴは短く呼吸を繰り返す。力強さのあった瞳が驚きからか潤んでいる。どこか感じていた近寄りがたさがなくなり、大人らしい女でもなくなった。

 穢れを知らない無垢な少女、今の彼女はそう見えた。罪悪感よりも、もっと穢したいという邪な気持ちが前に出てしまう。

「イヴを好きにできるのなら、話を引き受けるよ」
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