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第五十九話 永遠の別れ
「オースティンっ!! 何言っているんだっ!!
ここにいたら死ぬんだぞっ!! 俺達と帰るんだっ!」
俺とウィリアムがどれほど必死に説得してもオースティンの意思は揺るがなかった。
「剣一様。そしてウィリアム君。今までありがとう。
僕は剣一様に出会えなかったら、今の自分はいないと思っています。
魔法授業の時の団体戦を覚えていますか? あの時、あなたに頼りにしていただけた。グズだった僕が初めて自分が変われると思ったんです。
ウィリアム君。君が剣一様に負けないように陰ながら努力する姿を僕は知っている。だから僕も同じように頑張った。その甲斐あってウェストン侯爵から頼りにしていただける実力を身に着けたんです。
二人のおかげです。
その二人のおかげで変われた自分に嘘は付けない。
ごめんなさい。さようなら・・・・。」
オースティンは俺達と話すことが苦しいのか、そこで話を断ち切ると俺達に背を向けて『仲間』の方へと走っていった。
そう。『すでにこの前線基地の兵士たちが僕の仲間なんだ。』とでも言っているかのような後姿だった。
「なぁああああああ~~~っ!!」
その後ろ姿にパンが悲しげな声を上げる。すると、オースティンの足は一瞬止まったが、後ろを振り返ることなく再び歩き出した。
その背中が揺れているのは涙のせいだろうが、その涙の意味は後悔や無念の為ではない。かつての仲間を振り切っていく謝罪の気持ちから来るものだ。
それは誰にもわかっていたので・・・・それ以上、引き留める勇気が俺達にはなかった。
ただ、別の勇気を出す者がいた。
「やるにゃんっ! ぼくも頑張って戦うにゃんっ!!
皆のために頑張れるにゃんっ!!」
涙をボロボロ流しながらパンがそう言って進言した。
「お前じゃ無理だ。諦めろっ!!」と俺とウィリアムが引き止める前にウェストン侯爵は拒否した。
「ダメだっ!・・・・・・・・ パン。臆病な君が勇気を出してくれたこと、嬉しく思う。
だが、君にはやらねばならんことがある。
その俊足は貴重だ。
誰よりも遠くを見通すその目はかけがえのないものだ。
そして、その危険をかぎ分ける嗅覚と聞き逃さない聴覚は勇者にこそ必要なのだ。
君の力は君が思う以上に君だけのものにしてはいけない。
さぁ、行け。行って世界を救う勇者の役に立てっ!!」
ウェストン侯爵は泣きじゃくるパンの頭を撫でながらそう言うと、俺達にクルリと背中を向けてから兵士たちに言った。
「馬車はまだかっ!!
ここで万が一にも勇者を避難させることが出来なければ、今生に於いてこれ以上の恥があろうかっ!!」
ウェストン侯爵の喝が効いたのか、馬車は程なく俺達の下へと届いた。
すぐにジョーンズ大佐の部下たちが馬車から飛び降りると俺達に挨拶する暇もなくウェストン侯爵の下へと駆け、そしてウェストン侯爵の指示を貰っていた。
誰もが別離よりも戦う事に集中していたのだ。
そして、ジョーンズ大佐もまた、哀しい別れと戦っていた。
シンディー先生としばらく何か言葉を掛け合ってから、互いに泣きながら熱い抱擁をし口づけを交わした。
その時、二人が何を言ったのか。それは2人しか聞いてはいけないことだし、二人しか知ってはいけないことだ。
この一瞬は2人だけのものだからだ。
だが、その時間は無慈悲に終わる。
先に覚悟を決めたのはシンディー先生の方だった。ジョーンズ大佐を両手で押し戻すと、涙に肩を震わせながらも背を向けて「行ってください。」と言った。
ジョーンズ大佐にはまだ未練があった。
「死ぬのなら、せめて共にっ・・・・・!!」
そのささやかすぎる願いは、ついに叶えられなかった。
ジョーンズ大佐が手綱を握る馬車はシンディー先生を。オースティンを残して動き始める。
その馬車を動かしているのは誰あらん、個々に最も残りたい者のはずのジョーンズ大佐だった。そんな大佐の無念を知って泣いているかのようにガラガラと車輪は乾いた音を立てて鳴り、馬の蹄の音がパカラッ、パカラッと無常に響いた。
遠ざかる景色に別れを告げるように動き始めた。
そして、出口門を通り過ぎるとき、城壁の上で見送るウェストン侯爵が去り行く俺達に叫んだ。
「剣一っ! ウィリアムっ!! 我らは簡単には死なんっ!
必ず強くなって戻って来いっ!! それまで我らはこの城壁を守り、猫の子一匹通しはせんぞっ!!
パンっ!! 君がここを通り抜ける名誉ある最後の一人だぞっ!」
その言葉を皮切りに城壁に登った兵士たちが一堂に叫んだ。
「うおおおおお~~~~っ!!」
その声は地響きのように俺達の肌をビリビリ振動させる。
「戻ってきますっ!! 必ず、すぐにっ!!
だから、だから・・・・・誰も死なないで~~っ!!」
必死の思いで彼らに応えるように俺も叫んだ。
「剣一っ!! 異世界の呪法であるはずの蟲毒の術を魔王がどのルートで知ったのか突き止めろっ!
他にどんな隠し玉を持っているのかわからんが、そのルートさえ分かれば、対策の立てようが必ずあるっ!!
頼んだぞ~~~っ!!」
ウェストン侯爵の最後の叫びは俺に対する頼み事だった。それが未来にへ繋がる願いだったので、俺達はまだ侯爵が生き残る覇気を持っていることを信じることが出来た。
彼らは決して死ぬつもりで残るんじゃない。死ぬ覚悟を秘めたまま、明日への希望をもって残るんだ。
・・・・・・馬車に乗った全員がそう思わずには、やっていられなかったんだ。
途中、別の砦から複数の部隊とすれ違った。早馬の知らせを聞いた近隣の拠点からの応援だろう。
俺達がすれ違っただけでも百は下らない数だったが、あの敵の数では焼け石に水だ。
彼らは知っているのだろうか? この先が地獄だという事を。
過労で意識を失っている美野里は幸せだ。
こんな陰鬱な気分を知らずに済むのだから・・・・・。
すれ違って消えていく応援部隊を馬車の後部から見送りながらパンが悲痛な声を上げて泣く。
「うなぁああああ~~~ん。
あおぉおおお~~~ん。」
滂沱の涙を流し、切ない声を上げながらパンは泣く。
見送る兵士に向けてのものなのか、彼らの進む方向を見て前線基地の仲間を思い出してのものなのか・・・・それは誰にもわからなかったが、その切なすぎる泣き声は俺達の胸を酷く締め付けた。
「もういいっ!! パン、泣くなっ!!
泣かないでくれっ!!」
パンの泣き声にこらえきれなくなったウィリアムがパンに抱き着きながら言った。
そう言うウィリアムも耐え切れずに大粒の涙を流しているというのに・・・・否、この場の誰もが、もう涙を流さずにはいられなかった。
「あぉおおお~~~ん。
なぁあああ~~~ん」
すでに自分の感情をコントロールできなくなったパンは泣き続けることしかしなかった。
「もういいっ! やめろっ!!
もう・・・・・やめてくれよ・・・・・」
ウィリアムはその場に泣き崩れた。
「わあああああ~~~~~っ!!!!!」
馬車の先頭では、いつも冷静なはずのジョーンズ大佐が空に向かって悲鳴じみた叫び声を上げている。
そして、後方では切ないパンの泣き声が俺達の心を痛めつけるように・・・・・いつまでもいつまでも響くのだった。
うなぁああああ~~~ん
あぉおおおおお~~~~~~ん・・・・・・
ここにいたら死ぬんだぞっ!! 俺達と帰るんだっ!」
俺とウィリアムがどれほど必死に説得してもオースティンの意思は揺るがなかった。
「剣一様。そしてウィリアム君。今までありがとう。
僕は剣一様に出会えなかったら、今の自分はいないと思っています。
魔法授業の時の団体戦を覚えていますか? あの時、あなたに頼りにしていただけた。グズだった僕が初めて自分が変われると思ったんです。
ウィリアム君。君が剣一様に負けないように陰ながら努力する姿を僕は知っている。だから僕も同じように頑張った。その甲斐あってウェストン侯爵から頼りにしていただける実力を身に着けたんです。
二人のおかげです。
その二人のおかげで変われた自分に嘘は付けない。
ごめんなさい。さようなら・・・・。」
オースティンは俺達と話すことが苦しいのか、そこで話を断ち切ると俺達に背を向けて『仲間』の方へと走っていった。
そう。『すでにこの前線基地の兵士たちが僕の仲間なんだ。』とでも言っているかのような後姿だった。
「なぁああああああ~~~っ!!」
その後ろ姿にパンが悲しげな声を上げる。すると、オースティンの足は一瞬止まったが、後ろを振り返ることなく再び歩き出した。
その背中が揺れているのは涙のせいだろうが、その涙の意味は後悔や無念の為ではない。かつての仲間を振り切っていく謝罪の気持ちから来るものだ。
それは誰にもわかっていたので・・・・それ以上、引き留める勇気が俺達にはなかった。
ただ、別の勇気を出す者がいた。
「やるにゃんっ! ぼくも頑張って戦うにゃんっ!!
皆のために頑張れるにゃんっ!!」
涙をボロボロ流しながらパンがそう言って進言した。
「お前じゃ無理だ。諦めろっ!!」と俺とウィリアムが引き止める前にウェストン侯爵は拒否した。
「ダメだっ!・・・・・・・・ パン。臆病な君が勇気を出してくれたこと、嬉しく思う。
だが、君にはやらねばならんことがある。
その俊足は貴重だ。
誰よりも遠くを見通すその目はかけがえのないものだ。
そして、その危険をかぎ分ける嗅覚と聞き逃さない聴覚は勇者にこそ必要なのだ。
君の力は君が思う以上に君だけのものにしてはいけない。
さぁ、行け。行って世界を救う勇者の役に立てっ!!」
ウェストン侯爵は泣きじゃくるパンの頭を撫でながらそう言うと、俺達にクルリと背中を向けてから兵士たちに言った。
「馬車はまだかっ!!
ここで万が一にも勇者を避難させることが出来なければ、今生に於いてこれ以上の恥があろうかっ!!」
ウェストン侯爵の喝が効いたのか、馬車は程なく俺達の下へと届いた。
すぐにジョーンズ大佐の部下たちが馬車から飛び降りると俺達に挨拶する暇もなくウェストン侯爵の下へと駆け、そしてウェストン侯爵の指示を貰っていた。
誰もが別離よりも戦う事に集中していたのだ。
そして、ジョーンズ大佐もまた、哀しい別れと戦っていた。
シンディー先生としばらく何か言葉を掛け合ってから、互いに泣きながら熱い抱擁をし口づけを交わした。
その時、二人が何を言ったのか。それは2人しか聞いてはいけないことだし、二人しか知ってはいけないことだ。
この一瞬は2人だけのものだからだ。
だが、その時間は無慈悲に終わる。
先に覚悟を決めたのはシンディー先生の方だった。ジョーンズ大佐を両手で押し戻すと、涙に肩を震わせながらも背を向けて「行ってください。」と言った。
ジョーンズ大佐にはまだ未練があった。
「死ぬのなら、せめて共にっ・・・・・!!」
そのささやかすぎる願いは、ついに叶えられなかった。
ジョーンズ大佐が手綱を握る馬車はシンディー先生を。オースティンを残して動き始める。
その馬車を動かしているのは誰あらん、個々に最も残りたい者のはずのジョーンズ大佐だった。そんな大佐の無念を知って泣いているかのようにガラガラと車輪は乾いた音を立てて鳴り、馬の蹄の音がパカラッ、パカラッと無常に響いた。
遠ざかる景色に別れを告げるように動き始めた。
そして、出口門を通り過ぎるとき、城壁の上で見送るウェストン侯爵が去り行く俺達に叫んだ。
「剣一っ! ウィリアムっ!! 我らは簡単には死なんっ!
必ず強くなって戻って来いっ!! それまで我らはこの城壁を守り、猫の子一匹通しはせんぞっ!!
パンっ!! 君がここを通り抜ける名誉ある最後の一人だぞっ!」
その言葉を皮切りに城壁に登った兵士たちが一堂に叫んだ。
「うおおおおお~~~~っ!!」
その声は地響きのように俺達の肌をビリビリ振動させる。
「戻ってきますっ!! 必ず、すぐにっ!!
だから、だから・・・・・誰も死なないで~~っ!!」
必死の思いで彼らに応えるように俺も叫んだ。
「剣一っ!! 異世界の呪法であるはずの蟲毒の術を魔王がどのルートで知ったのか突き止めろっ!
他にどんな隠し玉を持っているのかわからんが、そのルートさえ分かれば、対策の立てようが必ずあるっ!!
頼んだぞ~~~っ!!」
ウェストン侯爵の最後の叫びは俺に対する頼み事だった。それが未来にへ繋がる願いだったので、俺達はまだ侯爵が生き残る覇気を持っていることを信じることが出来た。
彼らは決して死ぬつもりで残るんじゃない。死ぬ覚悟を秘めたまま、明日への希望をもって残るんだ。
・・・・・・馬車に乗った全員がそう思わずには、やっていられなかったんだ。
途中、別の砦から複数の部隊とすれ違った。早馬の知らせを聞いた近隣の拠点からの応援だろう。
俺達がすれ違っただけでも百は下らない数だったが、あの敵の数では焼け石に水だ。
彼らは知っているのだろうか? この先が地獄だという事を。
過労で意識を失っている美野里は幸せだ。
こんな陰鬱な気分を知らずに済むのだから・・・・・。
すれ違って消えていく応援部隊を馬車の後部から見送りながらパンが悲痛な声を上げて泣く。
「うなぁああああ~~~ん。
あおぉおおお~~~ん。」
滂沱の涙を流し、切ない声を上げながらパンは泣く。
見送る兵士に向けてのものなのか、彼らの進む方向を見て前線基地の仲間を思い出してのものなのか・・・・それは誰にもわからなかったが、その切なすぎる泣き声は俺達の胸を酷く締め付けた。
「もういいっ!! パン、泣くなっ!!
泣かないでくれっ!!」
パンの泣き声にこらえきれなくなったウィリアムがパンに抱き着きながら言った。
そう言うウィリアムも耐え切れずに大粒の涙を流しているというのに・・・・否、この場の誰もが、もう涙を流さずにはいられなかった。
「あぉおおお~~~ん。
なぁあああ~~~ん」
すでに自分の感情をコントロールできなくなったパンは泣き続けることしかしなかった。
「もういいっ! やめろっ!!
もう・・・・・やめてくれよ・・・・・」
ウィリアムはその場に泣き崩れた。
「わあああああ~~~~~っ!!!!!」
馬車の先頭では、いつも冷静なはずのジョーンズ大佐が空に向かって悲鳴じみた叫び声を上げている。
そして、後方では切ないパンの泣き声が俺達の心を痛めつけるように・・・・・いつまでもいつまでも響くのだった。
うなぁああああ~~~ん
あぉおおおおお~~~~~~ん・・・・・・
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