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第七十話 再会
前線基地へ出戻る前に俺達は美野里が修行しているイシャラ神殿にやってきた。
得体のしれぬ高崎播磨がどんな動きをするか読めないので美野里の修業状況がどうであろうと俺達が保護する必要があると判断してのことだった。
美野里が修行するその神殿は諸侯会議があった都市から北に3日の距離にあった。
俺と別れて行動することになった美野里は一旦、シリウス学問所まで戻って修行をするよりも、多国籍軍が集まっている場所に近いイシャラ神殿の方が安全だろうという判断でそこで修行していたのだ。(※第十四話にしか出てないですが、剣一と美野里が通っていた学問所の名前はシリウスです。)
俺達が神殿に到着した時、時間は深夜だった。入り口を固める門番はよく言えば真面目。悪く言えば頭の固いクソ野郎で「ここは神聖なイシャラ様を御祭する神殿。いかな理由がございましょうとも、明け方まで門を開けるわけにはまいりません」の一点張り。しばらくの間は押し問答が続いたが、仕方がないので俺とウィリアムが拳で説得して開門させた。
師匠は「乱暴なことはしてないだろうね。門番は自分の仕事に忠実なだけだから、説明すればわかってもらえるはずだ」と心配したが、俺とウィリアムは笑って答えた。
「勿論です。男同士、(拳で)語り合ってわかってもらいました。」
「・・・・・そ、そうですか? ・・・・・本当に?」
などと訝しがってはいたが、視力を失った師匠には確認の取りようがないことなのでやがて何も言わなくなった。
神殿内に入ると中には夜景をしていた兵士が驚いて近づいてきたので、事情を説明した。彼は説明を受けるとあわてて美野里たちを呼びに戻ってくれた。
(そういえば、なんだかんだで半月ぶりか・・・・)
異世界でも・・・・じゃなかった地球でも同級生になってからはこんなに離れ離れになった記憶がない。
いや、・・・・あるな。夏休み。
あれなんか一ヶ月半だろ? でもこの世界に来て、恋人になったからか好きになってしまったからか、わからないけれど会えない時間がほんの半月ほどの事なのに、こんなに寂しいなんてな。
そんなことを考えながら美野里を待っていると、アビゲイル先生と一緒に美野里が走ってやって来た。
「剣一君っ!!」
「お父様っ!!」
恋人と親子。別々の関係性だが、ともに感動の再会を果たした。
「お父様。まだお体が完全ではないでしょうに、出回って大丈夫なのですかっ!?」
アビゲイル先生は心配の涙で顔を濡らしながらそう言うと、師匠は
「おお、目を失っていいことが一つあったな。
娘の泣き顔を見ずに済んだ。」といって、笑いながら先生の頭を抱きしめてあげていた。
でも、そうか。やはり師匠はまだ万全の状態じゃないのか。
師匠が高崎播磨に放った腐食魔法は、広域魔法。本来は魔法範囲に入ったもの全てを腐食させる魔法であるが、師匠はあの場にいた味方へは呪いがかからぬように制御していた。さらに高崎播磨の体に魔法が通らぬと判断するや否や。剣だけに魔法を集中させてウィリアムを窮地から救って見せた。
信じられないほどの魔法精度。
まさに神業だった・・・・・。
そんな魔法戦を繰り広げた師匠の体は疲弊し、戦いの後はしばらく動けなくなってしまっていたのもわかる。きっと常人では計り知れないほどの集中力を発揮していたのだろう。
そう思うと俺は「やはりこの人こそ俺が求める魔法の境地」だと感心するのだった。
だが・・・・・
ドンッと、美野里が俺の腹に肘打ちをする。
「・・・・・ボクと半月ぶりにあったのに、よそ見ってどういうことなの?」
「・・ああっ! いや、ごめん。ここに来るまでに大変なことがあったから心配で・・・・」
俺が言い訳をすると、ジト目で睨みつける美野里。
「・・・・で?」と一言だけ言う。
「・・・・ん?」
要領を得ない俺が聞き返すと、両腕を広げて「・・・・んっ・・・」と恥ずかしそうに抱っこを催促する。
俺の胸がきゅうう~~~んっ!! っと、締め付けられるような音が鳴ってトキめいた気がする。
「美野里っ!!」
そう叫びながら抱きしめると、小さい美野里の体の柔らかい感触を俺の体でじかに感じられる喜びと、鼻腔をつく甘い香りに「ああ。美野里を抱きしめている」という感動を覚えずにはいられなかった。
「やん。もう、くすぐったいよぉ~~」
と、俺に匂いをかがれる美野里が可愛い声で鳴いた。
俺はもう、それだけで幸せの絶頂を味わえるのだ。
だが、ここに二人の仲を引き裂く者が現れる。
「ああ。そうだ、アビゲイル先生。
こいつ、師匠にアビゲイル先生をお嫁に下さいって言ってましたよ。」
ウィリアムが言った。
「おおい、それ。誤解っつっただろうがっ!!」
と、俺が否定するもアビゲイル先生は両手で顔を抑えながら顔を真っ赤にしている。
「ええ~~~っ・・・・わ、私ですかぁ? 剣一様。
わ、わたくし、剣一様とは少し年が離れていますしぃ、行き遅れてますしぃ・・・・・
で、でも第二夫人としてならぁ~・・・・・やだぁ~~」
そう言って腰をくねらせる先生。
いや、喜んどるがな。そして、それとは真逆に怒り心頭の美野里。
バチンっと音が鳴るほどのビンタが飛んで来た。
これは美野里は悪くない。女の子だったら誰だって怒るし、こうなる。
だが、これはまったくの誤解だ。
まったく、ウィリアムの野郎・・・・・なにわろてんねん。洒落んならんぞ、これは・・・・。
まぁ、冗談はさておき。俺は何とか説明して誤解を解くと、さらに、今すぐに前線基地に戻らねばならないことを説明した。
「ええっ!? で、でもボクはまだ、自力で治癒魔法も使えないよ?」
「そういう問題じゃないんだ。とにかく天体魔法の陰陽師を止めないことには、事態はおさまらないんだ。」
「で、でも。今戻って大丈夫なの?
君はウルティアさんの闇魔法を会得できているの? 何も問題解決してないまま戻ってもどうしようもないんじゃないの?」
美野里は相変わらず的確に物事を見ていた。確かに、心情では戻るべきであることは美野里も感じているのだろう。だが、心情に身を任せて戦場に戻っても前線を混乱させることも確かだ。だから、ここは心を鬼にしてでも修行に専念するべきなんだ。
それがわかっているから、美野里は泣きそうな顔で。それでも冷静な判断した。
しかし、それは情報不足によるものが原因だ。
「大丈夫だ。俺は闇魔法を会得した。
そして、そのおかげで多くのことも上達した。今なら、どんな状況でも活躍して見せるし、誰にも負けない。」
言われて美野里は「ええっ!? たった数日で闇魔法を会得したのっ!?」と言って驚き、自分の状況との違いに肩身が狭そうに「・・・・・君はやっぱり、凄いね。」と寂しそうに笑った。
それから肩を落としながらアビゲイル先生に「部屋に戻って出立の支度をしましょう」と告げた。
その背中が寂しそうで、弱弱しい。俺は心配になって美野里を励まそうと思ったけれど、いい言葉が思いつかない。そうして悩んでいるうちにも美野里の弱弱しい背中が遠ざかる。
それはダメだ。俺は美野里を守ると決めた。その俺が美野里の重りになるなんて嫌だ!
そう思った俺が導き出した答えは一つだけだった。
「・・・・・ごほうびっ!!」
何も考えずに声が出た。その声を聞いて美野里はキョトンとした顔で「え?」と、振り返る。
その時の自然な可愛い表情が俺の胸をときめかせ、俺は答えを導き出す。
「美野里っ! 俺、凄いぞっ! この短期間でちゃんと闇魔法を会得したっ!
だからさ、ご褒美、考えておいてくれよっ!!
思いっきり、エッチな奴をっ!!」
俺がそう叫ぶと、美野里は「・・・・バカだな。君は・・・・」と言いながらクスクス笑うのだった。
得体のしれぬ高崎播磨がどんな動きをするか読めないので美野里の修業状況がどうであろうと俺達が保護する必要があると判断してのことだった。
美野里が修行するその神殿は諸侯会議があった都市から北に3日の距離にあった。
俺と別れて行動することになった美野里は一旦、シリウス学問所まで戻って修行をするよりも、多国籍軍が集まっている場所に近いイシャラ神殿の方が安全だろうという判断でそこで修行していたのだ。(※第十四話にしか出てないですが、剣一と美野里が通っていた学問所の名前はシリウスです。)
俺達が神殿に到着した時、時間は深夜だった。入り口を固める門番はよく言えば真面目。悪く言えば頭の固いクソ野郎で「ここは神聖なイシャラ様を御祭する神殿。いかな理由がございましょうとも、明け方まで門を開けるわけにはまいりません」の一点張り。しばらくの間は押し問答が続いたが、仕方がないので俺とウィリアムが拳で説得して開門させた。
師匠は「乱暴なことはしてないだろうね。門番は自分の仕事に忠実なだけだから、説明すればわかってもらえるはずだ」と心配したが、俺とウィリアムは笑って答えた。
「勿論です。男同士、(拳で)語り合ってわかってもらいました。」
「・・・・・そ、そうですか? ・・・・・本当に?」
などと訝しがってはいたが、視力を失った師匠には確認の取りようがないことなのでやがて何も言わなくなった。
神殿内に入ると中には夜景をしていた兵士が驚いて近づいてきたので、事情を説明した。彼は説明を受けるとあわてて美野里たちを呼びに戻ってくれた。
(そういえば、なんだかんだで半月ぶりか・・・・)
異世界でも・・・・じゃなかった地球でも同級生になってからはこんなに離れ離れになった記憶がない。
いや、・・・・あるな。夏休み。
あれなんか一ヶ月半だろ? でもこの世界に来て、恋人になったからか好きになってしまったからか、わからないけれど会えない時間がほんの半月ほどの事なのに、こんなに寂しいなんてな。
そんなことを考えながら美野里を待っていると、アビゲイル先生と一緒に美野里が走ってやって来た。
「剣一君っ!!」
「お父様っ!!」
恋人と親子。別々の関係性だが、ともに感動の再会を果たした。
「お父様。まだお体が完全ではないでしょうに、出回って大丈夫なのですかっ!?」
アビゲイル先生は心配の涙で顔を濡らしながらそう言うと、師匠は
「おお、目を失っていいことが一つあったな。
娘の泣き顔を見ずに済んだ。」といって、笑いながら先生の頭を抱きしめてあげていた。
でも、そうか。やはり師匠はまだ万全の状態じゃないのか。
師匠が高崎播磨に放った腐食魔法は、広域魔法。本来は魔法範囲に入ったもの全てを腐食させる魔法であるが、師匠はあの場にいた味方へは呪いがかからぬように制御していた。さらに高崎播磨の体に魔法が通らぬと判断するや否や。剣だけに魔法を集中させてウィリアムを窮地から救って見せた。
信じられないほどの魔法精度。
まさに神業だった・・・・・。
そんな魔法戦を繰り広げた師匠の体は疲弊し、戦いの後はしばらく動けなくなってしまっていたのもわかる。きっと常人では計り知れないほどの集中力を発揮していたのだろう。
そう思うと俺は「やはりこの人こそ俺が求める魔法の境地」だと感心するのだった。
だが・・・・・
ドンッと、美野里が俺の腹に肘打ちをする。
「・・・・・ボクと半月ぶりにあったのに、よそ見ってどういうことなの?」
「・・ああっ! いや、ごめん。ここに来るまでに大変なことがあったから心配で・・・・」
俺が言い訳をすると、ジト目で睨みつける美野里。
「・・・・で?」と一言だけ言う。
「・・・・ん?」
要領を得ない俺が聞き返すと、両腕を広げて「・・・・んっ・・・」と恥ずかしそうに抱っこを催促する。
俺の胸がきゅうう~~~んっ!! っと、締め付けられるような音が鳴ってトキめいた気がする。
「美野里っ!!」
そう叫びながら抱きしめると、小さい美野里の体の柔らかい感触を俺の体でじかに感じられる喜びと、鼻腔をつく甘い香りに「ああ。美野里を抱きしめている」という感動を覚えずにはいられなかった。
「やん。もう、くすぐったいよぉ~~」
と、俺に匂いをかがれる美野里が可愛い声で鳴いた。
俺はもう、それだけで幸せの絶頂を味わえるのだ。
だが、ここに二人の仲を引き裂く者が現れる。
「ああ。そうだ、アビゲイル先生。
こいつ、師匠にアビゲイル先生をお嫁に下さいって言ってましたよ。」
ウィリアムが言った。
「おおい、それ。誤解っつっただろうがっ!!」
と、俺が否定するもアビゲイル先生は両手で顔を抑えながら顔を真っ赤にしている。
「ええ~~~っ・・・・わ、私ですかぁ? 剣一様。
わ、わたくし、剣一様とは少し年が離れていますしぃ、行き遅れてますしぃ・・・・・
で、でも第二夫人としてならぁ~・・・・・やだぁ~~」
そう言って腰をくねらせる先生。
いや、喜んどるがな。そして、それとは真逆に怒り心頭の美野里。
バチンっと音が鳴るほどのビンタが飛んで来た。
これは美野里は悪くない。女の子だったら誰だって怒るし、こうなる。
だが、これはまったくの誤解だ。
まったく、ウィリアムの野郎・・・・・なにわろてんねん。洒落んならんぞ、これは・・・・。
まぁ、冗談はさておき。俺は何とか説明して誤解を解くと、さらに、今すぐに前線基地に戻らねばならないことを説明した。
「ええっ!? で、でもボクはまだ、自力で治癒魔法も使えないよ?」
「そういう問題じゃないんだ。とにかく天体魔法の陰陽師を止めないことには、事態はおさまらないんだ。」
「で、でも。今戻って大丈夫なの?
君はウルティアさんの闇魔法を会得できているの? 何も問題解決してないまま戻ってもどうしようもないんじゃないの?」
美野里は相変わらず的確に物事を見ていた。確かに、心情では戻るべきであることは美野里も感じているのだろう。だが、心情に身を任せて戦場に戻っても前線を混乱させることも確かだ。だから、ここは心を鬼にしてでも修行に専念するべきなんだ。
それがわかっているから、美野里は泣きそうな顔で。それでも冷静な判断した。
しかし、それは情報不足によるものが原因だ。
「大丈夫だ。俺は闇魔法を会得した。
そして、そのおかげで多くのことも上達した。今なら、どんな状況でも活躍して見せるし、誰にも負けない。」
言われて美野里は「ええっ!? たった数日で闇魔法を会得したのっ!?」と言って驚き、自分の状況との違いに肩身が狭そうに「・・・・・君はやっぱり、凄いね。」と寂しそうに笑った。
それから肩を落としながらアビゲイル先生に「部屋に戻って出立の支度をしましょう」と告げた。
その背中が寂しそうで、弱弱しい。俺は心配になって美野里を励まそうと思ったけれど、いい言葉が思いつかない。そうして悩んでいるうちにも美野里の弱弱しい背中が遠ざかる。
それはダメだ。俺は美野里を守ると決めた。その俺が美野里の重りになるなんて嫌だ!
そう思った俺が導き出した答えは一つだけだった。
「・・・・・ごほうびっ!!」
何も考えずに声が出た。その声を聞いて美野里はキョトンとした顔で「え?」と、振り返る。
その時の自然な可愛い表情が俺の胸をときめかせ、俺は答えを導き出す。
「美野里っ! 俺、凄いぞっ! この短期間でちゃんと闇魔法を会得したっ!
だからさ、ご褒美、考えておいてくれよっ!!
思いっきり、エッチな奴をっ!!」
俺がそう叫ぶと、美野里は「・・・・バカだな。君は・・・・」と言いながらクスクス笑うのだった。
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