15 / 22
▼15「冬休み」
しおりを挟む
冬休みになった。約2週間の長期休暇だ。
当然のことだけれど、その間、学校に行くことはない。
あの教室で、彼女の声を聞くことも。
◇
休日だと言うのになんとなく心が晴れなかった。
気が付けばここじゃないどこかを眺めていて、時間が過ぎていることに驚く。
そんな自分に気づいてからは、受験勉強に明け暮れた。
疎かにしていた分を取り戻すためではあったけれど、頭の中を知識で満たして何も考えないようにしたかった意味もあった。
部屋にこもってペンを握った。母に何度か食事に呼ばれても返事をしないことがあった。両親がいない日には何も食べない時もあった。
それだけ勉強に熱中していた。というわけでもなかったと思う。
ただただ、日々が早く過ぎることを願っていただけだ。
勉強は、単に時間を無駄にしてしまわないようにやっていただけ。
◇
年末も僕はほとんど部屋から出なかった。
例年なら年越し番組を見たり、ダラダラとお雑煮やらそばを食べたりして、年越しの瞬間を待ち望んでいた。
でも今年は眠くなったら寝た。日と月と年を跨ぐ前に。
初夢は、安立さんが出て来たと思う。ちゃんとは覚えていなかった。
◇
年始以降も変わらない。
年が明けた喜びよりも、月が替わった焦りの方が強かった。
受験が迫っているからじゃないのは分かっている。
いつも僕がカレンダーで見つめる日付は別の日だった。
両親には心配された。けれど受験を言い訳にすればすぐに納得した。
僕は、妄想だと割り切っていても、あの声に縋っているようだった。
でも、楽しかったのは事実だ。
それぐらいに彼女と会話をする日々はかけがえのないものだった。
それでもあれは妄想。
そう割り切った。会話以上を求めないように自分に言い聞かせた。
でも、これまでの会話の中で、もしかしたら妄想ではないのかもしれないという考えも持ち上がった。
ただ、どちらにしたって変わらない。
どうしたって、彼女には会えない。
どうにかする手段は、考えればあるのだろうか。
分からない。考えようともしていない。
そういう性格は、あの夏休みからも変わっていないのだろう。
言い訳ばかりの面倒臭がり。
自嘲しながらも、状況が異常なのだからと自分を守っている。
それに感じる負い目も少ない。
諦めの方が圧倒的に大きかったから。
だから、お互いの気持ちを確かめ合うことはしなかった。
あの教室の中で、僕たちの頭の中は筒抜けだ。
彼女の声を聞く度、浮かべる想いがあった。
僕が話す度、浮かんでくる想いがあった。
でもそれは聞こえないふりをしている。
いつまでそうするんだろうか。
と言っても、終わりはもう分かっている。
僕はまたカレンダーを見つめる。
2か月先の卒業式の日。
手を止めていることに気がついて、急いでノートへ向かう。
冬休みが明けたら、どんな話をしよう。
あと、どれだけの話が出来るのだろう。
気を抜けば、そればかり考えていた。
当然のことだけれど、その間、学校に行くことはない。
あの教室で、彼女の声を聞くことも。
◇
休日だと言うのになんとなく心が晴れなかった。
気が付けばここじゃないどこかを眺めていて、時間が過ぎていることに驚く。
そんな自分に気づいてからは、受験勉強に明け暮れた。
疎かにしていた分を取り戻すためではあったけれど、頭の中を知識で満たして何も考えないようにしたかった意味もあった。
部屋にこもってペンを握った。母に何度か食事に呼ばれても返事をしないことがあった。両親がいない日には何も食べない時もあった。
それだけ勉強に熱中していた。というわけでもなかったと思う。
ただただ、日々が早く過ぎることを願っていただけだ。
勉強は、単に時間を無駄にしてしまわないようにやっていただけ。
◇
年末も僕はほとんど部屋から出なかった。
例年なら年越し番組を見たり、ダラダラとお雑煮やらそばを食べたりして、年越しの瞬間を待ち望んでいた。
でも今年は眠くなったら寝た。日と月と年を跨ぐ前に。
初夢は、安立さんが出て来たと思う。ちゃんとは覚えていなかった。
◇
年始以降も変わらない。
年が明けた喜びよりも、月が替わった焦りの方が強かった。
受験が迫っているからじゃないのは分かっている。
いつも僕がカレンダーで見つめる日付は別の日だった。
両親には心配された。けれど受験を言い訳にすればすぐに納得した。
僕は、妄想だと割り切っていても、あの声に縋っているようだった。
でも、楽しかったのは事実だ。
それぐらいに彼女と会話をする日々はかけがえのないものだった。
それでもあれは妄想。
そう割り切った。会話以上を求めないように自分に言い聞かせた。
でも、これまでの会話の中で、もしかしたら妄想ではないのかもしれないという考えも持ち上がった。
ただ、どちらにしたって変わらない。
どうしたって、彼女には会えない。
どうにかする手段は、考えればあるのだろうか。
分からない。考えようともしていない。
そういう性格は、あの夏休みからも変わっていないのだろう。
言い訳ばかりの面倒臭がり。
自嘲しながらも、状況が異常なのだからと自分を守っている。
それに感じる負い目も少ない。
諦めの方が圧倒的に大きかったから。
だから、お互いの気持ちを確かめ合うことはしなかった。
あの教室の中で、僕たちの頭の中は筒抜けだ。
彼女の声を聞く度、浮かべる想いがあった。
僕が話す度、浮かんでくる想いがあった。
でもそれは聞こえないふりをしている。
いつまでそうするんだろうか。
と言っても、終わりはもう分かっている。
僕はまたカレンダーを見つめる。
2か月先の卒業式の日。
手を止めていることに気がついて、急いでノートへ向かう。
冬休みが明けたら、どんな話をしよう。
あと、どれだけの話が出来るのだろう。
気を抜けば、そればかり考えていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる