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第六十六話 陰陽師
俺は見た。将軍らしき巨大な魔物の隣でなにやら進言しているような男を。
整った顔立ちに涼し気な所作には匂い経つような妖しい色気がある。絵にかいたような美男子だが、その姿形に装いはどう見ても日本人だ。そしてその男の出達に俺は心当たりがあった。
立烏帽子、狩衣、扇、馬乗り袴に呪法に長けた存在と言えば陰陽師しかいない。
「マズいっ! こいつは陰陽師という天体魔法の専門家なんだっ!
こんな奴が敵にいたら戦線は崩壊しかねないっ!」
陰陽師は呪術的分野の天体学者だ。星の動きを見、星の動きを利用して人の運命まで変化させてしまう秘術を持っている。
そんな奴が天体の神々の力が実際に作用するこの世界に来て戦争に加担したら、とんでもないことになってしまう。たちまちのうちにこの世界の天体魔法の秘密を解読し俺が団体戦の時に使ったシャウシュカ様の加護陣形どころの騒ぎじゃない、下手したらこの世界の人類がまだ解き明かしていない天体魔法を編み出しかねない。
そんな危機感を感じて俺は思わず大声を上げて警告してしまった。
「どういうことだ? 剣一。
こいつは誰だ?」
俺の驚きぶりにただ事ではないと察したウィリアムが眉をひそめて尋ねた。
俺は首を横に振って答えた。
「名前まではわからないが、まず間違いなく俺が生まれる数百年前に生きて居た人だろう。
そして、その時代は俺のいた世界でも呪術が実在の存在と思われて信仰されていた。
この男の出達を見るにその時代にいた天体博士。天体魔法のエキスパートなんだ。
天運を読みとき、その運命を変える魔術『陰陽道』を極めた彼らは陰陽師と呼ばれ、時の権力者に重宝された。
こんな連中がこの世界に召喚されたら・・・・すぐさまこの世界の天体魔法の真理を解き明かされ戦争に利用される。」
「天体魔法のエキスパート・・・・それはマズいな。
そんな奴が戦場に出てきているのか・・・・ああ。剣一、俺も嫌な予感がする。物凄く嫌な予感だ。」
ウィリアムは俺が感じているのと同じ嫌な予感を感じて、よく目を凝らして水晶玉を見た。
「・・・・つまり、この兵士たちの死者数は、単純に魔物が進化しただけではなく、この陰陽師とか言う男がつかう天体魔法の影響が代の可能性があるわけか。」
「恐らくそうだ・・・・心配だな。
前線基地にも魔術に特化して人たちもいるし、オースティンも狩人の天体魔法を知り尽くしている。
だが・・・・果たして陰陽師に勝てるのか?」
俺はここに来て占いの神アドゥンタリ神が言った未来と過去の霊的バランスが保たれていて、俺と美野里が抜けたバランスを取るためにこの男が召喚されたという事を理解した。召喚魔法は時を超える。日本にも魔法が存在した時代に生きていたこの男ならば蟲毒どころではない、俺が知りえない魔法を知っていてもおかしくないはずだ。
得体のしれない敵に対して俺の感じている危機感はパンにも伝わるのか、パンは「うな~」と怯えた声を上げる。
だが、その警告以上のことをリリアンとヴァイオレットが指摘する。
「・・・・・うそ・・・この人、いま・・・・・私と目線があっています。」
リリアンがそう言ったかと思えば、師匠は反射的に水晶玉を叩き割った。
「見られたっ! 神の秘術を察知したというのか?
なんということだ・・・・・なんということだっ・・・・何という事だっ!!
我らはとんでもない相手を敵にしているっ!!」
師匠はそう言って頭を抱えた。
これほどの魔法の達人がこれほどの狼狽えよう。俺達は何かとんでもない事態になっていることを知るのだった。
「・・・・・倒さねばならん。
あれは私が倒さねばならん。」
師匠はそう言うと、呼吸を整えてから体を起こして訴えた。
「剣一様っ! 出立ましょう。今すぐにっ!
私は感じました。その陰陽師とやらの邪悪な気配を・・・・
私にはわかります。あれは私と並ぶ魔術師です。
それに恐らく今の様子から察するに剣一様の存在を知られました。ここに剣一様がいることを。
ここにいては、危険です。
あ奴は人間です。瘴気の無い世界にもズケズケと入り込んできて剣一様を襲う可能性があります。」
師匠はそう言うとリリアンに新たな神殿長に伝言を頼む。腕利きの魔術師と衛兵で1部隊編成し、俺達と共に神殿を出立する準備をしろというのだ。
「あんなものを放置できません。
かと言って強襲されるのをただ待っているのは愚策です。
おびき出して迎え撃つのです。」
師匠の提案にウィリアムも同意する。
「賛成です。神の秘術を看破するような奴です。
どんな魔術を使うかわかりません。
こちらの罠に引き込んで迎え撃つのが最善と心得ます。」
ウィリアムは同意したが俺はそれに疑問を呈する。
「いや。それはわかるが・・・・どうやって、あの陰陽師をおびき出すんだ?」
その質問に師匠は即答した。
「来ます。あれは必ず剣一様を狙ってきます。
顔を知られたからには、居場所を知ったからには必ず来ると思っていてください。」
それから半時を待たずして出立の準備が整うと、師匠は先ず美野里の下へと向かおうと言い出した。
「相手は化物です。剣一様を追う間に先に美野里様と出くわす可能性があります。美野里様は魔力が高いですから、偶然に出くわしたとしても襲われる可能性が高い。我が娘もそれなりの魔女でありますが、あの男が相手では話にならない。
とても危険です。今すぐにここを出立して美野里様と合流せねばっ・・・・・」
深夜遅く。師匠の命令で万が一のために神殿の人間も避難するように命令し神殿は無人となる。その命令を伝えてから俺達は出立する。宿場町に入るたびに馬を乗り換え、乗り換えして美野里の下へ急がせた。
「あやつは我々の存在を見ました。下手をすれば、こちらの準備が整う前に向こうから打って出てくるやもしれません。彼奴は人間、瘴気の無い場所にも平然と姿を見せるでしょう。
とにかく気を付けながら急ぎましょう。」
師匠は馬が乗りつぶれようがお構いなしに馬車を急がせた。その焦りようから危険性の高さを認識させられる。
パンは馬車の御者席に座って危険がないか見通し、俺とウィリアムは剣の手入れに余念がなかった。
ハカが俺にくれた剣は鬼によって破壊されてしまったので、当面は普及品の剣を持つことになるのだと思っていたが、神殿が新たに業物を準備してくれた。刀工は前の剣の者と同じらしい。刃渡りは同じだが、今度の剣は前の剣よりも身幅が広く重ねが厚い(※)。頑丈だが、その分重い。ウィリアムには「ゴリラかお前は」と、呆れられたが剛腕の俺には、この剣はなお扱いやすい。
(※刀剣の姿の名称。簡単に言えば長さ以外の特徴。身幅は刀身の横幅。重ねは厚みのこと。)
そうして美野里が修行している神殿まで8日の道を5日で駆け抜けようとした。
しかし、その道中のことだった。
深夜、休憩の食事中にパンが異変に気が付いた。
先ず先に音に気が付いた。次に立ち上がって音がした方向を向いて遠くを見つめた。
「剣一様っ! 変な鳥が近づいてくるにゃんっ!
見た目が鳥なはずなのに鳥の気配がしないのにゃん。
そもそも夜だというのにフクロウ以外の鳥が大空を駆け抜けるなんて聞いたことがないにゃん。」
「どこだっ!?」
「あそこにゃんっ!」
パンが指さした方向。山の上にかかる雲を背景に月明かりに浮かび上がる巨大な白い鳥が確かにこちらに向かってくる。
「・・・・・鳥?
いいや、違う。かなりの魔力を感じる。
正体はわかりませんが、あれは魔法で作られた存在です。」
視力を失った師匠だが、魔力を探知する能力は超一級。俺達が察知する前にその鳥が自然のものではないと気が付いていた。
「・・・・・どうやら敵の先兵のようです。
全員、戦闘準備を・・・・・・」
師匠は杖を手にして立ち上がると、杖で魔法陣を描きながら指示を出すのだった。
整った顔立ちに涼し気な所作には匂い経つような妖しい色気がある。絵にかいたような美男子だが、その姿形に装いはどう見ても日本人だ。そしてその男の出達に俺は心当たりがあった。
立烏帽子、狩衣、扇、馬乗り袴に呪法に長けた存在と言えば陰陽師しかいない。
「マズいっ! こいつは陰陽師という天体魔法の専門家なんだっ!
こんな奴が敵にいたら戦線は崩壊しかねないっ!」
陰陽師は呪術的分野の天体学者だ。星の動きを見、星の動きを利用して人の運命まで変化させてしまう秘術を持っている。
そんな奴が天体の神々の力が実際に作用するこの世界に来て戦争に加担したら、とんでもないことになってしまう。たちまちのうちにこの世界の天体魔法の秘密を解読し俺が団体戦の時に使ったシャウシュカ様の加護陣形どころの騒ぎじゃない、下手したらこの世界の人類がまだ解き明かしていない天体魔法を編み出しかねない。
そんな危機感を感じて俺は思わず大声を上げて警告してしまった。
「どういうことだ? 剣一。
こいつは誰だ?」
俺の驚きぶりにただ事ではないと察したウィリアムが眉をひそめて尋ねた。
俺は首を横に振って答えた。
「名前まではわからないが、まず間違いなく俺が生まれる数百年前に生きて居た人だろう。
そして、その時代は俺のいた世界でも呪術が実在の存在と思われて信仰されていた。
この男の出達を見るにその時代にいた天体博士。天体魔法のエキスパートなんだ。
天運を読みとき、その運命を変える魔術『陰陽道』を極めた彼らは陰陽師と呼ばれ、時の権力者に重宝された。
こんな連中がこの世界に召喚されたら・・・・すぐさまこの世界の天体魔法の真理を解き明かされ戦争に利用される。」
「天体魔法のエキスパート・・・・それはマズいな。
そんな奴が戦場に出てきているのか・・・・ああ。剣一、俺も嫌な予感がする。物凄く嫌な予感だ。」
ウィリアムは俺が感じているのと同じ嫌な予感を感じて、よく目を凝らして水晶玉を見た。
「・・・・つまり、この兵士たちの死者数は、単純に魔物が進化しただけではなく、この陰陽師とか言う男がつかう天体魔法の影響が代の可能性があるわけか。」
「恐らくそうだ・・・・心配だな。
前線基地にも魔術に特化して人たちもいるし、オースティンも狩人の天体魔法を知り尽くしている。
だが・・・・果たして陰陽師に勝てるのか?」
俺はここに来て占いの神アドゥンタリ神が言った未来と過去の霊的バランスが保たれていて、俺と美野里が抜けたバランスを取るためにこの男が召喚されたという事を理解した。召喚魔法は時を超える。日本にも魔法が存在した時代に生きていたこの男ならば蟲毒どころではない、俺が知りえない魔法を知っていてもおかしくないはずだ。
得体のしれない敵に対して俺の感じている危機感はパンにも伝わるのか、パンは「うな~」と怯えた声を上げる。
だが、その警告以上のことをリリアンとヴァイオレットが指摘する。
「・・・・・うそ・・・この人、いま・・・・・私と目線があっています。」
リリアンがそう言ったかと思えば、師匠は反射的に水晶玉を叩き割った。
「見られたっ! 神の秘術を察知したというのか?
なんということだ・・・・・なんということだっ・・・・何という事だっ!!
我らはとんでもない相手を敵にしているっ!!」
師匠はそう言って頭を抱えた。
これほどの魔法の達人がこれほどの狼狽えよう。俺達は何かとんでもない事態になっていることを知るのだった。
「・・・・・倒さねばならん。
あれは私が倒さねばならん。」
師匠はそう言うと、呼吸を整えてから体を起こして訴えた。
「剣一様っ! 出立ましょう。今すぐにっ!
私は感じました。その陰陽師とやらの邪悪な気配を・・・・
私にはわかります。あれは私と並ぶ魔術師です。
それに恐らく今の様子から察するに剣一様の存在を知られました。ここに剣一様がいることを。
ここにいては、危険です。
あ奴は人間です。瘴気の無い世界にもズケズケと入り込んできて剣一様を襲う可能性があります。」
師匠はそう言うとリリアンに新たな神殿長に伝言を頼む。腕利きの魔術師と衛兵で1部隊編成し、俺達と共に神殿を出立する準備をしろというのだ。
「あんなものを放置できません。
かと言って強襲されるのをただ待っているのは愚策です。
おびき出して迎え撃つのです。」
師匠の提案にウィリアムも同意する。
「賛成です。神の秘術を看破するような奴です。
どんな魔術を使うかわかりません。
こちらの罠に引き込んで迎え撃つのが最善と心得ます。」
ウィリアムは同意したが俺はそれに疑問を呈する。
「いや。それはわかるが・・・・どうやって、あの陰陽師をおびき出すんだ?」
その質問に師匠は即答した。
「来ます。あれは必ず剣一様を狙ってきます。
顔を知られたからには、居場所を知ったからには必ず来ると思っていてください。」
それから半時を待たずして出立の準備が整うと、師匠は先ず美野里の下へと向かおうと言い出した。
「相手は化物です。剣一様を追う間に先に美野里様と出くわす可能性があります。美野里様は魔力が高いですから、偶然に出くわしたとしても襲われる可能性が高い。我が娘もそれなりの魔女でありますが、あの男が相手では話にならない。
とても危険です。今すぐにここを出立して美野里様と合流せねばっ・・・・・」
深夜遅く。師匠の命令で万が一のために神殿の人間も避難するように命令し神殿は無人となる。その命令を伝えてから俺達は出立する。宿場町に入るたびに馬を乗り換え、乗り換えして美野里の下へ急がせた。
「あやつは我々の存在を見ました。下手をすれば、こちらの準備が整う前に向こうから打って出てくるやもしれません。彼奴は人間、瘴気の無い場所にも平然と姿を見せるでしょう。
とにかく気を付けながら急ぎましょう。」
師匠は馬が乗りつぶれようがお構いなしに馬車を急がせた。その焦りようから危険性の高さを認識させられる。
パンは馬車の御者席に座って危険がないか見通し、俺とウィリアムは剣の手入れに余念がなかった。
ハカが俺にくれた剣は鬼によって破壊されてしまったので、当面は普及品の剣を持つことになるのだと思っていたが、神殿が新たに業物を準備してくれた。刀工は前の剣の者と同じらしい。刃渡りは同じだが、今度の剣は前の剣よりも身幅が広く重ねが厚い(※)。頑丈だが、その分重い。ウィリアムには「ゴリラかお前は」と、呆れられたが剛腕の俺には、この剣はなお扱いやすい。
(※刀剣の姿の名称。簡単に言えば長さ以外の特徴。身幅は刀身の横幅。重ねは厚みのこと。)
そうして美野里が修行している神殿まで8日の道を5日で駆け抜けようとした。
しかし、その道中のことだった。
深夜、休憩の食事中にパンが異変に気が付いた。
先ず先に音に気が付いた。次に立ち上がって音がした方向を向いて遠くを見つめた。
「剣一様っ! 変な鳥が近づいてくるにゃんっ!
見た目が鳥なはずなのに鳥の気配がしないのにゃん。
そもそも夜だというのにフクロウ以外の鳥が大空を駆け抜けるなんて聞いたことがないにゃん。」
「どこだっ!?」
「あそこにゃんっ!」
パンが指さした方向。山の上にかかる雲を背景に月明かりに浮かび上がる巨大な白い鳥が確かにこちらに向かってくる。
「・・・・・鳥?
いいや、違う。かなりの魔力を感じる。
正体はわかりませんが、あれは魔法で作られた存在です。」
視力を失った師匠だが、魔力を探知する能力は超一級。俺達が察知する前にその鳥が自然のものではないと気が付いていた。
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