128人目の勇者と聖女になった男の子の話

黒神譚

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第七十一話 セーラー服と黒パンスト

 美野里たちの支度準備を待ちながら神殿からの好意による物資補給を受けていると、やがて出立の準備を済ませた美野里とアビゲイル先生がやってきた。
 戻って来た美野里の姿を見て俺は、感動の声を上げる。

「・・・・・おおっ、そ、その姿は。」

「え、えへへ。これがご褒美だぞ。
 どう? 嬉しいかい?」

 そう言って恥ずかしそうに微笑む美野里はセーラー服を着ていた。
 そのセーラー服は地球からこの世界に召喚された時に、地球にいたときに美野里が来ていた服だった。
 
 俺と美野里がこの世界に召喚された時。あの時は放課後だった。
 その時、美野里は俺との恋人関係になれることを想像して心を慰めていた。あの時の俺達は男同士だったから、結ばれることなどない。美野里はそう思っていた。
 そう思っていた美野里は放課後にこうしてセーラー服を着て、俺と恋人になれることを夢見ていたのだという。

 これはそのセーラー服だ。

「・・・・・てっきり、捨てられたものだと思っていた。」

 俺はそう思い込んでいた。過去の思い出を多く残していても、もう決して地球に戻れない俺達にとって逆に望郷の念を強くしてしまう品になりかねない。だから、みんなに捨てられてしまっているものだと思っていた。

 でもこのセーラー服は美野里にとって思い入れが半端なく深いものだ。そう簡単に捨てられたくない品物だ。
 だから、俺の知らないうちにアビゲイル先生に頼み込んで手元に置いてもらっていたらしい。

「ん。・・・・可愛いぞ、美野里。
 俺はこの4カ月ほどでまた背が伸びちまったから、もう地球の制服は着れないけどよ。なんか高校で恋人ができた気分だよ。」

 そう言いながら頭を撫でようとして、違和感に気が付いた。

「ん?」

 ・・・・・・なんか、美野里。エロくなってないか?
 俺は美野里の体が何故だかエロくなっているように思えて首をかしげる。
 なんだ? 何が変わった?
 さっきは気が付かなかったのに・・・・・。

 そう思って上から下まで舐めるように見る。
 美野里の可愛いプニ乳も育っているようには見えないし、少年の頃よりも一回り大きくなった腰回りも変わってはいない。
 上から下まで舐めまわすように見て、そして気が付いた。

「あ・・・・パンスト!」

 俺が太ももを指差してそう言うと、ちょうど視線を下げるために屈んで低くなっていた頭を美野里が掴んで「はい。よくできました」と言いながら頬っぺたにキスしてくれた。

「・・・・・お、おおお。」

 感動に震える俺の耳元で
「・・・・好きでしょ。黒パンストもちょっとエッチな感じがして。
 だから、君が喜んでくれると思ってミックスにしてみました。」と説明してくれた。

 そして、嬉しそうに俺の目の前でセーラー服姿で一回転してから

「なんだか、これで本当の恋人になれた気がするの。
 あのね。ずっと地球の時の思い出がボクの中で引っかかっていたんだ。
 でも、これであの頃のボクも報われた気がする。あのころ、思い焦がれていたそのものにボクはなった。
 だからね。最後に一度この姿になっておきたかったんだよ。」

 といった。
 その台詞の最後の一言が俺は気になった。

「最後にって・・・・どう言う意味だ?」

 美野里は俺の質問に躊躇とまどうようにしながら、でも、最後まではっきりと宣言した。

「ボク。女の子になります。」

 ・・・
 ・・・・ん? んんっ? 
 何言ってんだ、こいつ。

「女の子になりますって、お前もう女の子だろ?
 お前の可愛いプニ乳の感触を俺は一生忘れないぞ」

「プニ乳って言わないで。」

 美野里は俺の頬っぺたをつねりながら、どういうことか説明した。

「あのね・・・・・わかりやすくいうとね。
 これからは・・・・私、ちゃんと女の子らしく生きて行こうと思うの。」

 須加院美野里ははっきりと「私」と自称した。そして、その話し言葉のアクセントも以前の話し方とは明らかに違う。女の子らしい話し方だった。

 俺は以前から気になっていた。美野里は俺の前だけは以前と同じおかしな男口調だが、女子グループにいるときは女子言葉になっていることを。なんだったら、俺がいないときは男相手にも女子言葉だったことも。
 その事が気になっていた。
 無理をして女子言葉を話しているんじゃないだろうかと。

 でも、そうじゃなかった。
 そのことを美野里のこの告白で俺は理解した。
 美野里は本当は女言葉で話したかった。無理をさせていたのは俺の存在だったのだ。
 彼女の変化を俺が気にするのではないかと気にしていたんだろう。
 だから、わざわざ宣言してからの変化なんだろうな。

「・・・・美野里。」

 美野里の頬に手を当てて俺が名を呼ぶと美野里は俺を真っすぐ見つめながら

「・・・・はい。」と返事をした。

「可愛いぞ。」

「・・・・・」

 照れるようにして目を伏せた美野里の顔を俺はしばらくずっと見つめていたのだった。
 あとで知ったことなんだが、この神殿に祀られている神イシャラはこの世界の恋愛の神様だそうだ。
 一体、どんな気持ちで美野里はこの神殿で修行していたのだろうか?
 毎日、俺との恋についてお願いしていたりしていたのだろうか?
 美野里のそんな姿を想像すると、胸が熱くなるのだった。


 その後、俺達はイシャラ神殿を出て、3日かけて再び諸侯が後続部隊を配置している都市に入った。
 ちょうど、俺達が町に入った時、後続部隊の一団が出兵する所だった。そこで、俺達は諸侯に同行を進言した。
 最初、修行するために後退したはずの勇者が直ぐに戻ってきたことを知った諸侯は大反対したが、俺達が高崎播磨のことを説明すると途端に態度を変えた。

 どうも前線基地が想像以上の被害を受けていて、後続部隊が逐次投入されている状況らしく、その理由はわかっていなかった。
 まさか異世界の天体魔法使いの助力があるなんて想像もできないことだったからだ。
 
 しかし、ここで異世界の魔法使いについて知る俺が出ていって高崎播磨を止めるといいだしたこと。また、前線から離れていても高崎播磨が襲ってくる実績があるのなら、後方へ遠く下がっていても意味がないかもしれないと判断されたため、俺達の部隊は今から出発する舞台に同行して前線基地を目指すことになった。

 後続部隊、兵6000を率いるのはデリラ・カーディフ女侯爵。1回目の諸侯会議の時に俺をなだめたあの人物だった。
 年のころはアビゲイル先生と同じくらいか。病気の父に代わって前線に出て来たそうだ。
 背は175センチを超えているだろう長身だ。肌は浅黒く巨乳。一人娘という事もあって勝気な性格をしている。
 アビゲイル先生と同じくらいの年齢で独身なのだから、行き遅れという事なのだろうが、ロマンスがないわけではないらしい。
 出発前には幼馴染のジョセフ・リーズ侯爵と熱い抱擁とキスを交わし、名残り惜しそうな別れを告げていた。

「まったく、嫌な世界だ。」

 美しい別れを見ながら俺はため息をついた。きっとデリラ女侯爵は、この出兵で死ぬことを覚悟している。同じく送り出すジョセフ侯爵もデリラが死ぬことを覚悟しているのだろう。
 本当に嫌になる。
 
 が、俺達がここで勝利すれば、その悲しみも多く減らせるはずだ。
 必ずデリラを生かして返す。俺はそう心に誓うのだった。


 しかし、前線基地に戻ると前線基地にそんな甘さはないことを嫌でも思い知らされる。
 基地の外には大量の墓が並べられていた。多くの兵士が死んだという事だ。
 俺達は馬車の窓から見える前線に向かう兵士の数に驚き、また、帰って来る負傷者の多さに驚かざるをえなかったのだ。

 オースティンは、ジョーンズ大佐は、シンディー先生はまだ無事だろうか?
 俺達の胸は心配で潰れそうだった・・・・。
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