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第十一話 学生
完全に機嫌を損ねたと思っていた美野里だったが、風呂上りに脱衣場へ入った途端に情けない声を上げて俺にすがってきた。
「け、けけけ、剣一く~ん。」
美野里が指差す場所には2つの竹細工のような籠があり、それぞれに見たことが無い文字が書かれた札が付いていた。
確かに見たことが無い文字だがウルティアの時と同じように俺達には不思議とそれが読めた。これも異世界転移の影響なのだろうか?
ともかく、2つの籠にはそれぞれ俺達の名前が書かれていた。
男物の着替えが入った籠には俺の名前が。
ブラジャー等の女性下着が入っている籠には美野里の名前が書かれていた。
どうやら、アイツら本気で美野里を聖女様扱いする気らしい。
俺は籠から清楚なイメージのする水色の花柄が入っているブラジャーを持ち上げると
「どうする? 着るか? 可愛いと思うぞ。」などと言ってからかってやる。
美野里は「君はバカかっ!」とまた怒ってから、脱衣場の外にいるリリアンとヴァイオレットを呼ぶ。
「リリアン。ヴァイオレット。ボクの着替えを返してくれ!」
しかし、2人から返ってきた言葉は非情なものだった。
「いけません。聖女様の服装は既に決められています。私達にコレを変える権利はありません。異論がある場合は、どうか後ほどアビゲイル様と交渉して下さい。今は、とりあえずそちらのお着替えをよろしくお願いします。」
それからしばらくの間、2人と交渉していた美野里だが、湯上がりの体が冷える事についに屈して着替えを始めた。しかし、パンツはともかくブラジャーには悪戦苦闘し、俺に「背中を止めてくれたまえ。」と恥ずかしそうに頼む始末だった。
「何が悲しくて男のブラジャーなんか留めてやらにゃならんのだ!」
そう言いながらも美野里の白い背中に触れた瞬間、俺は美野里のどうとも表現できない妙な色気にのぼせて目の前がクラクラ来てしまって手が止まってしまう。
「どうしたんだい? 早く留めてくれないか?
着替えが終わらないと湯冷めしてしまうよ。」
危ないところだった。美野里の催促が無ければ俺は戻ってこれないところだった。
そうしてブラジャーを留めてやると、美野里はパンストを履こうとするのだが、その様子を見ていた俺の目線に気が付いたのか「何見ているんだ。スケベっ!!」などと顔を真っ赤にしながら言いだす始末。
いや、スケベって。こいつ、無自覚のうちに聖女として洗脳され始めてるんじゃないのか?
・・・・・だが、しかし。実際スケベすぎる。こんな未開の文明でどうやって作ったのかはわからないが肌が透けて見えるほど薄い濃い黒茶色をしたパンストはキラキラと光沢を放ち、美野里の細い太ももを魅力的なほどにむっちりとした印象を与えているのだ。
これは毒だ。目の毒だ。健全な男子なら誰でもこんな光景を見せられたら太ももに縋り付いてハァハァ言ってしまうはずだ。
見てはいけない。これは目の毒なんだ。
俺は自分にそう言い聞かしながら仕方なく美野里に背中を向けて見ないようにしてやると美野里はそそくさと着替える。しかし、よく考えたら上から服を着るんだから、別にブラをつけなくてもバレ無いのでは?
「わぁっ。なんかお姫様みたいだ!」
着替え終わった美野里は鏡に映ったナイトドレス姿の自分を見て驚きの声を上げる。
「こんな衣装、演劇部に置いてあったら、皆、苦労しないんだけどなぁ」
などと的外れな事を言っていた。
着替えが終わるとリリアンとヴァイオレットが美野里の姿を見てキャーキャー言って喜んだ。いや、俺のこの貴族風の服装姿ももうちょい褒めてくれてもよさそうなもんだが、文字通り役者が違った・・・
その後、2人の反応に若干の苛立ちを感じていた美野里だったが、居間に用意された食事を見た途端に機嫌を直して「うわっ! 見てごらん、剣一君。」といって大はしゃぎした。意外と単純な奴なのかもしれん。
と、俺も思ってはみたものの。用意された食事は確かに御馳走だった。
地球のエビやカニそっくりの甲殻類に、何かの動物の分厚い肉塊を焼いて作ったステーキ。焼きたての丸いパン。食欲を刺激する香辛料の香りがするスープ。それらが大盛に用意されていた。
「こ、こんな御馳走。悪いな、リリアン、ヴァイオレット。」
俺が頭を下げると、リリアンとヴァイオレットは嬉しそうに笑って「どうぞ、ご遠慮なくお召し上がりください。今夜は歓迎の宴です。」と言って食事を勧めてくれた。しかし、そうは言っても俺達よりも年下の少女二人を目の前に男二人だけが食うわけにはいかない。
「リリアン、ヴァイオレット。
せっかくの宴だというのなら、君達も一緒に食べてくれないかい?
食事をしながら聞きたいことも山盛りなのだよ。お願いだよ。」
美野里は気の利いたことを言うと、リリアンとヴァイオレットは、嬉しそうに顔を見合わせてから小さく頷いて「では、御相伴にお預かりいたします。」と満面の笑顔で言って俺達と同じテーブルに座った。御馳走にありつけるのが嬉しいのだろう。その素直な様子がなお可愛い。
俺の対面には美野里とリリアンが。そして俺の隣にはヴァイオレットが座った。
この食事は俺達に与えられたものだから、2人から食事に手をつけるのは躊躇いがあるだろうと思い、俺がテーブルの中央に置かれたブロック肉を4人分の皿へステーキサイズに切り分けて配る。それをしているうちに美野里は金属製のカップへ果物のジュースを注いで配った。
そうして準備が終わると俺と美野里はカップを打ち鳴らせて「かんぱーい」と声を上げた。
それを見ていたリリアンとヴァイオレットは興味深そうに「何ですか? それは?」と尋ねる。どうやらこの世界に乾杯の風習は無いらしい。
美野里は2人に「ボクらの世界にあった食事の気分を盛り上げる作法さ。気にしなくても良いけど、やってみるかい?」と勧めるとリリアンとヴァイオレットは恐る恐るカップを鳴らして乾杯を言う。その初々しさが可愛い。俺の対面に座る美野里と顔を合わせてニッコリ笑ってしまうほどだ。
食事を始めてみると、コレが美味い。日本のレストランと比較しても劣らない味である。
「美味いなっ!」「うんっ! 剣一君」と2人で声を上げてしまうほどだった。
そして食事がある程度落ち着くと俺達はリリアン達にこの世界の事を改めて質問した。
「聞きたいんだけど、君たちは何歳だい? 俺達よりも3つは低そうだけれど?」
「もうすぐ13歳です。」
「13っ!! じゃ、今は12歳っ!?」
2人の年齢を聞いて俺達は驚いたが、そうなると大きな疑問が生まれる。
「その年でもう働いているのか。この世界には子供に通わせる学校が無いのか?」
「学問所ですか? 私達はこの神殿が学問所に当たりますが、一般の方が通う為の学問所も勿論、ございますよ。
階級等によって通う学校は変わりますが、星見。宗教。武術。魔術。歴史。語学。算数等を学びます。
恐らく勇者様と聖女様も訓練の為に1年間は入学されると思います。」
どうやら俺達はこの世界に来ても一応は「学生」をやれるらしい。
しかし、この世界は戦争継続中だ。そんな悠長な事をしていて良いのだろうか?
「質問がある。学生なんてやる暇があるのか?
魔王が今すぐに襲ってこない保証があるのか? 」
ヴァイオレットが答えた。
「大丈夫です。魔王様は瘴気の濃い所に住まわれ、魔王様ご自身が瘴気の薄い人間の土地に現れることはないのです。ですが瘴気の濃い土地を増やすために魔物の軍隊を送られます。魔物は瘴気を放ち大地を穢します。瘴気の毒が薄い場合は大地が自然治癒によって浄化されるのですが十年以上大地が穢されたらもう回復しません。
我々の戦争とはつまり魔物の進行によって瘴気が濃くなる事を水際で止めることなのです。」
「け、けけけ、剣一く~ん。」
美野里が指差す場所には2つの竹細工のような籠があり、それぞれに見たことが無い文字が書かれた札が付いていた。
確かに見たことが無い文字だがウルティアの時と同じように俺達には不思議とそれが読めた。これも異世界転移の影響なのだろうか?
ともかく、2つの籠にはそれぞれ俺達の名前が書かれていた。
男物の着替えが入った籠には俺の名前が。
ブラジャー等の女性下着が入っている籠には美野里の名前が書かれていた。
どうやら、アイツら本気で美野里を聖女様扱いする気らしい。
俺は籠から清楚なイメージのする水色の花柄が入っているブラジャーを持ち上げると
「どうする? 着るか? 可愛いと思うぞ。」などと言ってからかってやる。
美野里は「君はバカかっ!」とまた怒ってから、脱衣場の外にいるリリアンとヴァイオレットを呼ぶ。
「リリアン。ヴァイオレット。ボクの着替えを返してくれ!」
しかし、2人から返ってきた言葉は非情なものだった。
「いけません。聖女様の服装は既に決められています。私達にコレを変える権利はありません。異論がある場合は、どうか後ほどアビゲイル様と交渉して下さい。今は、とりあえずそちらのお着替えをよろしくお願いします。」
それからしばらくの間、2人と交渉していた美野里だが、湯上がりの体が冷える事についに屈して着替えを始めた。しかし、パンツはともかくブラジャーには悪戦苦闘し、俺に「背中を止めてくれたまえ。」と恥ずかしそうに頼む始末だった。
「何が悲しくて男のブラジャーなんか留めてやらにゃならんのだ!」
そう言いながらも美野里の白い背中に触れた瞬間、俺は美野里のどうとも表現できない妙な色気にのぼせて目の前がクラクラ来てしまって手が止まってしまう。
「どうしたんだい? 早く留めてくれないか?
着替えが終わらないと湯冷めしてしまうよ。」
危ないところだった。美野里の催促が無ければ俺は戻ってこれないところだった。
そうしてブラジャーを留めてやると、美野里はパンストを履こうとするのだが、その様子を見ていた俺の目線に気が付いたのか「何見ているんだ。スケベっ!!」などと顔を真っ赤にしながら言いだす始末。
いや、スケベって。こいつ、無自覚のうちに聖女として洗脳され始めてるんじゃないのか?
・・・・・だが、しかし。実際スケベすぎる。こんな未開の文明でどうやって作ったのかはわからないが肌が透けて見えるほど薄い濃い黒茶色をしたパンストはキラキラと光沢を放ち、美野里の細い太ももを魅力的なほどにむっちりとした印象を与えているのだ。
これは毒だ。目の毒だ。健全な男子なら誰でもこんな光景を見せられたら太ももに縋り付いてハァハァ言ってしまうはずだ。
見てはいけない。これは目の毒なんだ。
俺は自分にそう言い聞かしながら仕方なく美野里に背中を向けて見ないようにしてやると美野里はそそくさと着替える。しかし、よく考えたら上から服を着るんだから、別にブラをつけなくてもバレ無いのでは?
「わぁっ。なんかお姫様みたいだ!」
着替え終わった美野里は鏡に映ったナイトドレス姿の自分を見て驚きの声を上げる。
「こんな衣装、演劇部に置いてあったら、皆、苦労しないんだけどなぁ」
などと的外れな事を言っていた。
着替えが終わるとリリアンとヴァイオレットが美野里の姿を見てキャーキャー言って喜んだ。いや、俺のこの貴族風の服装姿ももうちょい褒めてくれてもよさそうなもんだが、文字通り役者が違った・・・
その後、2人の反応に若干の苛立ちを感じていた美野里だったが、居間に用意された食事を見た途端に機嫌を直して「うわっ! 見てごらん、剣一君。」といって大はしゃぎした。意外と単純な奴なのかもしれん。
と、俺も思ってはみたものの。用意された食事は確かに御馳走だった。
地球のエビやカニそっくりの甲殻類に、何かの動物の分厚い肉塊を焼いて作ったステーキ。焼きたての丸いパン。食欲を刺激する香辛料の香りがするスープ。それらが大盛に用意されていた。
「こ、こんな御馳走。悪いな、リリアン、ヴァイオレット。」
俺が頭を下げると、リリアンとヴァイオレットは嬉しそうに笑って「どうぞ、ご遠慮なくお召し上がりください。今夜は歓迎の宴です。」と言って食事を勧めてくれた。しかし、そうは言っても俺達よりも年下の少女二人を目の前に男二人だけが食うわけにはいかない。
「リリアン、ヴァイオレット。
せっかくの宴だというのなら、君達も一緒に食べてくれないかい?
食事をしながら聞きたいことも山盛りなのだよ。お願いだよ。」
美野里は気の利いたことを言うと、リリアンとヴァイオレットは、嬉しそうに顔を見合わせてから小さく頷いて「では、御相伴にお預かりいたします。」と満面の笑顔で言って俺達と同じテーブルに座った。御馳走にありつけるのが嬉しいのだろう。その素直な様子がなお可愛い。
俺の対面には美野里とリリアンが。そして俺の隣にはヴァイオレットが座った。
この食事は俺達に与えられたものだから、2人から食事に手をつけるのは躊躇いがあるだろうと思い、俺がテーブルの中央に置かれたブロック肉を4人分の皿へステーキサイズに切り分けて配る。それをしているうちに美野里は金属製のカップへ果物のジュースを注いで配った。
そうして準備が終わると俺と美野里はカップを打ち鳴らせて「かんぱーい」と声を上げた。
それを見ていたリリアンとヴァイオレットは興味深そうに「何ですか? それは?」と尋ねる。どうやらこの世界に乾杯の風習は無いらしい。
美野里は2人に「ボクらの世界にあった食事の気分を盛り上げる作法さ。気にしなくても良いけど、やってみるかい?」と勧めるとリリアンとヴァイオレットは恐る恐るカップを鳴らして乾杯を言う。その初々しさが可愛い。俺の対面に座る美野里と顔を合わせてニッコリ笑ってしまうほどだ。
食事を始めてみると、コレが美味い。日本のレストランと比較しても劣らない味である。
「美味いなっ!」「うんっ! 剣一君」と2人で声を上げてしまうほどだった。
そして食事がある程度落ち着くと俺達はリリアン達にこの世界の事を改めて質問した。
「聞きたいんだけど、君たちは何歳だい? 俺達よりも3つは低そうだけれど?」
「もうすぐ13歳です。」
「13っ!! じゃ、今は12歳っ!?」
2人の年齢を聞いて俺達は驚いたが、そうなると大きな疑問が生まれる。
「その年でもう働いているのか。この世界には子供に通わせる学校が無いのか?」
「学問所ですか? 私達はこの神殿が学問所に当たりますが、一般の方が通う為の学問所も勿論、ございますよ。
階級等によって通う学校は変わりますが、星見。宗教。武術。魔術。歴史。語学。算数等を学びます。
恐らく勇者様と聖女様も訓練の為に1年間は入学されると思います。」
どうやら俺達はこの世界に来ても一応は「学生」をやれるらしい。
しかし、この世界は戦争継続中だ。そんな悠長な事をしていて良いのだろうか?
「質問がある。学生なんてやる暇があるのか?
魔王が今すぐに襲ってこない保証があるのか? 」
ヴァイオレットが答えた。
「大丈夫です。魔王様は瘴気の濃い所に住まわれ、魔王様ご自身が瘴気の薄い人間の土地に現れることはないのです。ですが瘴気の濃い土地を増やすために魔物の軍隊を送られます。魔物は瘴気を放ち大地を穢します。瘴気の毒が薄い場合は大地が自然治癒によって浄化されるのですが十年以上大地が穢されたらもう回復しません。
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