128人目の勇者と聖女になった男の子の話

黒神譚

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第三十六話 ご褒美

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「やったにゃん! 剣一様のおかげで勝てたにゃん!」
「皆から見下されてた俺達が勝ったのか? あははっ! 俺達が勝ったんだっ!
 落ちこぼれの俺達がっ!!」

 俺の勝利宣言を聞いてパンとオースティンは、ようやく事態を認識し、大いにはしゃいだ。
 だが、アクセル一人。頭を抱えて座り込んで叫んだ。

「もう、だめだっ! これから試合に勝った腹いせにイジメられるんだっ!」

 流石に悲観的すぎるコメントに生徒全員が一瞬唖然あぜんとし、その後に声を合わせていった。

「いや、さすがにそれはない。」

 俺の仲間たちは勇者・剣一のお陰で勝てたと「勇者様万歳」を合唱し始め異様な空気となった。
 勝利に湧くそんな俺達にはクラスメイトも近づき難い印象があったのか誰も寄ってこなかったが、ウィリアムが先ず近づいてきた。


「やられたよ剣一。だが、お前の言い分もわかるが、ルール上は引き分けだ。
 俺達は負けていない。」
「・・・・ああ。それでいい。全く負けず嫌いな奴だな。」

「お互い様だぜ 剣一。しかし、お前。全て見越して戦っていたのか?」

 俺は素直に笑って答える。
「いや、流石に行き当たりばったりさ。
 お前があんまり勘が良すぎてさ。ウィリアムが作戦を変えたとき、本当にどうしようかと思ったよ。
 最初の作戦はただの時間稼ぎだったんだが、それじゃどうしょうもなくなった。
 俺も流石に頭を抱えたくなったよ。
 だけどその時。怯えたパンがさ、神頼みし始めた。それで昨日教科書めくって調べたシャウシュカ様の呪術を思いついたって流れさ。」

 ウィリアムは呆れた。

「本当に行き当たりばったりだったのかよ。」
「まぁな。」
「それでシャウシュカ様のことを思いつくなんて運のいい奴だ。」

「・・・何の話だ?」

 ウィリアムの突っ込みの意味が分からずに首をかしげる俺。そこにシンディー先生と先生に肩を貸した美野里が現れた。

「剣一様。お忘れですか? 貴方様は邪神アスモデウスの祝福を受けた御方。
 明星神シャウシュカ様は、祖神ウル様とアアス様と同じく虚無の世界を旅してこの世界を訪れた神で他の神々とは異なり、この世界の神々の事情には一切、無関係の御立場の神ですから邪神アスモデウスの祝福を受けた剣一様にもお力添えをして下ります。
 仮にシャウシュカ様以外の神。例えば北西の宿星神メズラ様の力を借りようとした場合、貴方様は呪われることはあっても加護を受けられませんでした。」

 シンディー先生の言葉を聞いて俺は思わず「げっ、マジで?」と声を上げる。
 そうなのだ。我が神、アスモデウス神はこの世界の神々全ての敵である。だから俺も神々から忌み嫌われているという寸法だ。
 しかし、まさか天体の神の力を借りようとしたら呪われる可能性があったなんて。運よくシャウシュカ様の陣形を思い出して本当によかった。

 俺が納得したのを見届けるとシンディー先生は勝者チームと敗者チームの処遇について告げる。

「それでは、以後の時間は勝者チームは破軍の星の陣形を学びましょうか。
 敗退したチームの者は、意識が無くなるほど魔法の練習をしてもらいましょうか。」

 負けた生徒たちの悲鳴が一斉に鳴り響く。 
 なるほど。シンディー先生は確かに怖い先生らしい。

 その後、2時間の授業を終えるとウィリアム達、一般生徒は普通学科の授業に行き、俺と美野里は特別授業としてそのままシンディー先生による魔法授業を受ける。

 受ける予定だった。

 しかし、団体戦を観戦するときに熱中しすぎたシンディー先生は、体への負担が大きかったらしく、授業を早々に切り上げて自習を命じた。
 魔法初心者の俺達を置いて帰るなんて結構、自由な人だなとも思ったが、ただ、去り際に俺のことをずいぶん褒めてくれた。

「剣一様。素晴らしい試合でした。
 貴方様の活躍ぶりを見て、確信しました。貴方様は100年に一度の大勇者様の器。
 どうか、このまま弛まぬ精進を続け魔王様を倒してくださいませ。貴方様になら必ずできるはずです。
 そうしてもらえれば、アナタの先達の勇者たちも浮かばれるというものです。」

 シンディー先生はそれだけ告げると涙を拭って帰っていった。
 魔法訓練場には、俺と美野里だけが残された。

「クスクス。
 剣一君。君、100年に一度の大勇者様らしいね。」

 美野里がくすぐったいような気分になるからかいを仕掛けてくる。

「水晶玉を割った美野里ほどじゃないさ。」

 俺がそう言っても美野里は悪戯っぽい笑顔を見せながら俺を見る。

「でも、本当に凄かったよ。ウィリアム君率いるチームによく勝てたね?
 見ていて手に汗握ったよ。」
「俺のこと、応援してくれてたか?」
「当り前さ。ボクと君の仲じゃないか。
 さ、自習練習を始めようじゃないか!」

 美野里はそういうと、大きく背伸びをする。その伸び切った体のラインに俺は色気を感じてしまい、忘れていた重要なことを思い出した。

 今は美野里と2人っきりなのだ。
 ならば、俺がやることは一つだけだっ!

「待てよ。俺は魔法初心者である上にクラスメイトに落ちこぼれと見切られた仲間を率いてあそこまで戦ったんだぜ。凄くないか?」

 俺がそう言うと美野里はキョトンとした表情で子猫のように小首をかしげた。
「・・だから凄いって言ったじゃないか?」
「そう。俺は凄いことをした。凄いぞ、俺。
 だからさ・・・・・」

 美野里は俺の態度を不思議に思って大きな瞳をなお開いて不思議そうに聞き返す。
「・・・・だから?」

 俺は深呼吸一つして両手を合わせた。

「だから、ご褒美下さい。」

「えええっ!?
 ご、ご褒美って何?」

 意外な展開だったのだろう、美野里は慌てて聞き返す。俺は間髪かんはつを入れずに答える。

「服を着替えてガーターベルト見せてくださいっ!!」

 ・・・・
 ・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・

「・・・・は、はぁ~~~っ!!!?」

 しばしの沈黙の後、美野里は素っ頓狂すっとんきょうな声を上げた。

「な、なぁ、頼むよ。全男子の憧れ。一般制服に着替え直してスカートめくってガーターベルトを見せてくれよっ!」

「な、ななな、何をバカなことを言ってるんだ、君はっ!」

「いいじゃねぇか。今なら二人っきり。誰も見ていないんだからさぁ。」
「・・・え~~~?」

 俺の熱意に美野里は言葉を失い、しばらく身動き一つしなかったが、やがて顔が真っ赤に染まっていく。
 そして、下から俺を睨みつけるような目で尋ねる。

「そ、そういうのってクラスの女の子と恋人になってから頼めばいいんじゃないの?
 うちのクラスの女の子たち、かなり可愛い子ばっかりだよ。
 ど・・・・・どうしてボクなのさ。ボク、男の子なんだぞ。」

 言われてみればそうである。何故、俺は美野里のガーターベルト姿が見たいのだろうか? 相手は男なのに?
 俺は首をひねって考える。

「どうしてって・・・・何故なんだろうな?
 俺は他の女子ではなくてお前のガーターベルト姿が見たいんだ・・・・・んん?」

 俺が真剣に悩んでいると、美野里は少し嬉しそうに笑って「もう、バカだね。君は。」と言った。
 その声と表情に俺の胸が一撃でときめくのを覚えた。それで俺はどうして自分が美野里のガーターベルト姿が見たいのか理解した。

「そうだ。わかった。
 お前が一番可愛いからだ。クラスの誰よりもお前は可愛い。うちのクラスの女子は確かにレベルが高い。可愛い。だが、お前には負ける。
 だから俺はお前のガーターベルト姿が見たい。」

 俺の言葉に照れたのか美野里は更に顔を真っ赤に染めて、横を向き、「全く、本当に君はバカだね。こんな罪な無自覚告白が許されるのか?」という。

 告白? なんの?
 俺、何か告白したっけ? いや、そんなことはどうでもいい。二人っきりになれるチャンスなんてこの先、早々ないんだ。とにかく今は頼むのみ。

「な、なぁ。頼むよ、見せてくれたらその映像は脳内に焼き付けて一生大事に使うからっ! 頼むよっ!」
「使うって何に使う気だよ、何にっ!?」

 美野里は呆れたような声を上げて怒ったが、やがて「そ、そんなに見たい? ボクの下着姿が」と、もう一度、問う。
 俺が何度も首を縦に振ると、美野里はため息一つついて「少し待ってて」と言って更衣室に向かっていく。

 み、見せてくれるんだっ! やった!!
 そう思いながら着替えを待つ間、俺の胸は興奮で心臓が張り裂けるんじゃないかと思うほど高鳴った。

 悪夢のように長く待ち遠しい時間の後、美野里が一般制服に着替えて更衣室から戻って来た。俺はダッシュで迎えに行く。

「も、もう。本当にバカなんだから。」
 俺の様子に呆れながら、それでも美野里は羞恥しゅうちに震える手でスカートをめくって見せてくれた。

「い・・・・一回だけなんだからね・・・・」

 俺はその時見た。薄い青と薄い緑の小さな花が散りばめられた下着パンツとガーターベルト。
 そして何よりも、恥じらいと戸惑いとで真っ赤に震える可憐な姿なのに、どこか嬉しそうな小さな微笑みをたたえた美野里の顔。
 俺はガーターベルトだけではなく、美野里のその全身を美しいと思った。
 その両太ももを抱きしめて顔をうずめたいと思うのに、その全身を見たくて近づけない。

 この日の美野里ほどキュートで美しいものは存在しないだろう。確かに男なのに俺にとって美野里は聖女様どころか、紛れもなく女神様だった。
 俺は一生、この姿を忘れない。
 そして、この映像を一生有難く使わせてもらおうと心に誓うのだった・・・・・。
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