128人目の勇者と聖女になった男の子の話

黒神譚

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第十話 どっち?

 その後、アビゲイルの腹心の部下であるリリアンとヴァイオレットが俺達に付き添っているので、不満を抱いている衛兵たちもおかしな真似は出来ないらしく、それ以降はしおらしく俺に対しても丁寧な対応でゴージャスな造りの客室まで案内すると、「どうぞ、おくつろぎくださいませ。」と言って頭を下げてから部屋の外に出ていく。

 寝室、居間リビング、浴室とトイレ。3間で60畳はありそうな広い客室は衣食住の機能を全て兼ね備えていた。
 そのゴージャスな造りに庶民の俺と美野里みのりはあんぐりと口を開けて固まってしまった。
 俺達のそんな反応が予想外だったのかリリアンとヴァイオレットは泣きそうな顔になって「あの、御不満でしたでしょうか? す、すみません。これ以上のお部屋は王や大貴族くらいしか・・・・」と、弁解する。

「い、いやいやいやっ!! 俺達、あんまり豪勢な部屋なんでビックリしてるだけだよっ!」
「そ、そうだよ。いや。どうも参ったね。
 ボク達って庶民だなって改めて思い知らされてしまうほど立派なお部屋だよ。ありがとう。」

 俺達は二人そろって感謝の意を示すと、リリアンとヴァイオレットは嬉しそうに「本当ですかっ!」と言って俺に詰め寄る。
 大柄な俺の目から見降ろされる視線の先にはわずかに作られた二人の胸のふくらみがベストな角度で見える。

「ああ・・・・。やっぱり女の子っていいよな。美野里。」
「また馬鹿なこと言ってる。」

 美野里はあきれたようにため息をついたが、こいつには性欲というものはないのだろうか?
 いや、そもそもこの姫系男子。本当に女に興味があるのだろうか?
 リリアンとヴァイオレット。そして歩くたびにタプンタプンと乳房が波打つアビゲイルの体を見て何も感じないなんてことが年頃の男子にあるえることなのだろうか?
 俺は色んな意味で少し不安になって来た・・・・。

 しかし、そんな俺の不安に気が付かぬ二人の美少女は、「まずは当神殿自慢の温泉のかけ流しのお風呂で今日の疲れを落としてください。その内にお食事をご用意させていただきますのでっ!!」と、俺たち二人に勧めて来た。

「あ、そう。じゃ、いただこうかな。
 行こうか、剣一君。」と美野里は浴室を指差した。

 ・・・・・まて、まさか。こいつ、俺と一緒に風呂に入るつもりなのか?
 いやいやいやいや・・・・・落ち着け。よく考えろ。
 確かにこいつはセーラー服なんぞに身を包んでいるとはいえ、どう見ても美少女だとはいえだよ? れきとした男子。俺と同級生の男子なんだ。男同士風呂に入ることになんの不自然もない。

 ・・・・・・だがっ!! そんなことして、本当にいいのかっ?
 
 俺の頭は混乱していた。だから、ハッと気が付いた時には「もうっ。何をボウッとしてるんだい?」と呆れる美野里に手を引かれ、いつの間にか浴室の脱衣場にいた。
「剣一君。なにをしているんだい?
 君も早く脱ぎなよ。」
 美野里は、そういうとシュルシュルと衣擦きぬずれの音を立てながらセーラー服を脱いでいく。
 ・・・・・嘘だろ。こいつ、本当に男かよ・・・・・。
 俺は男同士だというのに何かいけないものを見ている気がしてきたが、同じ男の肉体とは思えぬほど華奢きゃしゃでその上、筋張すじばったところが一切ない美野里の体から目が離せなかった。

 だが、美野里の脱衣が終わったというのにいつまでも俺だけがそのままという訳にはいかない。俺は慌てた素振りは出来ない見せないようにそれでいて速やかに服を脱いだ。
 お互い手拭い一つで陰部を隠しただけの姿になったとき、美野里は興味深そうに俺の体を触って来た。

「うわ~、凄い筋肉。流石は肉体派だね。ボクと同じ男とは思えないよ。」
「それはお前の方だろうがっ!! お前の中の男性ホルモンはお前を男にすることを諦めたのかよっ!?」

 男の手とは思えない繊細な指先ときめ細かで柔らかい肌をした掌に大胸筋から腹筋のあたりを優しくなぞられて思わずゾクッと来てしまった俺は思わずキツいツッコミを入れた。しかし言い返された美野里は余裕そうにクスクス笑いながら
「クラスの皆がボクの事を何て言ってるか知ってる?
 姫系男子だよ? クスクス。バカみたい。姫だよ、姫っ!
 ボクにだって立派に付くものは付いているというのにね。」そう言って手拭いをどけて俺に「自分自身」を見せつける。

 そこには彼の言う「立派に」という言葉には不釣り合いすぎる。小便小僧の方がまだずいぶん大人に見えるほど「お粗末な」一物が確かに付いていた。

「お、お前なぁ・・・・・見せんな、そんなお粗末なもの。」

 そう言われたのが悔しいのか、美野里は「あ、あれ? おかしいな。普段は2センチくらい大きいんだよ?」と言い訳をし始める。

 その様子を見た俺は呆れながらもホッとした。
 よかった。こいつ、ちゃんと男の子じゃねぇか・・・・と、思いつつも不覚にも美野里の男とは思えないようなそのなめらかな白い肌に反応している「俺自身」のたかぶりを隠すために若干前かがみになってしまうのだった。
 そうなってしまった自分を知った今ここで。俺はこれまでどうしてずっとこいつをけて来たのか理解した。

 俺は美野里の事が怖かったのだ。この男の禁断の魅力に目覚めてしまう危機感を俺は本能的に感じていて、恐れて遠ざけていたのだった。

 だが、しかし。こいつは男だ。俺はまるで自問自答するようにリリアンとヴァイオレットの幼い体を思い出し、今、目の前にいる美野里の体とを見比べても、やはりまだ未熟な体とは言え彼女たちの方が魅力的であると判断できる程度には理性を保っていることを確認し、落ち着きを取り戻す。

「そうだよなぁ。姫系なんて馬鹿げてる。
 あんな中学一年生くらいの二人の方がお前よりよっぽど女の子の体してるもんな?
 なぁ、美野里。お前、どっちがいい?」

 俺はそう言う同級生の男子が当然、するようなごくごく当たり前の恋バナをしたつもりだった。
 しかし、美野里は突然不機嫌になり唇を尖らせて「不潔ふけつっ! 知らないよっ! 馬鹿やろうっ!」と言って怒り出し、そのまま俺に背中を向けて風呂を上がるまで一口も聞いてくれなかった。
 
「あ・・・あの、気を悪くすんなよ? 男子によくある卑猥ひわいな会話じゃんか?」
「きょ、今日は色んなことがあったよなぁ・・・・」
「ま、まさか男のお前が聖女になって、俺が勇者になるだなんて思わなかったなぁ」

 俺が何を言っても無言の沈黙で返すあたり美野里は本気でこういう話が苦手らしい。
 俺が何とか機嫌を取ろうと体を洗う美野里に近づき「せ、背中洗い流してやろうか?」と言っただけでも、「うるさいっ! 変態かっ! このスケベっ!!」といってタライのお湯を頭からぶっかけられてしまう始末。

「なんなんだよっ! おいっ!!」
 俺の怒りの声が浴室に響くだけで、美野里の機嫌は治らなかった・・・・
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