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第三十三話 再勝負
俺に諭されたチャールズは茫然自失となって投げられた場所に座り込み、自力で歩くことが出来なくなっていた。仕方なく同じように敗れたクラスメイト達が彼の両腕を掴んで引き摺るようにして競技の場から連れ出していく。
そうして、敗残兵がいなくなった競技の場には、ウィリアムのチームと一名少なくなった俺のチームだけが残った。
共に二つの陣地を守り、睨み合う形で競技再開となった。
試合は既に再開されている。が、俺とウィリアムはどちらからそうしようと言ったわけでもないのに、双方が同時に歩み出て互いの陣地間の中央にて顔を合わせる。
「やはり狙っていたな。ウィリアム。俺の陣地が襲われる瞬間を。」
「・・・・もちろん。お前が防御陣形に徹した瞬間にお前が何をする気なのかわかったし、俺がその戦闘に加担せずに勝利するのが一番手っ取り早いからな。」
ウィリアムは俺の作戦を見抜いていたことを自慢げに笑いながら言うと陣地を奪ったパンの方を見た。
「あいつがあそこまで足が速いとは思わなかったし、気配を消して陣地を抜け出す機転が利く奴だとは思わなかったよ・・・・。」
ウィリアムの言葉はパンへの再評価であり、俺への称賛だった。
「まぁな。それに意外と勇敢だったろ。お前たちは俺の仲間に対する評価を変えるべきだ。」
「ああ。間違いない。」
ウィリアムは満足そうに笑うと、提案をしてきた。
「提案がある。お前のチームは既に一人失っている。このまま戦い続けるのも構わんが、俺との一騎打ちと言うのはどうか?」
ウィリアムは俺を試すように尋ねたが、俺はその申し出を拒否した。
「折角の申し出だが拒否する。」
「何故だ? 俺と戦いたくはないのか?」
俺はその質問に笑ってしまう。こいつ、俺のこと好きすぎるだろう。
「いや。お前とは戦いたい。だが、俺は前の世界では個人競技しかしたことがない。折角なら団体競技を楽しみたいと思ったのさ。
それにお前とは戦いたいが、それはあくまでも団体戦の中でだ。自然の成り行きでお前と遭遇し、戦う。」
「なるほど。自然の成り行きでか。それは面白い。」
ウィリアムは納得すると俺にハグをし「では、健闘を祈る。」と耳元で囁いた。俺もそれに応じて「ああ、お前もな。」と答えた。
そうして俺達は最初の時と同じように申し合わせたわけでもないのに互いに背を向けて自陣に戻っていった。
ウィリアムは最初の陣地に戻り、俺はパンが奪取してくれた陣地に戻った。
「剣一様。ウィリアム君はとっても強いニャ。どうするにゃん?」
パンは猫耳を倒し、怯えた様子で尋ねた。
俺はそんなパンの頭を撫でながら「大丈夫。最初に俺の言った通りにしろ。」と言って励ます。
それから元の陣地にいた連中に手を振って「最初の作戦で行く」とジェスチャーする。全員が俺を信用して大きく頷いた。
一方、ウィリアムは新たな作戦を伝えるために、元居た陣地から新たに奪取した陣地へと向かって歩き出した。
と、同時に俺達は走り出す。
本陣にいた者達はパンが新たに奪取した陣地に。そして俺とパンはウィリアムが離れた陣地へと向かって走り出したのだ。
「あっ!?」
虚を突かれたウィリアムが驚く声が聞こえた。試合はとうに再開されている。少し友達意識にほだされてウィリアムは油断しすぎたのだ。
しかし、それに気が付いても既に時、遅し。ウィリアムは二つの陣地に等分に人員配置した。つまり3人づつだ。
だが、作戦伝達のためにウィリアムが陣地を離れてしまえば、人員配分は2人と4人になってしまう。そして俺とパンが向かうのはウィリアムが移動したために2人になった陣地の方だ。2対2で戦力は互角だ。
だが、しかし。戦力は互角でもこちらには機先を制した有利がある。
俺は未だ虚を突かれて慌てふためく敵に対して目くらましをかける。
「おお。雷の神。その眷属にして万象のうちの光を司りし我らが祖霊ウィル・オ・ウィスプよ。その権能をもって雷光を前方に放ち、敵の目をくらませ我らを守り給え。」
「ライトニングっ!」
戦う準備が出来ていない2人は俺の閃光をまともに浴びてしまって目がくらみ、まともに戦闘が出来ない。
苦し紛れに火魔法を使って対抗しようとするが、目をつぶった状態では的に当てられるはずもなく、俺とパンの攻撃を一身に受けてたちまちのうちに敗北してしまった。
「・・・・やってくれたなっ!!」
ウィリアムが悔しそうに吠えたが、時すでに遅し。こちらはチャールズを失って一名の欠員を出しているが、向こうは二名失っている。5対4。数の上ではこちらの方が上だ。
が、ウィリアムがいる以上、普通に戦っても勝ち目はない気がした。
「剣一様。ここからどうするにゃん?
一応作戦は上手く行ったけど、この先も最初の作戦通りいくにゃん?」
パンが不安そうに言う。その不安はウィリアムの実力が生んでいるのだろう。パンはさっきからウィリアムのことばかり気にしている。
その不安がる様子からウィリアムが魔法でも優れていることは明らかだ。魔法初心者の俺では勝ち目がないとおもっているのだろう。
しかし、それは確かにそうなのだ。俺が魔法でウィリアムとまともにやり合って勝てるはずがないんだ。
向こうは天才。俺は初心者。
だが、勝てる可能性はゼロではない。それはこれが団体戦だからだ。俺が先ほどウィリアムとの一騎打ちを拒んだ理由は何も団体競技がやりたかっただけが理由じゃない。一騎打ちだと勝ち目がなく、団体戦なら何とかなるかも知れなかったからだ。
俺はその何とかなるかもしれない。という一点の希望にかける。
ウィリアムの陣営が一丸となって怒りの形相でこちらに向かってくる。恐らくは陣地も捨てた特攻を仕掛けて試合を終わらせるつもりだ。さきほどの敗残兵どもと違ってウィリアムがいればそれも可能かもしれない。
俺は祈る気持ちで美野里のほうを見た。心配そうに俺を見ていた。
それで勇気がわいた。
(幸運を授けてくれよ。俺の可愛い幸運の女神様。)
心の中でそう呟くと俺は「散れっ」と、号令をかける。
言われて総員がバラバラに駆け出す。それを見てウィリアムが足を止める。バラバラになった俺達は四方の陣地を取るように動いたからだ。
「くそっ!」
ウィリアムは悔しそうに悪態をつくと自分の仲間とともに残った陣地の守りを固めた。
既にこちらは数の有利を得た。さらに陣地の数でも優位にある。
ウィリアムのチームは現在4名。こちらは5名が3方向に散らばっている。
ウィリアムが新たに陣地を取ろうと攻撃を仕掛けてるために必要な人員配置は攻撃2名、陣地の守備には2名は残さねばならない。そうしなければ陣地の守備は不可能だからだ。
一方、俺達は陣地を一か所奪われることを苦にはしない。ウィリアムが陣地を出た場合、ウィリアムと遭遇しないように逃げながら守備に回った2名を全員で攻撃すればいいのだから。
だが、この作戦はウィリアムが攻勢に出たときにだけ初めて意味を持つ。何故なら俺達の戦力ではウィリアムが守る陣地を攻め落とすことは不可能だからだ。
それは絶対に不可能だ。そのことは俺の仲間たちの恐怖が証明してくれている。全員が束になってもウィリアムには勝てないと確信している。彼らの表情がそれを物語っていた。
だから、俺達も攻撃に転ずることは出来ない。
先に動いた方が負けとなる。両陣営は睨み合って動けなくなり、時間だけが経過していく。
そうして、敗残兵がいなくなった競技の場には、ウィリアムのチームと一名少なくなった俺のチームだけが残った。
共に二つの陣地を守り、睨み合う形で競技再開となった。
試合は既に再開されている。が、俺とウィリアムはどちらからそうしようと言ったわけでもないのに、双方が同時に歩み出て互いの陣地間の中央にて顔を合わせる。
「やはり狙っていたな。ウィリアム。俺の陣地が襲われる瞬間を。」
「・・・・もちろん。お前が防御陣形に徹した瞬間にお前が何をする気なのかわかったし、俺がその戦闘に加担せずに勝利するのが一番手っ取り早いからな。」
ウィリアムは俺の作戦を見抜いていたことを自慢げに笑いながら言うと陣地を奪ったパンの方を見た。
「あいつがあそこまで足が速いとは思わなかったし、気配を消して陣地を抜け出す機転が利く奴だとは思わなかったよ・・・・。」
ウィリアムの言葉はパンへの再評価であり、俺への称賛だった。
「まぁな。それに意外と勇敢だったろ。お前たちは俺の仲間に対する評価を変えるべきだ。」
「ああ。間違いない。」
ウィリアムは満足そうに笑うと、提案をしてきた。
「提案がある。お前のチームは既に一人失っている。このまま戦い続けるのも構わんが、俺との一騎打ちと言うのはどうか?」
ウィリアムは俺を試すように尋ねたが、俺はその申し出を拒否した。
「折角の申し出だが拒否する。」
「何故だ? 俺と戦いたくはないのか?」
俺はその質問に笑ってしまう。こいつ、俺のこと好きすぎるだろう。
「いや。お前とは戦いたい。だが、俺は前の世界では個人競技しかしたことがない。折角なら団体競技を楽しみたいと思ったのさ。
それにお前とは戦いたいが、それはあくまでも団体戦の中でだ。自然の成り行きでお前と遭遇し、戦う。」
「なるほど。自然の成り行きでか。それは面白い。」
ウィリアムは納得すると俺にハグをし「では、健闘を祈る。」と耳元で囁いた。俺もそれに応じて「ああ、お前もな。」と答えた。
そうして俺達は最初の時と同じように申し合わせたわけでもないのに互いに背を向けて自陣に戻っていった。
ウィリアムは最初の陣地に戻り、俺はパンが奪取してくれた陣地に戻った。
「剣一様。ウィリアム君はとっても強いニャ。どうするにゃん?」
パンは猫耳を倒し、怯えた様子で尋ねた。
俺はそんなパンの頭を撫でながら「大丈夫。最初に俺の言った通りにしろ。」と言って励ます。
それから元の陣地にいた連中に手を振って「最初の作戦で行く」とジェスチャーする。全員が俺を信用して大きく頷いた。
一方、ウィリアムは新たな作戦を伝えるために、元居た陣地から新たに奪取した陣地へと向かって歩き出した。
と、同時に俺達は走り出す。
本陣にいた者達はパンが新たに奪取した陣地に。そして俺とパンはウィリアムが離れた陣地へと向かって走り出したのだ。
「あっ!?」
虚を突かれたウィリアムが驚く声が聞こえた。試合はとうに再開されている。少し友達意識にほだされてウィリアムは油断しすぎたのだ。
しかし、それに気が付いても既に時、遅し。ウィリアムは二つの陣地に等分に人員配置した。つまり3人づつだ。
だが、作戦伝達のためにウィリアムが陣地を離れてしまえば、人員配分は2人と4人になってしまう。そして俺とパンが向かうのはウィリアムが移動したために2人になった陣地の方だ。2対2で戦力は互角だ。
だが、しかし。戦力は互角でもこちらには機先を制した有利がある。
俺は未だ虚を突かれて慌てふためく敵に対して目くらましをかける。
「おお。雷の神。その眷属にして万象のうちの光を司りし我らが祖霊ウィル・オ・ウィスプよ。その権能をもって雷光を前方に放ち、敵の目をくらませ我らを守り給え。」
「ライトニングっ!」
戦う準備が出来ていない2人は俺の閃光をまともに浴びてしまって目がくらみ、まともに戦闘が出来ない。
苦し紛れに火魔法を使って対抗しようとするが、目をつぶった状態では的に当てられるはずもなく、俺とパンの攻撃を一身に受けてたちまちのうちに敗北してしまった。
「・・・・やってくれたなっ!!」
ウィリアムが悔しそうに吠えたが、時すでに遅し。こちらはチャールズを失って一名の欠員を出しているが、向こうは二名失っている。5対4。数の上ではこちらの方が上だ。
が、ウィリアムがいる以上、普通に戦っても勝ち目はない気がした。
「剣一様。ここからどうするにゃん?
一応作戦は上手く行ったけど、この先も最初の作戦通りいくにゃん?」
パンが不安そうに言う。その不安はウィリアムの実力が生んでいるのだろう。パンはさっきからウィリアムのことばかり気にしている。
その不安がる様子からウィリアムが魔法でも優れていることは明らかだ。魔法初心者の俺では勝ち目がないとおもっているのだろう。
しかし、それは確かにそうなのだ。俺が魔法でウィリアムとまともにやり合って勝てるはずがないんだ。
向こうは天才。俺は初心者。
だが、勝てる可能性はゼロではない。それはこれが団体戦だからだ。俺が先ほどウィリアムとの一騎打ちを拒んだ理由は何も団体競技がやりたかっただけが理由じゃない。一騎打ちだと勝ち目がなく、団体戦なら何とかなるかも知れなかったからだ。
俺はその何とかなるかもしれない。という一点の希望にかける。
ウィリアムの陣営が一丸となって怒りの形相でこちらに向かってくる。恐らくは陣地も捨てた特攻を仕掛けて試合を終わらせるつもりだ。さきほどの敗残兵どもと違ってウィリアムがいればそれも可能かもしれない。
俺は祈る気持ちで美野里のほうを見た。心配そうに俺を見ていた。
それで勇気がわいた。
(幸運を授けてくれよ。俺の可愛い幸運の女神様。)
心の中でそう呟くと俺は「散れっ」と、号令をかける。
言われて総員がバラバラに駆け出す。それを見てウィリアムが足を止める。バラバラになった俺達は四方の陣地を取るように動いたからだ。
「くそっ!」
ウィリアムは悔しそうに悪態をつくと自分の仲間とともに残った陣地の守りを固めた。
既にこちらは数の有利を得た。さらに陣地の数でも優位にある。
ウィリアムのチームは現在4名。こちらは5名が3方向に散らばっている。
ウィリアムが新たに陣地を取ろうと攻撃を仕掛けてるために必要な人員配置は攻撃2名、陣地の守備には2名は残さねばならない。そうしなければ陣地の守備は不可能だからだ。
一方、俺達は陣地を一か所奪われることを苦にはしない。ウィリアムが陣地を出た場合、ウィリアムと遭遇しないように逃げながら守備に回った2名を全員で攻撃すればいいのだから。
だが、この作戦はウィリアムが攻勢に出たときにだけ初めて意味を持つ。何故なら俺達の戦力ではウィリアムが守る陣地を攻め落とすことは不可能だからだ。
それは絶対に不可能だ。そのことは俺の仲間たちの恐怖が証明してくれている。全員が束になってもウィリアムには勝てないと確信している。彼らの表情がそれを物語っていた。
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