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終い
しおりを挟む私は彼が好きでした。
彼も私が好きでした。
それを今更ながら知ってしまった私に、生きる糧など残っておりません。
その糧は、この手で摘んでしまった彼なのですから。
気の迷いで殺した私を責めるなとは言いません。
ですが、彼だけはどうか責めないでほしい。
私を好いてくれた彼の本心が公に晒され、咎められるのは耐えられないのです。
しかし、私が自首すれば真実は明かされてしまうのでしょう。
ならば私は彼の後を追いたい。
彼はあの時のまま、皆から親しまれたあの彼でいてほしいのです。
私は貶されようとも、彼が穢されるのは許せないのです。
殺してしまった私が言うのも何ですが、それほどに彼は綺麗でした。
もうこの言伝が届いている頃には、私はこの世にいないでしょう。
真実を知る者は私しかおらず、この便箋は私のただの妄想として葬られることでしょう。
彼の遺体は誰にも見つからぬ場所へ移しましたし、私もその後を追うのですから。
ただ、もし願わくば、叶うのであれば、
向こうでも彼に会いたいものです。
(差出人不明の手記より)
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