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〖1章〗
【8話】‐0/99‐
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「……ユーリさん、これから俺はもっとどうすればいい?」
父との再会を果たし、神の使いへの不信感を改めた雅文はそう問いかけた。
ゴミ袋に弁当の空容器を押し込んでいたユーリは、呼ばれて顔を上げる。
「どうすれば、と言うのは、村松美桜を救うためについてでしょうか?」
「……いや、美桜に嫌われるためだ」
決めた覚悟を見失わないよう、あえて訂正する。それを聞くとユーリは、会話の体勢を作ろうと再び食卓の席に座った。
「それではまず、雅文が嫌いだと思う相手を挙げてみて下さい」
そう言われ、雅文はすぐには浮かべられなかったが、発言者当人を見返して、なんとなく当てはめてしまう。
「私、ですか」
向けられた視線からユーリは思考を読み取り、そしてまるで気にした様子もなく続ける。
「ならなぜ、雅文は私が嫌いですか?」
「嫌い、と言うより好きになれない、だけど……まあ怪しいからだよ」
その感情は偽らず、より向き合おうとして雅文はユーリに倣い椅子に腰を下ろした。
「なぜ怪しいと思うのですか?」
「……突飛なことを言ってるから。それに、協力的な感じもしないし、話を全て信用していいのかが、分からない」
「つまり、害をなす可能性がある、と感じている訳ですね」
まあそうなのだろう。
要約された内容に頷くと、ユーリはそのまま本題へと繋げていった。
「雅文のその感情は、生物として当然のものです。知性がある以上、自分に有害な存在は基本的に受け入れ難いですからね」
「じゃあ、俺が美桜にとって害を与える存在になればいいってこと?」
話の流れから結論を先出しした雅文に、ユーリは部分的な肯定を示す。
「大まかに言えばそうです。ただ、演技に自信がないのであれば、表面的にその存在をなぞるだけでは違和感を持たれるでしょう」
「……確かに、演技は出来そうにないかな」
試した事はないが、一朝一夕で習得出来るものでもないだろう。美桜に対して塞ぎ込みやり過ごしているのも、変に言動を取り繕ってしまわないためでもあった。
だからこそ、神の使いはより扱いやすい策を与える。
「ですが心配はありません。演技が出来なければ本物になればいいのです。心の底から村松美桜に害を与えたいと思う。すなわち、あなた自身が彼女を嫌いになれば、自ら嫌われるための行動を取っているでしょう」
嫌われるためには嫌いになればいい。それが、最初の問いかけに対する答え。
その言い分は理解出来た。しかし、雅文が抱える感情は対極とも言えるものだ。
「けど、一応俺は美桜が好きで……」
自分を何とも思っていないユーリが相手だからか、気恥ずかしいその言葉もすんなりと出てくる。
対するユーリは、それの何が問題なのかと首を傾げた。
「愛を憎しみに変えるのは、むしろ容易い事では?」
人の歴史にはありふれた出来事だろうと。
人を知らない少女は、あっさりと告げたのだった。
◆◇◆◇◆
容易いという事はなかったけれど、そう難しくもなかったのかもしれない。
恋慕の裏にはいくつか感情がある。
憧憬。羨望。欲情。
更にそれらの内側を覗いていけば、次第に適当なものが見つかった。
劣等感。
惨めな己に対して輝かしい彼女。己が欠けているから、憧れ羨み欲している。
しばしば抱くその苦しみを見つけると、そこからはすぐだった。
……側に光があるから自分は暗闇にいる。
……彼女の笑顔は自分の苦労と関係なく咲いている。
……彼女は不幸でないから幸せでいられる。
僻みとしか取れないその考えを、止める事なくあえて溢れさせる。惨めだと我に返る間も与えない。
そうして憎しみの理由を一つ一つ拾い上げていれば、火種は手に入っていた。
「……雅文」
また、彼女はこちらの事情も知らないで声をかけてくる。
その行為がどれだけ自分を苦しめるか。どれだけ自分を追い詰めるか。
苛立ちを明確に感じ、その火が消えてしまわないよう大きくする。
……けどもう、消える心配はなさそうだ。
「………」
「え、あっ、雅文っ」
顔を上げて見せると、久しぶりにぶつかった視線は驚きを表す。それからすぐに彼女は心配の眼差しを向けてきて。
その瞬間、殺しきれなかった恋心が顔を出してしまう。自分の行いを悔いそうになって、でもそれを否定する事はせずに奥へと押しやった。
いつか、全てが終わった時に向き合うから。
そう誓い、決別し。
改めて憎しみの火を燃やした。
「……無視してるんだから、話しかけるなよ」
それが始まりで、今までを終わらせる言葉。
以前なら出来なかった棘を生やした口調も、しばらく話し相手が怪しい神の使いだけだったから自然と身についていた。態度もどこか気だるげで、それはきっとここ最近のストレスによってまとわりついた疲れのせいだろう。
ずっと閉ざしていた視界は途端に得た光で眉をしかめて。それをそのまま、彼女へと睨みつけた。
そして、胸の内に燻る想いをゆっくり吐露していく。
「ずっと、ウンザリだったんだ。お前と一緒にいるの」
これは、本音だ。
「お前のせいで俺は、惨めに映ってた」
これも、本音だ。
「幸せなお前には、俺の気持ちなんて何も分かってなかったんだろっ」
嘘なんて、ついていない。
発した言葉を一つ一つ確かめて、嫌悪を仕立て上げる。
でもそれにはなぜか、鋭い痛みが伴っていた。
「お前がいなければ俺は……っ!」
痛みを無視して続けて。
不意に、歪んでいく彼女の表情に気づき、何かを訂正したくなった。
……何かってなんだ。
本当の事しか言っていないのに。
この行いは正しいはずなのに。
教室の中。周囲からの注目を集めている事などもう眼中にない。自分の内側と、目の前の好きで嫌いな相手しか見えていなかった。
言葉を止めた幼馴染に、美桜がおもむろに口を開く。
「雅文、そんなこと思ってたんだ……」
「………思ってたよ」
突き放しながらも視線を逸らしてしまっていて。対する美桜は、まっすぐに見つめていた。
そして、一歩近づいてくる。
雅文は思わず席を立ち、触れられたくないと距離を取った。
「逃げないでよ」
「近づく、なよ」
美桜が歩み寄った分だけ雅文は後ろへ下がる。
彼の後方は行き止まり。あるのは壁と窓ガラスだけ。
その窓はとある女子生徒が換気と称して全て解放していた。窓枠の下部は人の腰よりも高い位置にあり、それを超えれば7、8m程下に中庭が見える。
雅文の踵が壁に着く。横には誰も座っていない席があって、中途半端に逃げ道を塞いでいる。
また一歩、美桜が近づいた。
雅文はギリギリまで離れようとして、窓枠に腰かけるような体勢になった。けれど当然、それ以上は下がれない。
更に美桜が一歩迫った時、雅文はとっさに右手で自分の首を絞めていた。
「何してるのっ?」
驚きで美桜の声が揺れる。
自傷行為。無意識に選んだのは、彼女が最も嫌がるだろう行為だった。
なぜそうしたのか、理由なんてどうでも良くて。ただ彼女を困らせる方法を求めていたらそうしていた。
力加減などは捨て、深く爪が刺さり血が滲む。
「そんなのすぐやめてっ!」
ハッタリや冗談ではないと知ると、美桜は顔色を変えてその愚かな行為をやめさせようとした。
手が伸び、迫る指から雅文は逃げようとして。
「あ……」
支えを失い、体が後ろへと傾いた。それは止まる事なく浮遊感を連れて。
一瞬、右足を掴まれるもそれはあっさり抜けていく。
反転した視界の先で、窓枠から身を乗り出す美桜の姿が映っていた。何かを叫んでいるが聞き取れない。
……これで、いいんだよな?
使命を成し、見えない相手へと疑問を浮かべた途端、異常な恐怖が襲ってくる。
……本当に、これは正しいのか?
自分は今、死に向かっている。このまま頭から地面に落ちればまず助からないだろう。
でも、99個の命が与えられているのだ。そのストックが尽きるまでなら、息を吹き返せると言っていた。
……けどその原理って一体なんだ? そもそもそんな荒唐無稽な事なんで信じた?
……いや信じたわけじゃない。従わざるを得なかっただけで。
……でもこれで、本当に死んでしまったら。
理屈で説得しきれない不安に包まれて。
混乱する感情を整理する前に、
————————
それは、機能を終える。
砕け潰れる音を耳にする事無く、加納雅文の意識は途切れた。
父との再会を果たし、神の使いへの不信感を改めた雅文はそう問いかけた。
ゴミ袋に弁当の空容器を押し込んでいたユーリは、呼ばれて顔を上げる。
「どうすれば、と言うのは、村松美桜を救うためについてでしょうか?」
「……いや、美桜に嫌われるためだ」
決めた覚悟を見失わないよう、あえて訂正する。それを聞くとユーリは、会話の体勢を作ろうと再び食卓の席に座った。
「それではまず、雅文が嫌いだと思う相手を挙げてみて下さい」
そう言われ、雅文はすぐには浮かべられなかったが、発言者当人を見返して、なんとなく当てはめてしまう。
「私、ですか」
向けられた視線からユーリは思考を読み取り、そしてまるで気にした様子もなく続ける。
「ならなぜ、雅文は私が嫌いですか?」
「嫌い、と言うより好きになれない、だけど……まあ怪しいからだよ」
その感情は偽らず、より向き合おうとして雅文はユーリに倣い椅子に腰を下ろした。
「なぜ怪しいと思うのですか?」
「……突飛なことを言ってるから。それに、協力的な感じもしないし、話を全て信用していいのかが、分からない」
「つまり、害をなす可能性がある、と感じている訳ですね」
まあそうなのだろう。
要約された内容に頷くと、ユーリはそのまま本題へと繋げていった。
「雅文のその感情は、生物として当然のものです。知性がある以上、自分に有害な存在は基本的に受け入れ難いですからね」
「じゃあ、俺が美桜にとって害を与える存在になればいいってこと?」
話の流れから結論を先出しした雅文に、ユーリは部分的な肯定を示す。
「大まかに言えばそうです。ただ、演技に自信がないのであれば、表面的にその存在をなぞるだけでは違和感を持たれるでしょう」
「……確かに、演技は出来そうにないかな」
試した事はないが、一朝一夕で習得出来るものでもないだろう。美桜に対して塞ぎ込みやり過ごしているのも、変に言動を取り繕ってしまわないためでもあった。
だからこそ、神の使いはより扱いやすい策を与える。
「ですが心配はありません。演技が出来なければ本物になればいいのです。心の底から村松美桜に害を与えたいと思う。すなわち、あなた自身が彼女を嫌いになれば、自ら嫌われるための行動を取っているでしょう」
嫌われるためには嫌いになればいい。それが、最初の問いかけに対する答え。
その言い分は理解出来た。しかし、雅文が抱える感情は対極とも言えるものだ。
「けど、一応俺は美桜が好きで……」
自分を何とも思っていないユーリが相手だからか、気恥ずかしいその言葉もすんなりと出てくる。
対するユーリは、それの何が問題なのかと首を傾げた。
「愛を憎しみに変えるのは、むしろ容易い事では?」
人の歴史にはありふれた出来事だろうと。
人を知らない少女は、あっさりと告げたのだった。
◆◇◆◇◆
容易いという事はなかったけれど、そう難しくもなかったのかもしれない。
恋慕の裏にはいくつか感情がある。
憧憬。羨望。欲情。
更にそれらの内側を覗いていけば、次第に適当なものが見つかった。
劣等感。
惨めな己に対して輝かしい彼女。己が欠けているから、憧れ羨み欲している。
しばしば抱くその苦しみを見つけると、そこからはすぐだった。
……側に光があるから自分は暗闇にいる。
……彼女の笑顔は自分の苦労と関係なく咲いている。
……彼女は不幸でないから幸せでいられる。
僻みとしか取れないその考えを、止める事なくあえて溢れさせる。惨めだと我に返る間も与えない。
そうして憎しみの理由を一つ一つ拾い上げていれば、火種は手に入っていた。
「……雅文」
また、彼女はこちらの事情も知らないで声をかけてくる。
その行為がどれだけ自分を苦しめるか。どれだけ自分を追い詰めるか。
苛立ちを明確に感じ、その火が消えてしまわないよう大きくする。
……けどもう、消える心配はなさそうだ。
「………」
「え、あっ、雅文っ」
顔を上げて見せると、久しぶりにぶつかった視線は驚きを表す。それからすぐに彼女は心配の眼差しを向けてきて。
その瞬間、殺しきれなかった恋心が顔を出してしまう。自分の行いを悔いそうになって、でもそれを否定する事はせずに奥へと押しやった。
いつか、全てが終わった時に向き合うから。
そう誓い、決別し。
改めて憎しみの火を燃やした。
「……無視してるんだから、話しかけるなよ」
それが始まりで、今までを終わらせる言葉。
以前なら出来なかった棘を生やした口調も、しばらく話し相手が怪しい神の使いだけだったから自然と身についていた。態度もどこか気だるげで、それはきっとここ最近のストレスによってまとわりついた疲れのせいだろう。
ずっと閉ざしていた視界は途端に得た光で眉をしかめて。それをそのまま、彼女へと睨みつけた。
そして、胸の内に燻る想いをゆっくり吐露していく。
「ずっと、ウンザリだったんだ。お前と一緒にいるの」
これは、本音だ。
「お前のせいで俺は、惨めに映ってた」
これも、本音だ。
「幸せなお前には、俺の気持ちなんて何も分かってなかったんだろっ」
嘘なんて、ついていない。
発した言葉を一つ一つ確かめて、嫌悪を仕立て上げる。
でもそれにはなぜか、鋭い痛みが伴っていた。
「お前がいなければ俺は……っ!」
痛みを無視して続けて。
不意に、歪んでいく彼女の表情に気づき、何かを訂正したくなった。
……何かってなんだ。
本当の事しか言っていないのに。
この行いは正しいはずなのに。
教室の中。周囲からの注目を集めている事などもう眼中にない。自分の内側と、目の前の好きで嫌いな相手しか見えていなかった。
言葉を止めた幼馴染に、美桜がおもむろに口を開く。
「雅文、そんなこと思ってたんだ……」
「………思ってたよ」
突き放しながらも視線を逸らしてしまっていて。対する美桜は、まっすぐに見つめていた。
そして、一歩近づいてくる。
雅文は思わず席を立ち、触れられたくないと距離を取った。
「逃げないでよ」
「近づく、なよ」
美桜が歩み寄った分だけ雅文は後ろへ下がる。
彼の後方は行き止まり。あるのは壁と窓ガラスだけ。
その窓はとある女子生徒が換気と称して全て解放していた。窓枠の下部は人の腰よりも高い位置にあり、それを超えれば7、8m程下に中庭が見える。
雅文の踵が壁に着く。横には誰も座っていない席があって、中途半端に逃げ道を塞いでいる。
また一歩、美桜が近づいた。
雅文はギリギリまで離れようとして、窓枠に腰かけるような体勢になった。けれど当然、それ以上は下がれない。
更に美桜が一歩迫った時、雅文はとっさに右手で自分の首を絞めていた。
「何してるのっ?」
驚きで美桜の声が揺れる。
自傷行為。無意識に選んだのは、彼女が最も嫌がるだろう行為だった。
なぜそうしたのか、理由なんてどうでも良くて。ただ彼女を困らせる方法を求めていたらそうしていた。
力加減などは捨て、深く爪が刺さり血が滲む。
「そんなのすぐやめてっ!」
ハッタリや冗談ではないと知ると、美桜は顔色を変えてその愚かな行為をやめさせようとした。
手が伸び、迫る指から雅文は逃げようとして。
「あ……」
支えを失い、体が後ろへと傾いた。それは止まる事なく浮遊感を連れて。
一瞬、右足を掴まれるもそれはあっさり抜けていく。
反転した視界の先で、窓枠から身を乗り出す美桜の姿が映っていた。何かを叫んでいるが聞き取れない。
……これで、いいんだよな?
使命を成し、見えない相手へと疑問を浮かべた途端、異常な恐怖が襲ってくる。
……本当に、これは正しいのか?
自分は今、死に向かっている。このまま頭から地面に落ちればまず助からないだろう。
でも、99個の命が与えられているのだ。そのストックが尽きるまでなら、息を吹き返せると言っていた。
……けどその原理って一体なんだ? そもそもそんな荒唐無稽な事なんで信じた?
……いや信じたわけじゃない。従わざるを得なかっただけで。
……でもこれで、本当に死んでしまったら。
理屈で説得しきれない不安に包まれて。
混乱する感情を整理する前に、
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これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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