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第4章「聖母誕生」
第97話 神々の戦い・2
明けの明星と高き館の主が激突しているとき、同様に両者に恭順している神々も闘争を始めるのだった。
数百柱もいた高き館の主配下の神々も明けの明星の流星魔法で一掃された。神々は集中陣形を組んでいたために中央部にいた神々には逃げ場所が無く隕石に直撃して死んでしまったのだ。そのため全体の7割がその時に死に絶えた。かろうじて生き残った者達は外郭にいたおかげで逃げ延びることが可能で集中砲火を浴びることもなく生き残った者や、負傷しながらも戦闘可能な者だった。
それでも依然として数の上では明けの明星の配下の神々よりも多かった。その生き残りの数は想定以上に多い数だったので明けの明星軍側には少なからずの動揺があった。
「ううっ! 明けの明星様から前もって聞いていたよりも多くの神々が生き残っているぞ。」
「数の上では俺達が不利だ・・・。」
「明けの明星様が予測を外されるなんて、嫌な予感がするわ・・・。私達、だいじょうぶかしら?」
作戦よりも小さな成果下上げられなかったことを知った神々の口から情けない言葉が聞かれた。
その様子を見て士気が落ちるのを嫌った魔神シェーン・シェーン・クーは覇気に満ちた大声で指示を出す。
「静まれっ!!
先ずは敵の突撃攻撃を止めるっ!!
前衛に防御魔法を集中させろっ!!」
その一喝で神々は我に返った。敵軍は負傷しながらも突撃を敢行してきた現実を忘れてはいけないのだ。
全軍の指揮を任されていた魔神シェーン・シェーン・クーの叫び声で覇気に目覚めた神々は協力して力を出し合って指示通り部隊の前衛に魔法でバリアを張り巡らせて敵の突撃を一時的にしのぐ。
高き館の主軍の神々は突撃陣形のままバリアに激突すると、そのまま力押しで押し切ろうと自分たちも魔力を使って障壁を生み出し、明けの明星側のバリアを破壊しようと試みる。
一瞬でその場は両軍のバリアが互いを削りつぶそうとする時に発する騒音で満たされた。まるで金属を切断するのこぎりのように高音で濁った嫌な音であった。
シェーン・シェーン・クーは騒音に顔をしかめながらも冷静に状況を分析していた。
両軍が激突したこの時、シェーン・シェーン・クーは自軍の中央部にいたので、高き館の主の配下の神々とのファーストアタックでは直接衝突することもなく後衛で様子を見る立場だった。
つまりそれは魔神シェーン・シェーン・クーは客観的に戦況を見ることができたということだ。
闘争のために生まれてきたとさえ言われているシェーン・シェーン・クーは冷静に状況を分析して隣に立つヴァレリオに問いかけた。
「おい、ヴァレリオ。
俺は個人戦には強い。タイマンではあいつらにも負けないと思うが、今のこの状況は戦争で団体戦だ。
どうにも俺にはこういった戦いは苦手でどうすればいいのかわからん。」
「・・・わからんが・・・このまま戦い続ければ数に劣る俺達が不利なことぐらいはわかる。
指示してくれ。
こういった戦略を練ることに関してはお前が最もこの中で賢いように思う。
俺達はどうすればいい・・・?」
シェーン・シェーン・クーは虚勢を張ることもなく素直にヴァレリオに指示を求めたのだ。
上級の神からそのような求めをされると思っていなかったヴァレリオは一瞬、ぎょっとして驚いたが、考えれば考えるほどシェーン・シェーン・クーの言い分が神妙なように思え、ヴァレリオは思案を始めた。
(敵はこちらよりも数で勝っている。
このまま障壁同士のぶつかり合いを続けても数で勝る向こうのバリアの方が有利で我々は無駄に魔力を消費させられることになる・・・。
さらに今の状況として我々以外にも明けの明星様と高き館の主様の戦いが繰り広げられている。我々が敵軍との直接衝突をさせけるために下手に部隊を移動させまわって、お二人の戦いに巻き込まれたら終りだ。たとえ攻撃の流れ矢にでも当たったら、当たってしまった者は即死するだろう。
このまま押し合いを続けて不利。かといって不用意に動き回るのも危険。
さて、どうしたものか・・・。)
ヴァレリオが思案していた時間はほんの僅かだった。
作戦を建てるために必要な状況を把握し、それをシンプルに分析し、最適解を導き出す。
物事は難しく考えたら逆に失敗することも多い。彼は実に単純に物事を考え、それを実行する行動力があった。
「作戦を思いつきました。
この場で押し合いを続けるのは良策とは思えません。」
ヴァレリオがそう言うとシェーン・シェーン・クーは軽く頷いてから尋ねた。
「俺もそのように思う。で? どうする?」
「明けの明星様と高き館の主様との戦いに接近します。」
ヴァレリオは即答した。それは大変な危険を伴う作戦であることは火を見るよりも明らか。
シェーン・シェーン・クーは思わず「お前・・・正気か?」と尋ねたほどである。
しかしヴァレリオは小さく頷くと、自信を持った顔で答えた。
「敵を地獄に引きずり込む為に、我ら先に地獄に入りましょうぞ。」
その時のヴァレリオの力強い瞳にシェーン・シェーン・クーは強い覚悟を感じた。
「いいだろう・・・。その作戦、のってやる。」
シェーン・シェーン・クーはヴァレリオの作戦を詳細には聞かなかった。それはヴァレリオに対する信頼感があっての事だったが、戦況が目まぐるしく変わる可能性が高い戦場では即決する事もまた大切であったからだ。
ヴァレリオの馬鹿げた作戦に乗ることにしたシェーン・シェーン・クーは剣を天に掲げて周辺の後続部隊に指示を出す。
「傾注っ!!
我々は速やかに後退し、敵をおびき寄せるっ!!
後退せよっ!!」
シェーン・シェーン・クーの合図に従い明けの明星軍は敵の衝突の力に逆らうことなく後退を始める。
しかし、シェーン・シェーン・クーとヴァレリオ以外、自分たちが敵軍をどこへおびき寄せるのか誰も知らなかった。知っていれば、誰もが反対しただろう。そして高き館の主軍も引き下がる彼らを追いかけたりはしなかっただろう。
数で勝る高き館の主軍は消極的に下がる明けの明星軍を恐れはしなかった。そのため、自分たちの構成に絶対の自信を持ち、前進を続けた。
それは明けの明星軍に意識を集中させすぎる状況を生み出し、彼らは異変に気が付くのが遅れた。
彼ら高き館の主軍に異変を悟らせたのは意外にも明けの明星軍の神々の狼狽えた声だった。
「おおいっ!! どこへ後退するつもりだっ!!」
「バカ野郎っ!! 死ぬ気かっ!?」
「待てっ!! とまれっ!! このまま進むのは危険だっ!!」
「やだっ!? まって、危険よっ!! ねぇっ!!」
戦場ではまず聞かないセリフである。指揮官の指示する進行方向に対する反発と危険を知らせる怒声。
その声に高き館の主軍が違和感を覚えた瞬間の事だった。
突然、上空から高き館の主が放ったと思われる雷撃が高き館の主軍と明けの明星軍を襲った。
いきなりの事で対応が遅れたのは高き館の主軍だった。
「何事だぁっ!?」
「高き館の主様だっ!!
あの野郎ども、お二人の戦場の真下に自分たちごと俺達を誘導しやがったっ!!
イカレてやがるっ!!」
「退避っ!! 退避~~~っ!!
ここにいたら無駄死にするぞ~~~っ!!」
いつの間にか明けの明星たちが戦う戦場の真下へと誘導されてしまった高き輩の主軍は状況認識が遅れ、慌てに慌てた。その混乱ぶりは敵軍が陣形の乱れを生んだ。
そして、その混乱を見逃すヴァレリオではなかった。
「今ですっ!!
陣形が乱れた軍など烏合の衆にすぎませんっ!!
シェーン・シェーン・クー様っ、突撃のお下知をっ!!」
戦いには流れがあり、それが勝機を決定づける。そしてそれが一瞬の戸惑いで失われてしまうほど危ういものであることを闘神であるシェーン・シェーン・クーは本能で理解していた。
故にヴァレリオの助言に一切遅れることなく指示を出す。
「突撃ずるっ!
総員っ!! 俺を先頭に鋒矢陣形を組み、逃げ出した臆病者共を殲滅するっ!!
道を開けよっ!! 突撃するっ!!」
シェーン・シェーン・クーがそう叫ぶと神々は道を譲り、中央後衛部にいたシェーン・シェーン・クー達が前進し、矢印型の陣形を形成させて行きながら明けの明星軍は背を向けて逃げ出す高き館の主軍を追いかける。
その時、味方の軍勢を導くために最前列で戦うシェーン・シェーン・クーの殺気凄まじく、その場にいた神々は即座に今が勝負の時と察して、命を捨てて供に突撃を開始するのだった。
陣形を乱して四散しようとする高き館の主軍は大ダメージを負って形勢は一気に逆転する。分断された個々の兵力など群衆の敵ではなく、各個撃破によってその数を減らしていく。高き館の主軍が自分たちのミスを悟って陣形を整えようとした時、すでに数の上での有利を明けの明星軍に奪われてしまうのだった。
勝利を確信したシェーン・シェーン・クーの脳裏にあのフェデリコがヴァレリオの才能について語っていた時の事を想いだした。
『あの男は圧倒的軍勢でラーマ姫様を追撃する私達から姫様を救い出すために別の敵勢力を私たちの軍にぶつけるように誘導したのです。
その結果、戦場は3つの勢力が渦巻く混乱に染まりました。
あのような状況は私の人生でもお目にかかったことがない・・・。地獄でしたよ。夜の闇の中、私たちは敵も味方も誰が味方で誰が敵かもわからずに殺しあう状況に追い込まれました。
もちろん、それはヴァレリオにとっても地獄であったはずです。しかしそれをヴァレリオは躊躇なくやり遂げたのです。敵を地獄に引きずり込む為には自軍さえも容赦なく地獄に導く・・・。
おわかりですか? シェーン・シェーン・クー様。
あの男は狂っているのですよ・・・。私よりも・・・ね。』
時折、明けの明星と高き輩の主の戦いの流れ矢が両軍に襲い掛かる。その度にどちらかの神が死んでいく。
戦いの最中にこれを避けることなど不可能だったのだ。
誰が被弾し、誰が死ぬかなど誰にもわからない。それはヴァレリオにだってわからないのだ。
にも拘らずヴァレリオはこの作戦を立案しそれを決行した。そして一瞬で逆転せしめたのだ。
シェーン・シェーン・クーは彼の才能に冷汗をかきながら、敵軍を追い込んでいくのだった。
丁度その頃、異変を察したのは低空で戦う神々だけではなかった。
上空で戦っていた高き輩の主と明けの明星も異変に気がついて驚いた。
「ああっ!!
な、なんて奴らだっ!! 俺たちの戦いの真っただ中に入って来やがったっ!!
イカレてんのか? あの連中はっ!?」
驚く高き輩の主に対し、明けの明星は甲高い声で笑った。それはまるで勝利宣言だった。
「あはははははっ!! あいつやなっ!?
こんないかれた作戦考えるんは、あいつしかおらんっ!!
・・・そうやでっ!! 高き館の主よっ!! あいつはいかれてんねんっ!!
さすがは俺の恋敵っ!! 地獄に味方も引きずり込むとは、ホンマに頭おかしいわっ!」
想像を絶する狂気の策を敢行した様子を見て狼狽えてしまった高き館の主は、明けの明星の高笑いを唖然とした表情で見つめることしかできなかった。
数百柱もいた高き館の主配下の神々も明けの明星の流星魔法で一掃された。神々は集中陣形を組んでいたために中央部にいた神々には逃げ場所が無く隕石に直撃して死んでしまったのだ。そのため全体の7割がその時に死に絶えた。かろうじて生き残った者達は外郭にいたおかげで逃げ延びることが可能で集中砲火を浴びることもなく生き残った者や、負傷しながらも戦闘可能な者だった。
それでも依然として数の上では明けの明星の配下の神々よりも多かった。その生き残りの数は想定以上に多い数だったので明けの明星軍側には少なからずの動揺があった。
「ううっ! 明けの明星様から前もって聞いていたよりも多くの神々が生き残っているぞ。」
「数の上では俺達が不利だ・・・。」
「明けの明星様が予測を外されるなんて、嫌な予感がするわ・・・。私達、だいじょうぶかしら?」
作戦よりも小さな成果下上げられなかったことを知った神々の口から情けない言葉が聞かれた。
その様子を見て士気が落ちるのを嫌った魔神シェーン・シェーン・クーは覇気に満ちた大声で指示を出す。
「静まれっ!!
先ずは敵の突撃攻撃を止めるっ!!
前衛に防御魔法を集中させろっ!!」
その一喝で神々は我に返った。敵軍は負傷しながらも突撃を敢行してきた現実を忘れてはいけないのだ。
全軍の指揮を任されていた魔神シェーン・シェーン・クーの叫び声で覇気に目覚めた神々は協力して力を出し合って指示通り部隊の前衛に魔法でバリアを張り巡らせて敵の突撃を一時的にしのぐ。
高き館の主軍の神々は突撃陣形のままバリアに激突すると、そのまま力押しで押し切ろうと自分たちも魔力を使って障壁を生み出し、明けの明星側のバリアを破壊しようと試みる。
一瞬でその場は両軍のバリアが互いを削りつぶそうとする時に発する騒音で満たされた。まるで金属を切断するのこぎりのように高音で濁った嫌な音であった。
シェーン・シェーン・クーは騒音に顔をしかめながらも冷静に状況を分析していた。
両軍が激突したこの時、シェーン・シェーン・クーは自軍の中央部にいたので、高き館の主の配下の神々とのファーストアタックでは直接衝突することもなく後衛で様子を見る立場だった。
つまりそれは魔神シェーン・シェーン・クーは客観的に戦況を見ることができたということだ。
闘争のために生まれてきたとさえ言われているシェーン・シェーン・クーは冷静に状況を分析して隣に立つヴァレリオに問いかけた。
「おい、ヴァレリオ。
俺は個人戦には強い。タイマンではあいつらにも負けないと思うが、今のこの状況は戦争で団体戦だ。
どうにも俺にはこういった戦いは苦手でどうすればいいのかわからん。」
「・・・わからんが・・・このまま戦い続ければ数に劣る俺達が不利なことぐらいはわかる。
指示してくれ。
こういった戦略を練ることに関してはお前が最もこの中で賢いように思う。
俺達はどうすればいい・・・?」
シェーン・シェーン・クーは虚勢を張ることもなく素直にヴァレリオに指示を求めたのだ。
上級の神からそのような求めをされると思っていなかったヴァレリオは一瞬、ぎょっとして驚いたが、考えれば考えるほどシェーン・シェーン・クーの言い分が神妙なように思え、ヴァレリオは思案を始めた。
(敵はこちらよりも数で勝っている。
このまま障壁同士のぶつかり合いを続けても数で勝る向こうのバリアの方が有利で我々は無駄に魔力を消費させられることになる・・・。
さらに今の状況として我々以外にも明けの明星様と高き館の主様の戦いが繰り広げられている。我々が敵軍との直接衝突をさせけるために下手に部隊を移動させまわって、お二人の戦いに巻き込まれたら終りだ。たとえ攻撃の流れ矢にでも当たったら、当たってしまった者は即死するだろう。
このまま押し合いを続けて不利。かといって不用意に動き回るのも危険。
さて、どうしたものか・・・。)
ヴァレリオが思案していた時間はほんの僅かだった。
作戦を建てるために必要な状況を把握し、それをシンプルに分析し、最適解を導き出す。
物事は難しく考えたら逆に失敗することも多い。彼は実に単純に物事を考え、それを実行する行動力があった。
「作戦を思いつきました。
この場で押し合いを続けるのは良策とは思えません。」
ヴァレリオがそう言うとシェーン・シェーン・クーは軽く頷いてから尋ねた。
「俺もそのように思う。で? どうする?」
「明けの明星様と高き館の主様との戦いに接近します。」
ヴァレリオは即答した。それは大変な危険を伴う作戦であることは火を見るよりも明らか。
シェーン・シェーン・クーは思わず「お前・・・正気か?」と尋ねたほどである。
しかしヴァレリオは小さく頷くと、自信を持った顔で答えた。
「敵を地獄に引きずり込む為に、我ら先に地獄に入りましょうぞ。」
その時のヴァレリオの力強い瞳にシェーン・シェーン・クーは強い覚悟を感じた。
「いいだろう・・・。その作戦、のってやる。」
シェーン・シェーン・クーはヴァレリオの作戦を詳細には聞かなかった。それはヴァレリオに対する信頼感があっての事だったが、戦況が目まぐるしく変わる可能性が高い戦場では即決する事もまた大切であったからだ。
ヴァレリオの馬鹿げた作戦に乗ることにしたシェーン・シェーン・クーは剣を天に掲げて周辺の後続部隊に指示を出す。
「傾注っ!!
我々は速やかに後退し、敵をおびき寄せるっ!!
後退せよっ!!」
シェーン・シェーン・クーの合図に従い明けの明星軍は敵の衝突の力に逆らうことなく後退を始める。
しかし、シェーン・シェーン・クーとヴァレリオ以外、自分たちが敵軍をどこへおびき寄せるのか誰も知らなかった。知っていれば、誰もが反対しただろう。そして高き館の主軍も引き下がる彼らを追いかけたりはしなかっただろう。
数で勝る高き館の主軍は消極的に下がる明けの明星軍を恐れはしなかった。そのため、自分たちの構成に絶対の自信を持ち、前進を続けた。
それは明けの明星軍に意識を集中させすぎる状況を生み出し、彼らは異変に気が付くのが遅れた。
彼ら高き館の主軍に異変を悟らせたのは意外にも明けの明星軍の神々の狼狽えた声だった。
「おおいっ!! どこへ後退するつもりだっ!!」
「バカ野郎っ!! 死ぬ気かっ!?」
「待てっ!! とまれっ!! このまま進むのは危険だっ!!」
「やだっ!? まって、危険よっ!! ねぇっ!!」
戦場ではまず聞かないセリフである。指揮官の指示する進行方向に対する反発と危険を知らせる怒声。
その声に高き館の主軍が違和感を覚えた瞬間の事だった。
突然、上空から高き館の主が放ったと思われる雷撃が高き館の主軍と明けの明星軍を襲った。
いきなりの事で対応が遅れたのは高き館の主軍だった。
「何事だぁっ!?」
「高き館の主様だっ!!
あの野郎ども、お二人の戦場の真下に自分たちごと俺達を誘導しやがったっ!!
イカレてやがるっ!!」
「退避っ!! 退避~~~っ!!
ここにいたら無駄死にするぞ~~~っ!!」
いつの間にか明けの明星たちが戦う戦場の真下へと誘導されてしまった高き輩の主軍は状況認識が遅れ、慌てに慌てた。その混乱ぶりは敵軍が陣形の乱れを生んだ。
そして、その混乱を見逃すヴァレリオではなかった。
「今ですっ!!
陣形が乱れた軍など烏合の衆にすぎませんっ!!
シェーン・シェーン・クー様っ、突撃のお下知をっ!!」
戦いには流れがあり、それが勝機を決定づける。そしてそれが一瞬の戸惑いで失われてしまうほど危ういものであることを闘神であるシェーン・シェーン・クーは本能で理解していた。
故にヴァレリオの助言に一切遅れることなく指示を出す。
「突撃ずるっ!
総員っ!! 俺を先頭に鋒矢陣形を組み、逃げ出した臆病者共を殲滅するっ!!
道を開けよっ!! 突撃するっ!!」
シェーン・シェーン・クーがそう叫ぶと神々は道を譲り、中央後衛部にいたシェーン・シェーン・クー達が前進し、矢印型の陣形を形成させて行きながら明けの明星軍は背を向けて逃げ出す高き館の主軍を追いかける。
その時、味方の軍勢を導くために最前列で戦うシェーン・シェーン・クーの殺気凄まじく、その場にいた神々は即座に今が勝負の時と察して、命を捨てて供に突撃を開始するのだった。
陣形を乱して四散しようとする高き館の主軍は大ダメージを負って形勢は一気に逆転する。分断された個々の兵力など群衆の敵ではなく、各個撃破によってその数を減らしていく。高き館の主軍が自分たちのミスを悟って陣形を整えようとした時、すでに数の上での有利を明けの明星軍に奪われてしまうのだった。
勝利を確信したシェーン・シェーン・クーの脳裏にあのフェデリコがヴァレリオの才能について語っていた時の事を想いだした。
『あの男は圧倒的軍勢でラーマ姫様を追撃する私達から姫様を救い出すために別の敵勢力を私たちの軍にぶつけるように誘導したのです。
その結果、戦場は3つの勢力が渦巻く混乱に染まりました。
あのような状況は私の人生でもお目にかかったことがない・・・。地獄でしたよ。夜の闇の中、私たちは敵も味方も誰が味方で誰が敵かもわからずに殺しあう状況に追い込まれました。
もちろん、それはヴァレリオにとっても地獄であったはずです。しかしそれをヴァレリオは躊躇なくやり遂げたのです。敵を地獄に引きずり込む為には自軍さえも容赦なく地獄に導く・・・。
おわかりですか? シェーン・シェーン・クー様。
あの男は狂っているのですよ・・・。私よりも・・・ね。』
時折、明けの明星と高き輩の主の戦いの流れ矢が両軍に襲い掛かる。その度にどちらかの神が死んでいく。
戦いの最中にこれを避けることなど不可能だったのだ。
誰が被弾し、誰が死ぬかなど誰にもわからない。それはヴァレリオにだってわからないのだ。
にも拘らずヴァレリオはこの作戦を立案しそれを決行した。そして一瞬で逆転せしめたのだ。
シェーン・シェーン・クーは彼の才能に冷汗をかきながら、敵軍を追い込んでいくのだった。
丁度その頃、異変を察したのは低空で戦う神々だけではなかった。
上空で戦っていた高き輩の主と明けの明星も異変に気がついて驚いた。
「ああっ!!
な、なんて奴らだっ!! 俺たちの戦いの真っただ中に入って来やがったっ!!
イカレてんのか? あの連中はっ!?」
驚く高き輩の主に対し、明けの明星は甲高い声で笑った。それはまるで勝利宣言だった。
「あはははははっ!! あいつやなっ!?
こんないかれた作戦考えるんは、あいつしかおらんっ!!
・・・そうやでっ!! 高き館の主よっ!! あいつはいかれてんねんっ!!
さすがは俺の恋敵っ!! 地獄に味方も引きずり込むとは、ホンマに頭おかしいわっ!」
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