あばずれローニャ

黒神譚

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第9話

訣別の時 4

(ローニャ。夢の中の貴女は、貴女であって貴女ではない。
 あれはお父様が魔力で貴女の脳に直接影響を与えて情緒不安定にさせていたの。
 
 あの時の貴女は子猫のように臆病で、小鳥のように無力だった。
 でもそれは、お父様が作り出した偽物の感情なの。
 お父様は色欲を司る魔神。淫魔が夢魔として強力なことと同じように夢の中ではお父様は無敵。人間の脳を操るなんて造作もない事。)

夢の中で人を操る・・・。
チャームにそう言われると、確かにあの時の私は情緒が不安定だった。
それが不自然だったことに気が付いたのは、チャームに指摘されて始めた判った事。
もし、チャームがいなかったら、何もわからないまま私はシトリーと魂の契約を結ばされていた事でしょう。

でも・・・、だったらチャームはどうして無事だったのだろう?
それどころか、魔神に抗うことさえしてみせた。
当然の疑問が沸き起こる。
チャームは私の疑問を察したのか何も聞かなくても説明してくれた。

(実体も無ければ、お父様の呪いの具現化である私はお父様の夢の魔法が無効なの。言ってみれば、炎が炎を焼き尽くすことができないようにお父様の魔力でお父様の魔力で出来た私を強化することは出来ても打ち消すことは出来ないの。
 だから私は無事で貴女の理性を叩き起こすことができた。)

チャームの言葉に納得した私はその後に湧きおこった疑問についても尋ねる

「なるほど。言われてみれば、納得ね。
 それにしても・・・夢を操って私に攻撃してくるなんて、なんて恐ろしい能力。
 どうして今まで何もしてこなかったのかしら・・・?」

そう。魔神シトリーが夢を操れるのなら、これまでも私を攻撃できたはずなのに・・・。
チャームはその質問についてよく考えてから答えた。

(それは恐らくいくつかの条件が満たされないと駄目だからよ。
 いくらお父様でも一度撤退させられた状態だから、制限が多いはず。今おられている闇の異界から、この光の世界カナーンにあれほどの魔法を使用するのは容易なことではないのよ。

 そして、その魔法を成立させるための必須条件として3つ考えられるわ。
 
 第一にここが闇の神殿であること。
 第二に貴女が、闇の勢力の神殿で沐浴の儀礼を済ませている事。)

そういえばっ!! 清浄な水による沐浴とはいえ、ここは闇の勢力の神殿。沐浴の場の水は言ってみれば闇の聖水。
私の体は闇の聖水で洗い清められてしまっている状態なのね。
そして・・・
 
(そして第三の必須要件。きっと先程の食事の中にお父様とつながる何かを混ぜられていて、体内に何かを取り込んでしまったのね。間違いないわ。

 これだけ条件が整ったら魂に干渉されてもおかしくはないわ。
 沐浴の場に至る経緯はローニャの失禁が原因だったけど、お風呂に入らないわけにもいかないし、いずれこうなっていたはずよ。

 きっと全てはお父様がメリナに指示してのこと。
 私たちは闇の勢力の神殿に来た時点でお父様の籠に閉じ込められているのかもしれないわ。)
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