あばずれローニャ

黒神譚

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第1話

イケメン以外に用はない・8

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見つめ合う二人の瞳。
私はメイソンに縋り付きながら、彼の美しい青の瞳を上目遣いでじっと見つめる。
メイソンは頬を紅潮させたまま、夢心地のような瞳で私を見つめ返す。

(さぁ、ローニャ。
 相手は準備万端よ。
 貴女から口づけを求めるのっ!!)
(・・・え。や、やだっ!!
 私、そんなはしたない真似できないもんっ!!
 キスは男の子からしてくれないと嫌っ!!)

呪いにすっかり支配された私の精神年齢は外見と相応の年頃の女の子のそれにまで落ちていた。
そんな私を煩わしいとばかりにチャームはせせら笑って指示を出す。
(駄目よ。年頃の男の子ってシャイだから、あなたから扉を開いてあげないと・・・)

(・・・う、うん・・・)

私は頬が真っ赤に染めあがるほど恥ずかしがりながらもチャームのすすめに従って、彼を意味深に見つめた後、そっと瞳を閉じた・・・。

と、その時だった。

「おいっ!! こんな時に何をいちゃついているんだっ!!
 二人とも状況がわかっているのか? 気合い入れろっ!!」

置いてけぼりを食らったオリバーが怒って私とメイソンを引き剥がした。
そこで俺は我に返った!!
俺は完全にチャームに洗脳されていたことを悟って、それまでの自分の行いを自覚して死にたくなった。

(畜生ッ!! なんで、俺がこんなガキに欲情しなくちゃいけないんだっ!!)

そう、心で自分への怒りを爆発させながら、フト、空を見上げると暗がりが増してはいるものの、僅かに夕日が空に残っていることに気が付いた。

(大丈夫。まだ、俺は戻ってこれる。
 太陽が出ている間に作戦を切り上げれば大丈夫だっ!!)

自分を奮い立たせると、俺はメイソンを押し戻してズンズン先行する。
だが背後でメイソンがオリバーに「なんだよっ!? 彼女すっかりその気になってたのにっ!」と、抗議しているのが聞こえた時、俺はメイソンが脈ありなのを確信して小さくガッツポーズしてしまう。

(全く、素直じゃない人ね。
 欲望に抗わず私と同じところに落ちてくれたら、お互いに幸せになれるのよ。
 ね? ママ・・・)
(誰がママだっ! 誰がっ!!)

チャームはクスクス笑って応える。
(あら? いつも言ってるでしょ? 忘れたの?
 私のパパは貴女に呪いをぶっかけた魔神シトリー様。
 そして、パパの呪いが貴女の体内に入って生まれたのが私。
 つまり、ローニャ。貴女は私のママなの。
 だから、貴女は私のママに相応しい人になって欲しいの。
 色欲の魔神の妻として沢山の男を誑かし、多くの子供を産んでもらわないと私が困るの。
 大丈夫・・・。私がママを導いてあげるわ・・・)

呪いの効果が増す時間になるとチャームは俺に母性を求める。
それを哀れに思いつつも、愛おしく思ってしまう自分がいた。
ああ・・・。これが母性愛というものだろうか?
俺は、そんなことを考えながら、とうとう化物が潜伏する遺跡の目の前までたどり着いていた・・・。
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