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年上のひと
合流
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「さすがに揃いも揃ってドリンクじゃいい迷惑だよねえ」
モチヅキさんはどこか言い訳がましくメニューとにらめっこをしていた。
上四元クシナは店に入ってから「オレンジフロート」とひとこと発しただけで、ずっと黙ったままである。
国道沿いのファミリーレストランは半分くらいの入りで、さすがにこの時間帯は僕のような制服姿は見受けられない。そこにさらに女性陣――モチヅキさんのボリューミーな裾のベルボトム、上四元クシナのサイドにファスナーの付いたプリーツのミニスカート――はまったく真逆なファッションなのに、互いにとても目を引くので、制服姿の僕を含めてよくも悪くも目立ってしまっている。
上四元クシナはただでさえ刺激的な格好なのに、そのファスナーを上まで引いているので太ももが露わになり、そこから付属品なのか腿の回りに巻かれたベルトのようなものがちらりと見えて過激さに拍車をかけている。有名な泥棒一味のお色気担当要員がよく巻きつけているレッグホルスターに見えなくもない。
モチヅキさんは一学年しか違わないのに、上四元クシナの格好を若いっていいねえと感心するように見つめ、私が男だったら襲いかかってるなとつけ足すことも忘れなかった。
「だろう、一君」
いきなり振られて困惑している僕にそんな度胸ないもんねと微かに聞こえたような気がしたけれど、発したと思われる当事者は澄ました顔で横を向いていた。
「ここはヘルシーにシーフードピッツァでいこうかね」
ピッツァという語感もさることながら、ピザをヘルシーで括るモチヅキさんがなんだかおかしかった。
「なんだい、一君。何かおかしいかい」
「……い、いえ、すみません」
モチヅキさんはテーブルを片している店員さんに「シーフードピッツァ、一丁!」と威勢よく注文していた。
店に入る前、上四元クシナからお姉ちゃん呼ぶから、とひとことがあったおかげで帰りの心配はなくなってはいた。
ただ、なぜこのふたりがあの現場に居合わせたのかが不思議であった。
――いや、おそらく上四元クシナが現われた理由は一つしかない。
「帰るときに今日は休みのチギラさんが店の前でうろうろしてたから気にはなっていたのさ。しかも今日あったことを思えば、なんとなーく目的は見えてくるじゃないか。とはいっても、何かをするって確証もない。だから学友と電話しながら様子を窺っていたのさ」
そこまでいうとモチヅキさんはお冷をごくりと飲み干して、話に夢中になってちょっと出遅れたけど、と付け足した。
「いやはや、申し訳ない」
「……そ、そんな、やめて下さい」
アタマを下げるモチヅキさんを慌てて制する。彼女が謝ることでは、もちろんない。
空になったグラスを持ってサーバーに向かったモチヅキさんが不在のひととき、上四元クシナと僕の間に流れる空気は実に重かった。
黙っていてもいいはずであった。
けれど、あの日、アルバイトを紹介してくれると約束したあと、雑踏に紛れ込んだ彼女を見送ったときの喩えのようのない不思議な喪失感を思うと、何かを話した方がいいような気がした。
世間話はわざとらし過ぎるし、そもそも彼女はそういう型通りを嫌うだろう。
ここは単刀直入に、と意を決して話を切り出そうとしたそのとき、幸か不幸かモチヅキさんは戻ってきた。
「どうやら彼女も目的は似たようなものみたいだねえ」
いいながら腰を下ろしたモチヅキさんはずっと黙ったままの上四元クシナを見つめた。
「お知り合いだったんですか」
「いんや」
モチヅキさんの即答に混乱する。
「お知り合いなのは君だろう、一君。ねえ、ええっと、なんといったかな」
「上四元クシナです」
「うん、そう。申し訳ない。カミヨモト君」
「いえ」
初めて会った女子にも君づけするところはすごくモチヅキさんらしいと思った。
「えらい別嬪さんと知り合いなんだなあ、一君。彼女さんかい」
「……い、いえ、そういうワケでは」
「なんだか訳アリって感じだねえ」
モチヅキさんは来たばかりのピザに取りかかりながら、上四元クシナと僕を交互に何度も見やった。
「上四元さんは、どうしたの」
やはり彼女とは話しづらい。自然に会話をしようとしてもなかなかできない歯がゆさがいつもつきまとう。
静かにオレンジフロートを啜っていた上四元クシナはグラスを置くと、探るような目つきでモチヅキさんを見た。
「先ほど、あの男の人に対して『今日あったことを思えば、なんとなく目的は見えてくる』と仰ってましたよね」
「……うふん」
ピザを頬張ったままなのでおかしな返事になってしまっている。
「差し支えなければ、どういうことか教えて頂けませんか」
「なんだい、すべてを知った上であそこに駆けつけたんじゃないのかい」
上四元クシナが来た理由はシーナさんだろう。
「話すこと自体はやぶさかではないけど、けっきょくこれは一君の問題だからなあ」
モチヅキさんはピザに張りついたチーズと格闘しながら、話していいのかい、それとも自分で話すかい、と訊いてきた。
「お任せします」
「そうかい」
モチヅキさんは頷きながらピザを咀嚼すると、自分が知りうる限りの情報を上四元クシナに提示した。
「もちろん真相は知らない。けど、一君はそういうことはしてないって確信してるんだ」
そこまでいうと、モチヅキさんは残りのピザをやっつけ始めた。真相は当人に任せるということであろう。
僕のいうことに上四元クシナは表情も変えずに聞き入っていた。ニカイドウさんから浴びせられた淀みない劣情の箇所は躊躇われたけれど、それを察した彼女は知ってるからと頷いて見せ、そして聞き終えると開口一番、相変わらず人がよすぎると呆れたようにため息をつかれてしまった。
「そう、そうなんだよ、カミヨモト君。一君は人がよすぎるんだ。だからそこに容易くつけ入れられるんだよ」
分かってるのかい、とモチヅキさんはお冷をごくごくと飲み干すとビシッと僕を指差し、ふたたびサーバーが居並ぶカウンターへと向かった。ジーンズの裾を颯爽と靡かせて歩く後ろ姿は冗談抜きでひと仕事を終えた用心棒のようだ。
「……シーナさんから聞いたんだよね」
「分かってることいちいち聞かないでよ」
いつも通りの返しになんとなく懐かしさを覚える反面、気まずさも感じた。
「ご、ごめん」
上四元クシナは不愉快そうにオレンジフロートを啜ると、チラッと視線を流してきた。
「……な、なに?」
何かをいいたげな様子に構えたけれど、上四元クシナは顔を覆っていた冷淡さを一瞬で消し去り、こういうことを頼めた義理じゃないんだけれど、と気まずそうに話はじめた。
「シーナとティナに直接会ってさっきのこと話してくれない? あのふたり、あなたのことは信じているけれど、今回のことは相当ショックだったみたいだし、本人から真相を聞けば満足すると思う。好きでもない子のためにわざわざそんなことするのは気が進まないだろうけど」
以前、喫茶店で三人と会ったあとに、上四元クシナからあのふたりと仲よくしてあげて、自分と違っていい子たちだからと頼まれたことを思い出した。彼女は本当に友人たちを大事にしているようだ。
「……なに?」
笑みが思わずこぼれて、不審がられたようだ。
「上四元さんは本当にシーナさんたちが好きなんだなと思って」
ごまかすことはせずに素直に口にしたけれど、それがよかったのか、上四元クシナはやわらかく自然な笑みで親友だからと答えた。
「古いつき合いなの?」
すごくいいその笑顔につられて、なんとなくそんなことを聞いてしまった。
「シーナは小学校からのつき合い。瓊紅保に越してからだからいちばん長い友達。ティナは中学校から。あと学校は違うけれど、やっぱり中学校からのつき合いがあるみほっていう仲のいい友達がいる。ただ、シーナもティナも知らない子。中学校自体別だったから」
そこで区切ると、ちょっと意地悪な――僕を翻弄していたときを彷彿とさせる――笑みを浮かべて、あなたも会ったことはないけれど、知っている子よと謎かけみたいなことをいい出した。
……はて、誰だろう。
「ツルシインっていえば分かる?」
その名前に謎が氷解する。僕が休みの日にシフトに入っていて、僕のタイムカードを見て驚いていたという謎の女子高生、ツルシインさんは彼女の友人だったのか。
「……ええ、と、じゃあ、僕をここに紹介したのは友達がいるから?」
「それは偶然。本当よ。みほからあなたが働いているって聞いて、逆に驚いたくらいなんだから。彼女もあそこでアルバイトしているって知って」
人づてで聞いた通り、ツルシインさんはあちこちでアルバイトをしている人だそうで、僕があそこで働き始める直前に彼女も新たなアルバイト先として入ったばかりだったという。
「前々から、といっても初めて会って間もなくだけど、あなたのことは話していて、すごく興味持ってたみたい。そこに自分と同じところにアルバイトでやって来て、ちょうど自分が休みの日に仕事に入っているから、幻の気になる男子だって盛り上がっていたのよ」
そこまで気になるいい方をされると、どういう女子なのか見てみたくもなる。
「紹介しようか」
相変わらずこちらの思考を読むのが得意な上四元クシナに、ごまかすように慌ててクリームソーダを啜った。
「見た目と性格はちょうどシーナとティナを足して二で割った感じ」
シーナさんとティナさんを思い浮かべる。……が、ちょっと想像できない。
「そういえば、ふたりとも本名なの」
なんとなく流れに任せて「シーナ」さん、「ティナ」さんと呼んではいたけれど、どう考えてもニックネームっぽい。
「興味ある?」
ちょっと意地の悪い笑みは出会った頃によく見せていたものではあったけれど、今目の当たりにしているそれは狡猾な知計等は排した、年相応の幼さの感じられる可愛らしいものであった。
「どうせならふたりのナンバーとアドレス、教えるけど」
「……えっ、いや、そういうのってやっぱりよくないんじゃ」
本人の許可なく第三者にそういうものを教えるのはどうなのか。
「普通は、ね。でも、あなたに教えるのは別。むしろ喜ぶんだから」
そういうとナプキンを一枚取り、こちらに手のひらを突き出した。
「………え、っと」
「私、今書くもの持っていないの」
整った貌にいささかの茶目と挑発を乗せて上四元クシナはいった。
モチヅキさんはどこか言い訳がましくメニューとにらめっこをしていた。
上四元クシナは店に入ってから「オレンジフロート」とひとこと発しただけで、ずっと黙ったままである。
国道沿いのファミリーレストランは半分くらいの入りで、さすがにこの時間帯は僕のような制服姿は見受けられない。そこにさらに女性陣――モチヅキさんのボリューミーな裾のベルボトム、上四元クシナのサイドにファスナーの付いたプリーツのミニスカート――はまったく真逆なファッションなのに、互いにとても目を引くので、制服姿の僕を含めてよくも悪くも目立ってしまっている。
上四元クシナはただでさえ刺激的な格好なのに、そのファスナーを上まで引いているので太ももが露わになり、そこから付属品なのか腿の回りに巻かれたベルトのようなものがちらりと見えて過激さに拍車をかけている。有名な泥棒一味のお色気担当要員がよく巻きつけているレッグホルスターに見えなくもない。
モチヅキさんは一学年しか違わないのに、上四元クシナの格好を若いっていいねえと感心するように見つめ、私が男だったら襲いかかってるなとつけ足すことも忘れなかった。
「だろう、一君」
いきなり振られて困惑している僕にそんな度胸ないもんねと微かに聞こえたような気がしたけれど、発したと思われる当事者は澄ました顔で横を向いていた。
「ここはヘルシーにシーフードピッツァでいこうかね」
ピッツァという語感もさることながら、ピザをヘルシーで括るモチヅキさんがなんだかおかしかった。
「なんだい、一君。何かおかしいかい」
「……い、いえ、すみません」
モチヅキさんはテーブルを片している店員さんに「シーフードピッツァ、一丁!」と威勢よく注文していた。
店に入る前、上四元クシナからお姉ちゃん呼ぶから、とひとことがあったおかげで帰りの心配はなくなってはいた。
ただ、なぜこのふたりがあの現場に居合わせたのかが不思議であった。
――いや、おそらく上四元クシナが現われた理由は一つしかない。
「帰るときに今日は休みのチギラさんが店の前でうろうろしてたから気にはなっていたのさ。しかも今日あったことを思えば、なんとなーく目的は見えてくるじゃないか。とはいっても、何かをするって確証もない。だから学友と電話しながら様子を窺っていたのさ」
そこまでいうとモチヅキさんはお冷をごくりと飲み干して、話に夢中になってちょっと出遅れたけど、と付け足した。
「いやはや、申し訳ない」
「……そ、そんな、やめて下さい」
アタマを下げるモチヅキさんを慌てて制する。彼女が謝ることでは、もちろんない。
空になったグラスを持ってサーバーに向かったモチヅキさんが不在のひととき、上四元クシナと僕の間に流れる空気は実に重かった。
黙っていてもいいはずであった。
けれど、あの日、アルバイトを紹介してくれると約束したあと、雑踏に紛れ込んだ彼女を見送ったときの喩えのようのない不思議な喪失感を思うと、何かを話した方がいいような気がした。
世間話はわざとらし過ぎるし、そもそも彼女はそういう型通りを嫌うだろう。
ここは単刀直入に、と意を決して話を切り出そうとしたそのとき、幸か不幸かモチヅキさんは戻ってきた。
「どうやら彼女も目的は似たようなものみたいだねえ」
いいながら腰を下ろしたモチヅキさんはずっと黙ったままの上四元クシナを見つめた。
「お知り合いだったんですか」
「いんや」
モチヅキさんの即答に混乱する。
「お知り合いなのは君だろう、一君。ねえ、ええっと、なんといったかな」
「上四元クシナです」
「うん、そう。申し訳ない。カミヨモト君」
「いえ」
初めて会った女子にも君づけするところはすごくモチヅキさんらしいと思った。
「えらい別嬪さんと知り合いなんだなあ、一君。彼女さんかい」
「……い、いえ、そういうワケでは」
「なんだか訳アリって感じだねえ」
モチヅキさんは来たばかりのピザに取りかかりながら、上四元クシナと僕を交互に何度も見やった。
「上四元さんは、どうしたの」
やはり彼女とは話しづらい。自然に会話をしようとしてもなかなかできない歯がゆさがいつもつきまとう。
静かにオレンジフロートを啜っていた上四元クシナはグラスを置くと、探るような目つきでモチヅキさんを見た。
「先ほど、あの男の人に対して『今日あったことを思えば、なんとなく目的は見えてくる』と仰ってましたよね」
「……うふん」
ピザを頬張ったままなのでおかしな返事になってしまっている。
「差し支えなければ、どういうことか教えて頂けませんか」
「なんだい、すべてを知った上であそこに駆けつけたんじゃないのかい」
上四元クシナが来た理由はシーナさんだろう。
「話すこと自体はやぶさかではないけど、けっきょくこれは一君の問題だからなあ」
モチヅキさんはピザに張りついたチーズと格闘しながら、話していいのかい、それとも自分で話すかい、と訊いてきた。
「お任せします」
「そうかい」
モチヅキさんは頷きながらピザを咀嚼すると、自分が知りうる限りの情報を上四元クシナに提示した。
「もちろん真相は知らない。けど、一君はそういうことはしてないって確信してるんだ」
そこまでいうと、モチヅキさんは残りのピザをやっつけ始めた。真相は当人に任せるということであろう。
僕のいうことに上四元クシナは表情も変えずに聞き入っていた。ニカイドウさんから浴びせられた淀みない劣情の箇所は躊躇われたけれど、それを察した彼女は知ってるからと頷いて見せ、そして聞き終えると開口一番、相変わらず人がよすぎると呆れたようにため息をつかれてしまった。
「そう、そうなんだよ、カミヨモト君。一君は人がよすぎるんだ。だからそこに容易くつけ入れられるんだよ」
分かってるのかい、とモチヅキさんはお冷をごくごくと飲み干すとビシッと僕を指差し、ふたたびサーバーが居並ぶカウンターへと向かった。ジーンズの裾を颯爽と靡かせて歩く後ろ姿は冗談抜きでひと仕事を終えた用心棒のようだ。
「……シーナさんから聞いたんだよね」
「分かってることいちいち聞かないでよ」
いつも通りの返しになんとなく懐かしさを覚える反面、気まずさも感じた。
「ご、ごめん」
上四元クシナは不愉快そうにオレンジフロートを啜ると、チラッと視線を流してきた。
「……な、なに?」
何かをいいたげな様子に構えたけれど、上四元クシナは顔を覆っていた冷淡さを一瞬で消し去り、こういうことを頼めた義理じゃないんだけれど、と気まずそうに話はじめた。
「シーナとティナに直接会ってさっきのこと話してくれない? あのふたり、あなたのことは信じているけれど、今回のことは相当ショックだったみたいだし、本人から真相を聞けば満足すると思う。好きでもない子のためにわざわざそんなことするのは気が進まないだろうけど」
以前、喫茶店で三人と会ったあとに、上四元クシナからあのふたりと仲よくしてあげて、自分と違っていい子たちだからと頼まれたことを思い出した。彼女は本当に友人たちを大事にしているようだ。
「……なに?」
笑みが思わずこぼれて、不審がられたようだ。
「上四元さんは本当にシーナさんたちが好きなんだなと思って」
ごまかすことはせずに素直に口にしたけれど、それがよかったのか、上四元クシナはやわらかく自然な笑みで親友だからと答えた。
「古いつき合いなの?」
すごくいいその笑顔につられて、なんとなくそんなことを聞いてしまった。
「シーナは小学校からのつき合い。瓊紅保に越してからだからいちばん長い友達。ティナは中学校から。あと学校は違うけれど、やっぱり中学校からのつき合いがあるみほっていう仲のいい友達がいる。ただ、シーナもティナも知らない子。中学校自体別だったから」
そこで区切ると、ちょっと意地悪な――僕を翻弄していたときを彷彿とさせる――笑みを浮かべて、あなたも会ったことはないけれど、知っている子よと謎かけみたいなことをいい出した。
……はて、誰だろう。
「ツルシインっていえば分かる?」
その名前に謎が氷解する。僕が休みの日にシフトに入っていて、僕のタイムカードを見て驚いていたという謎の女子高生、ツルシインさんは彼女の友人だったのか。
「……ええ、と、じゃあ、僕をここに紹介したのは友達がいるから?」
「それは偶然。本当よ。みほからあなたが働いているって聞いて、逆に驚いたくらいなんだから。彼女もあそこでアルバイトしているって知って」
人づてで聞いた通り、ツルシインさんはあちこちでアルバイトをしている人だそうで、僕があそこで働き始める直前に彼女も新たなアルバイト先として入ったばかりだったという。
「前々から、といっても初めて会って間もなくだけど、あなたのことは話していて、すごく興味持ってたみたい。そこに自分と同じところにアルバイトでやって来て、ちょうど自分が休みの日に仕事に入っているから、幻の気になる男子だって盛り上がっていたのよ」
そこまで気になるいい方をされると、どういう女子なのか見てみたくもなる。
「紹介しようか」
相変わらずこちらの思考を読むのが得意な上四元クシナに、ごまかすように慌ててクリームソーダを啜った。
「見た目と性格はちょうどシーナとティナを足して二で割った感じ」
シーナさんとティナさんを思い浮かべる。……が、ちょっと想像できない。
「そういえば、ふたりとも本名なの」
なんとなく流れに任せて「シーナ」さん、「ティナ」さんと呼んではいたけれど、どう考えてもニックネームっぽい。
「興味ある?」
ちょっと意地の悪い笑みは出会った頃によく見せていたものではあったけれど、今目の当たりにしているそれは狡猾な知計等は排した、年相応の幼さの感じられる可愛らしいものであった。
「どうせならふたりのナンバーとアドレス、教えるけど」
「……えっ、いや、そういうのってやっぱりよくないんじゃ」
本人の許可なく第三者にそういうものを教えるのはどうなのか。
「普通は、ね。でも、あなたに教えるのは別。むしろ喜ぶんだから」
そういうとナプキンを一枚取り、こちらに手のひらを突き出した。
「………え、っと」
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