同級生

真田直樹

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クラスにじわじわ噂が広がる回

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――静かに、でも確実に――

それは、月曜日の朝から始まった。

教室に入った瞬間、里奈は空気の違いに気づいた。

視線が、妙に多い。

ひそひそ声。
誰かがこちらを見て、すぐ顔を逸らす。

(……気のせい?)

自分の席に座ると、後ろの席の女子たちが小声で話しているのが聞こえた。

「昨日さ、藤川と新田、一緒に帰ってたよ」

「え、やっぱ?」

里奈の背中が一瞬、強張る。

一方、優斗も同じだった。

窓際の席でノートを開きながら、耳に入ってくる名前。

「藤川って最近優しくない?」

「新田と話すとき、声違うよね」

シャーペンを持つ手が止まる。

(もう……バレ始めてる……)

昼休み。

里奈が廊下を歩いていると、クラスメイトの美咲が近づいてきた。

「ねえ里奈」

「なに?」

美咲はニヤニヤしながら顔を寄せる。

「藤川と最近仲良くない?」

心臓が跳ねる。

「普通だよ」

必死に平静を装う。

「ふーん?」

美咲は意味深に笑う。

「目、合うたびに照れてるの、クラスの半分は気づいてると思う」

里奈は思わず顔を覆った。

「そんなに分かりやすい?」

「分かりやすすぎ」

即答。

放課後。

昇降口で優斗と合流すると、二人ともどこか落ち着かない。

「……噂、来てる?」

里奈が小声で聞く。

優斗は苦笑する。

「来てる。めちゃくちゃ」

「だよね」

並んで歩きながら、二人はため息をついた。

秘密にしていたつもりだった。

でも、

目が合う回数

帰るタイミング

声のトーン

距離感

全部、周りはちゃんと見ている。

駅前の信号待ちで、里奈がぽつり。

「ねえ……もう隠せないかも」

優斗は少し考えてから言った。

「うん」

それから、里奈を見る。

「でも、悪い気はしない」

里奈は驚いたように優斗を見る。

「え?」

「だって」

少し照れながら。

「里奈と付き合ってるの、別に恥ずかしくない」

その言葉に、里奈の胸が温かくなる。

「……私も」

翌日。

決定打は、真奈だった。

教室でわざと大きめの声。

「里奈、藤川待ってるよ」

一瞬、教室が静かになる。

そして、

「え?」

「まじ?」

「確定じゃん」

小さなどよめき。

里奈は真奈を睨む。

真奈は無言でウインク。

(この人……)

優斗も完全に固まっていた。

その日の帰り道。

二人は並んで歩きながら、苦笑い。

「真奈、やりすぎ」

「だな……」

でも、不思議と気持ちは軽かった。

もう、半分はバレている。

隠す恋から、見られる恋へ。

里奈は優斗の袖を軽く引く。

「ね」

「なに」

「これから、堂々と手つないでいい?」

優斗は一瞬考えて、うなずいた。

「……いい」

そっと指が絡む。

通りすがりのクラスメイトが気づいて、目を丸くする。

でももう、逃げなかった。

こうして。

二人の関係は、クラスの中で“噂”から“ほぼ公認”へ変わっていった。

まだ正式な報告はしていない。

でも、

誰もがなんとなく知っている。

新田里奈と藤川優斗は、付き合っている。

静かに広がったその事実は、
二人にとって、少しだけ大人になる合図だった。
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