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聚合・Ⅱ
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「エッカーマンがどうした」
俺の視線の先に気づいた十二月晩日先輩が、未だにヴィジュアルバンドのことでかみついている瓊紅保第一の女子をいなしつつ声をかけてきた。
……エッカーマン?
「載ってないぞ」名前を確認するべくピンクのページを繰る俺に、否定の声が追いかけてきた。「あれは特別参加枠、いわゆる飛び入りだ」
「彼女は……ハーフなんですか」
「ああ。さいきん来日したんだとさ。パッパはドイツ系ロシア人でマッマは日本人。二学期から編入するんだろう」
エッカーマンなる女子生徒はこちらにはもう興味を失くしたようで、今では窓の外を眺めている。その特異な容姿とこの建物の雰囲気も手伝い、まるでCMの一コマのようだ。
あらためて参加者の名前を眺めていると、妙な違和感を覚えた。リストに記載されている生徒数よりもこの場に居るメンバー数は多い。見たところ年下、中学生と思われる女子もいる感じだ。
「高校生限定の集まりってわけじゃないからな。読書好きなら誰でも歓迎なのさ。お題によっては大学生や専門学校生、社会人だって来る」
そうなのか。婀徳会ってのは、ずいぶんと自由闊達なんだな。
「……あの、振興部のもうひとりの先輩、十一主水さんって来てないですよね?」
「来てないな」
即答だった。そこには同意の意味以上のものが含まれている気がした。俺が訝しむと、子守りで忙しいんだろうと他人事みたいにつぶやいた。その感情のこもっていない声音から察するに、振興部の貴重な先輩同士には明らかな距離感が存在するようだった。それにしても子守りとは。幼い弟妹でもいるのだろうか。似た境遇の身としては同情を禁じ得ない。
特別参加枠はともかく、リストに記載されている生徒の出席を確認するべくあらためて冊子に目を通した。
真向かいの愛貴亜高等学校の席にはシュシュで髪をまとめた、とろんとした目の女子が悠然と文庫本を繰っていた。……なんだろう、雰囲気はほんわかとしてはいるが、何か隙を見せたらいけない、強かさみたいなものを感じる。名前は……、
「十四響」
十二月晩日先輩が答える。
「十三櫛はこういう場には来ない。来るわけがない」
どこか挑発するように、吐き出すと、名前を出されたことに気づいたのか、十四響さんが本から顔を上げて、こちらに向かって微笑んでみせた。十二月晩日先輩は視線も合わせず、しかし手をかるく上げて応える。よく分からない関係性だ。
……それにしても、こういう場に来るわけがない十三櫛なる生徒。どこかで聞いた名前だ。……とさぐし、トサグシ、はて、いったいどこでだったか。
「まあ、ひとりだろうと、部員が参加してるだけ優秀だ。特別参加枠でお茶を濁しているとこよりは全然いい」
そのお茶を濁しているのはいわゆる瓊紅保商科と呼ばれている瓊紅保商科大学付属高等学校とナナミさんの母校の瓊紅保女子の二校。前者はともかく、ナナミさんの母校の不甲斐なさに俺は意味もなく憤慨していた。何かナナミさんの顔に泥を塗られた気分だ。
「どうした。ずいぶん不快げじゃないか」
顔に出ていたらしい、十二月晩日先輩が舐めるような視線を寄こしてくる。
「まあ、メンバーに名前を連ねておいて、来ないってのはふざけた話ではあるけれど、特別参加枠でも分かるように、基本、参加は自由なんだし、課題図書によっては敬遠されるのも致し方あるまいよ」
などと片手をひらひらとさせながら、十二月晩日先輩は口をとがらせた。
「今回の課題がドストエフスキーだったら、十三夫は来るぞ。来るなっていっても来る。こういうひねくれたやつは死ねっていってもぜったい死なないんだな、憎たらしいことに」
……そんなの当たり前だろう、ひねくれ云々以前の問題だ。なにいってるんだ、この人は。
「この人……ドスッ、ト……、好きなんですか」
いいなれない名前に嚙みそうになり、誤魔化すように言葉を継いだ。
「ドストエフスキー原理主義みたいなところがあるからなあ。ドストエフスキーの五大長編を読んでない人間には問答無用で無教養無価値のレッテルを貼るんだ。怖いよなあ」
ナナミさんの後輩の名前をつつきながら眉をひそめた。
「ああ、でも四大長編って見方もあるんだったか」
ひとさし指をぴたりと止めて、そんなことをつぶやくと、瓊紅保第一の女子が頷いた。
「『未成年』が省かれる場合もあるみたいですね。事実、他の作品は重版されているのに、『未成年』は長らく絶版でしたから」
「面白いのになあ、『未成年』。前半がやたらと退屈だから人気がないのもわかるんだけどさ。そこさえ抜ければ一気に話が加速するんだ。それを知らずに批判する連中の多いことよ! それに比べて『未成年』を好きだって人間は信用できる。魂の格が違うんだ」
……なんだよ、魂の格って。
「妹の妊娠発覚辺りから俄然、面白くなるんだよな、あれ。とくに終盤で寝返ったトリシャートフがバディよろしく主人公といっしょにラムベルトを追いつめるシーンなんか手に汗握るんだよ」
ほんとうにおもしろそうに語る十二月晩日先輩の声を耳にしつつ、本来ならその原理主義者がいたであろう瓊紅保女子の席を見やると特別参加枠の生徒たちが取り澄まして座っていた。
「身代わりはひとりでいいだろうに、ずいぶんと大盤振る舞いなことで」
ドストエフスキー談義もそこそこに十二月晩日先輩がそう皮肉る。三人ともボランティア活動を通して出会った顔だ。たしか……、
「フェスティナ・レンテ」
……そうだ、そんな名前だ。瓊紅保女子のボランティア活動に特化したサークル。あらためて室内を見渡せば、なるほどボランティア活動で見かけた顔がそこここに点在している気がする。
「別動隊のある学校はいいよなあ。振興部なんて、読書会もボランティア活動も一緒くただもんねえ」
などと、俺の知る限りボランティア活動には顔をだしていない十二月晩日先輩が嘆いてみせた。どの口がいうんだ、まったく。
「なんだい、ルーキー。何かいいたげじゃないか」
「……いえ、別に」
「部活を通して他校の女子と知り合えてよかったんじゃないか」
……いろんな女子と知り合いになるために入ったわけじゃないんだが、じゃあなぜ入部したのだと問われれば、ボランティア活動を通して、ナナミさんとの関係をより深めたいというあまり大きい声ではいえない理由ではあるので、胸を張って否定できなのがもどかしいところだ。
「聖アウトンも行ったんだろ?」
「……ええ、まあ」
それは梅雨真っただ中とは思えない、ある快晴の週末であった。俺は瓊紅保市内での清掃ボランティア活動の一環として、落書き消しに駆り出されていた。
「らくがきは貧しい心のあらわれです」
旗振り役である聖アウトン姉妹会のスローガンのもと、溶剤やブラシ、高圧洗浄機でもくもくと痴れ者どもによって穢された外壁やシャッターをきれいにしてゆくのはなかなか気分がよく、不思議と己の心で蓄積していたストレスも解消され、心も浄化されていっているようで悪くなかった。何よりお嬢様然とした女子生徒たちがこの日は髪を束ね、作業着に身を包み、汗を流しながら優雅な動きでせっせと落書きを消してゆく姿にはちょっとした感動すら覚えていた。
作業を終えたあと、俺は聖アウトン姉妹会のお茶会に誘われた。どうしたものかと躊躇したのだが、けっきょく好奇心が勝り、相伴することにした。
今年で創立80周年を迎える聖アウトン女学園は実業家の万千百小路茶兵衛が妻とともに創立した瓊紅保高等女学校が元になっており、瓊紅保市北西部の万千百小路に存在する。創立者の名前が地名になっていることからも分かる通り、万千百小路家の地元での影響力は計り知れない。のちに校名を変え、今から45年前に創立者の長女が二代目を引き継ぐと同時に現住所に移転したという。ちなみに校名を変えた際に創立者の弟が独立して創ったのがナナミさんの母校でもある瓊紅保女子高等学校だ。
ロートアイアンなる装飾を施した、高さ三メートルはありそうな重厚な門扉の脇にある守衛室でストラップ付の入校許可証とでもいえばいいのか、ともかく「ワタクシは不審者ではありません」という証を首からぶら下げて足を踏み入れた聖アウトン女学園は聞きしに勝る景観であった。
欧州に点在する貴族の離宮と見紛う広大な眺望を形づくるのは左右に配置された毛氈花壇と噴水群で、さらにボスケなる樹林帯がぐるりと敷地内を囲んでいる。平面幾何学式と呼ばれるその庭園の合間を縫って一キロ近く歩いた先にあるのはもはや校舎とは呼べないまさに宮殿であった。すれ違う生徒全員から、「ごきげんよう」とあいさつされるに至って、俺は異常なまでの場違い感に苛まれて本気で気分が悪くなっていた。
「今日はほんとうにお疲れ様でした」
あまりに非現実的な校舎の外観、「ごきげんよう」の波状攻撃、そして慣れない清掃活動で心身ともに疲弊していた俺は正直、好奇心から来るこの往訪をはげしく後悔し、さっさと帰りたくなっていたのだが、いったくいくらするのか想像もつかない豪奢なシャンデリアと猫脚と呼ばれる白で統一されたアンティーク風の調度品で構成された談話室に通された頃には思考回路は狂わされ、すでに反抗心を殺がれていた。
「お口に合えばよろしいのですが」
身体のラインにきれいに沿った黒い三つボタンの、チェンジポケットの付いた上品な仕立てのブレザー姿の女子たちに囲まれて過ごすティータイムは悪くはないものの、やはり俺の好みからは逸脱していた。それは紅茶はともかく、このマドレーヌなる焼き菓子にもいえた。俺は甘い菓子はあまり食べないのだが、さりとて辞退するのも申し訳ない。さてどうしたものかと思案していると、彼女たちの何人かがその焼き菓子のかけらをスプーンに乗せ、紅茶に浸して食べている優雅な姿が目に入った。
……はて、お嬢様学校に通うような人間のあいだにはそういう作法が存在するのだろうか?
「かァ~、聖アウトン女学園にお通いになられるリセエンヌ様ともなれば、プルーストは修学済みでございってかァ!」
……なに切れてるんだ、十二月晩日先輩は。
「で、旨かったかい、マドレーヌ」
「まあ、それなりに」
帰り際、俺はマドレーヌをはじめとした焼き菓子の、見るからに高級そうな詰め合わせまで貰っていた。
「聖アウトン女学園に招待された男子なんてそう何人もいないだろう。ひょっとしてはじめてかもしれない。振興部を通してずいぶんと交友関係が拡がったようで何よりだ。先輩としても誇らしいぞ」
「…………」
「なんだい、ルーキー。何かいいたげじゃないか」
「十二月晩日先輩ってほんとうに振興部の部員なんですか」
「そうだよ」
…………。
「ワタクシ、こう見えていろいろと忙しい身でして」
何をいいたいのか察した十二月晩日先輩はそうのたまう。
「……じゃあ、今日は、」
呆れてそういいかけると、十二月晩日先輩は腹立たしくも味わい深い満面の笑みで食い気味に答えた。
「私、ぶっちゃけ今日ノリで来たんで」
……ったく。いい気なものだ。
それにしても、今日は参加者リストのはんぶんも来ていないことになる。なのに会には部員以上の生徒が列座しているという捻じれ現象。
「満員御礼、けっこうなことじゃないか」
十二月晩日先輩は誰にいうでもなくつぶやいてみせた。
生徒たちはみな、各自課題図書をテーブルに置き、別途ノートを確認したりと予習に余念がないが、ひとり十二月晩日先輩の前には何もなかった。
「本、渡されたんですよね?」
「いんや。読んだことあるから丁重に断った」
聞けば今日は手ぶらできたらしい。読書会に徒手空拳で参戦とはなかなか肝が据わってるというか、ぶっちゃけノリで来ただけのことはある。
「この方、とぼけた顔で記憶力が尋常じゃないんです」
さっき十二月晩日先輩に噛みついていた瓊紅保第一の生徒が感心とも呆れとも取れる目線を当人に投げつけた。その記憶力が尋常じゃない先輩はというと相変わらず退屈そうに左手に顎を乗せて前方を眺めていた。
「申し遅れました、私、十代田といいます。今日は宜しくお願い致します」
まるで我が部の先輩への当てつけのようなていねいな挨拶に面食らいながら会釈を返すと、十二月晩日先輩は引きつったような乾いた笑い声を上げた。
「振興部に六反園さんのような方がいらっしゃって安心しました」
「やったな、ルーキー」
十二月晩日先輩のやる気のない冷やかしを聞き流しながら俺のような方とはどういうことかとも思ったが、それ以上深くは考えずにただ柔らかな十代田さんの笑みを素直に受け入れようと決め、さっき彼女に抱いた、よりにもよって羽二生に似ているなどという負のイメージを心の中で殊勝に詫びた。
この流れで今回初参加ということで彼女から大まかな会の説明を受けた。……こういうのって、先輩である十二月晩日先輩の仕事なんじゃないのか。
「なんだい、ルーキー。何かいいたげじゃないか」
俺の視線に気づいた十二月晩日先輩がのんびりとこちらを見た。
「……別に」
婀徳会が主催する読書会には、大きく分けてふた通りあり、今回のように課題図書を各自読み込み、感想・意見を交わし合う研究会形式と呼ばれる【ストゥディア】とじぶんの推す本をアツく語り、審査員の多数決で勝者を決めて行くビブリオバトル形式の【パルティータ】があるという。後者は「詩のボクシング」ならぬ「本のボクシング」のような体裁で三分間のうちにじぶんの推したい一冊を熱心にプレゼンよろしく紹介するのだという。ときにはじっさいにボクシングの試合が行われる会場を貸し切って、本物のボクシングのごとくリングインしながらやるというから酔狂にもほどがある。
「でも映像でしか見たことのないリングにじっさいに上がって、照明が降り注ぐなかゴングまで鳴らされると、びっくりするくらい気持ちが高揚するんです。大げさですけれど、私みたいな本ばかり読んでるような者には非現実的じゃないですか、ああいうスポーツって」
……まあ、ふつうの女子には縁のないものだよな、ボクシングのリングにしろゴングにしろ。というか、『パルティータ』でリングに臨場した経験があるんだな、十代田さん。
「いい試合だったぜ。エッチなコスチュームに身を包んで、玄人はだしのいいパンチを連発するんだ。かと思えば物欲しげな顔で相手に何度も何度も執拗にクリンチなんかかましちゃったりしてさ。こんなにおとなしそうな顔して、けっこうやること大胆なんだよ、れんちゃんったら♡」
「……あの、六反園さん。分かってるとは思いますが、十二月晩日さんのいってることは」
「すみません、悪ふざけがすぎる先輩で」
俺はみなまでいわずとも分かってるという風に、頷いた。
「いい掛け合いだな、キミタチ」
俺は無視して、読書会についての説明をふたたび受けた。
その「本のボクシング」ともいえる『パルティータ』で勝ち上がった本がそのまま『ストゥディア』の課題図書になることも多々あるというが、今回の場合、幹事役たる瓊紅保第一高等学校の顧問の熱心な推薦によるものだという。瓊紅保第一高等学校といえば、数年前に瓊紅保商業と周辺の高校を統廃合してできた新設校で市内のみならず県内外でも話題になっているところだ。
そこの代表であるBBBの顧問、つまり今回の忌まわしい読書の仕掛け人であるミズ・エマヌードルは凶暴なまでに先鋭化された色香を容赦なく振りまきながら、唐突に現れた。
俺の視線の先に気づいた十二月晩日先輩が、未だにヴィジュアルバンドのことでかみついている瓊紅保第一の女子をいなしつつ声をかけてきた。
……エッカーマン?
「載ってないぞ」名前を確認するべくピンクのページを繰る俺に、否定の声が追いかけてきた。「あれは特別参加枠、いわゆる飛び入りだ」
「彼女は……ハーフなんですか」
「ああ。さいきん来日したんだとさ。パッパはドイツ系ロシア人でマッマは日本人。二学期から編入するんだろう」
エッカーマンなる女子生徒はこちらにはもう興味を失くしたようで、今では窓の外を眺めている。その特異な容姿とこの建物の雰囲気も手伝い、まるでCMの一コマのようだ。
あらためて参加者の名前を眺めていると、妙な違和感を覚えた。リストに記載されている生徒数よりもこの場に居るメンバー数は多い。見たところ年下、中学生と思われる女子もいる感じだ。
「高校生限定の集まりってわけじゃないからな。読書好きなら誰でも歓迎なのさ。お題によっては大学生や専門学校生、社会人だって来る」
そうなのか。婀徳会ってのは、ずいぶんと自由闊達なんだな。
「……あの、振興部のもうひとりの先輩、十一主水さんって来てないですよね?」
「来てないな」
即答だった。そこには同意の意味以上のものが含まれている気がした。俺が訝しむと、子守りで忙しいんだろうと他人事みたいにつぶやいた。その感情のこもっていない声音から察するに、振興部の貴重な先輩同士には明らかな距離感が存在するようだった。それにしても子守りとは。幼い弟妹でもいるのだろうか。似た境遇の身としては同情を禁じ得ない。
特別参加枠はともかく、リストに記載されている生徒の出席を確認するべくあらためて冊子に目を通した。
真向かいの愛貴亜高等学校の席にはシュシュで髪をまとめた、とろんとした目の女子が悠然と文庫本を繰っていた。……なんだろう、雰囲気はほんわかとしてはいるが、何か隙を見せたらいけない、強かさみたいなものを感じる。名前は……、
「十四響」
十二月晩日先輩が答える。
「十三櫛はこういう場には来ない。来るわけがない」
どこか挑発するように、吐き出すと、名前を出されたことに気づいたのか、十四響さんが本から顔を上げて、こちらに向かって微笑んでみせた。十二月晩日先輩は視線も合わせず、しかし手をかるく上げて応える。よく分からない関係性だ。
……それにしても、こういう場に来るわけがない十三櫛なる生徒。どこかで聞いた名前だ。……とさぐし、トサグシ、はて、いったいどこでだったか。
「まあ、ひとりだろうと、部員が参加してるだけ優秀だ。特別参加枠でお茶を濁しているとこよりは全然いい」
そのお茶を濁しているのはいわゆる瓊紅保商科と呼ばれている瓊紅保商科大学付属高等学校とナナミさんの母校の瓊紅保女子の二校。前者はともかく、ナナミさんの母校の不甲斐なさに俺は意味もなく憤慨していた。何かナナミさんの顔に泥を塗られた気分だ。
「どうした。ずいぶん不快げじゃないか」
顔に出ていたらしい、十二月晩日先輩が舐めるような視線を寄こしてくる。
「まあ、メンバーに名前を連ねておいて、来ないってのはふざけた話ではあるけれど、特別参加枠でも分かるように、基本、参加は自由なんだし、課題図書によっては敬遠されるのも致し方あるまいよ」
などと片手をひらひらとさせながら、十二月晩日先輩は口をとがらせた。
「今回の課題がドストエフスキーだったら、十三夫は来るぞ。来るなっていっても来る。こういうひねくれたやつは死ねっていってもぜったい死なないんだな、憎たらしいことに」
……そんなの当たり前だろう、ひねくれ云々以前の問題だ。なにいってるんだ、この人は。
「この人……ドスッ、ト……、好きなんですか」
いいなれない名前に嚙みそうになり、誤魔化すように言葉を継いだ。
「ドストエフスキー原理主義みたいなところがあるからなあ。ドストエフスキーの五大長編を読んでない人間には問答無用で無教養無価値のレッテルを貼るんだ。怖いよなあ」
ナナミさんの後輩の名前をつつきながら眉をひそめた。
「ああ、でも四大長編って見方もあるんだったか」
ひとさし指をぴたりと止めて、そんなことをつぶやくと、瓊紅保第一の女子が頷いた。
「『未成年』が省かれる場合もあるみたいですね。事実、他の作品は重版されているのに、『未成年』は長らく絶版でしたから」
「面白いのになあ、『未成年』。前半がやたらと退屈だから人気がないのもわかるんだけどさ。そこさえ抜ければ一気に話が加速するんだ。それを知らずに批判する連中の多いことよ! それに比べて『未成年』を好きだって人間は信用できる。魂の格が違うんだ」
……なんだよ、魂の格って。
「妹の妊娠発覚辺りから俄然、面白くなるんだよな、あれ。とくに終盤で寝返ったトリシャートフがバディよろしく主人公といっしょにラムベルトを追いつめるシーンなんか手に汗握るんだよ」
ほんとうにおもしろそうに語る十二月晩日先輩の声を耳にしつつ、本来ならその原理主義者がいたであろう瓊紅保女子の席を見やると特別参加枠の生徒たちが取り澄まして座っていた。
「身代わりはひとりでいいだろうに、ずいぶんと大盤振る舞いなことで」
ドストエフスキー談義もそこそこに十二月晩日先輩がそう皮肉る。三人ともボランティア活動を通して出会った顔だ。たしか……、
「フェスティナ・レンテ」
……そうだ、そんな名前だ。瓊紅保女子のボランティア活動に特化したサークル。あらためて室内を見渡せば、なるほどボランティア活動で見かけた顔がそこここに点在している気がする。
「別動隊のある学校はいいよなあ。振興部なんて、読書会もボランティア活動も一緒くただもんねえ」
などと、俺の知る限りボランティア活動には顔をだしていない十二月晩日先輩が嘆いてみせた。どの口がいうんだ、まったく。
「なんだい、ルーキー。何かいいたげじゃないか」
「……いえ、別に」
「部活を通して他校の女子と知り合えてよかったんじゃないか」
……いろんな女子と知り合いになるために入ったわけじゃないんだが、じゃあなぜ入部したのだと問われれば、ボランティア活動を通して、ナナミさんとの関係をより深めたいというあまり大きい声ではいえない理由ではあるので、胸を張って否定できなのがもどかしいところだ。
「聖アウトンも行ったんだろ?」
「……ええ、まあ」
それは梅雨真っただ中とは思えない、ある快晴の週末であった。俺は瓊紅保市内での清掃ボランティア活動の一環として、落書き消しに駆り出されていた。
「らくがきは貧しい心のあらわれです」
旗振り役である聖アウトン姉妹会のスローガンのもと、溶剤やブラシ、高圧洗浄機でもくもくと痴れ者どもによって穢された外壁やシャッターをきれいにしてゆくのはなかなか気分がよく、不思議と己の心で蓄積していたストレスも解消され、心も浄化されていっているようで悪くなかった。何よりお嬢様然とした女子生徒たちがこの日は髪を束ね、作業着に身を包み、汗を流しながら優雅な動きでせっせと落書きを消してゆく姿にはちょっとした感動すら覚えていた。
作業を終えたあと、俺は聖アウトン姉妹会のお茶会に誘われた。どうしたものかと躊躇したのだが、けっきょく好奇心が勝り、相伴することにした。
今年で創立80周年を迎える聖アウトン女学園は実業家の万千百小路茶兵衛が妻とともに創立した瓊紅保高等女学校が元になっており、瓊紅保市北西部の万千百小路に存在する。創立者の名前が地名になっていることからも分かる通り、万千百小路家の地元での影響力は計り知れない。のちに校名を変え、今から45年前に創立者の長女が二代目を引き継ぐと同時に現住所に移転したという。ちなみに校名を変えた際に創立者の弟が独立して創ったのがナナミさんの母校でもある瓊紅保女子高等学校だ。
ロートアイアンなる装飾を施した、高さ三メートルはありそうな重厚な門扉の脇にある守衛室でストラップ付の入校許可証とでもいえばいいのか、ともかく「ワタクシは不審者ではありません」という証を首からぶら下げて足を踏み入れた聖アウトン女学園は聞きしに勝る景観であった。
欧州に点在する貴族の離宮と見紛う広大な眺望を形づくるのは左右に配置された毛氈花壇と噴水群で、さらにボスケなる樹林帯がぐるりと敷地内を囲んでいる。平面幾何学式と呼ばれるその庭園の合間を縫って一キロ近く歩いた先にあるのはもはや校舎とは呼べないまさに宮殿であった。すれ違う生徒全員から、「ごきげんよう」とあいさつされるに至って、俺は異常なまでの場違い感に苛まれて本気で気分が悪くなっていた。
「今日はほんとうにお疲れ様でした」
あまりに非現実的な校舎の外観、「ごきげんよう」の波状攻撃、そして慣れない清掃活動で心身ともに疲弊していた俺は正直、好奇心から来るこの往訪をはげしく後悔し、さっさと帰りたくなっていたのだが、いったくいくらするのか想像もつかない豪奢なシャンデリアと猫脚と呼ばれる白で統一されたアンティーク風の調度品で構成された談話室に通された頃には思考回路は狂わされ、すでに反抗心を殺がれていた。
「お口に合えばよろしいのですが」
身体のラインにきれいに沿った黒い三つボタンの、チェンジポケットの付いた上品な仕立てのブレザー姿の女子たちに囲まれて過ごすティータイムは悪くはないものの、やはり俺の好みからは逸脱していた。それは紅茶はともかく、このマドレーヌなる焼き菓子にもいえた。俺は甘い菓子はあまり食べないのだが、さりとて辞退するのも申し訳ない。さてどうしたものかと思案していると、彼女たちの何人かがその焼き菓子のかけらをスプーンに乗せ、紅茶に浸して食べている優雅な姿が目に入った。
……はて、お嬢様学校に通うような人間のあいだにはそういう作法が存在するのだろうか?
「かァ~、聖アウトン女学園にお通いになられるリセエンヌ様ともなれば、プルーストは修学済みでございってかァ!」
……なに切れてるんだ、十二月晩日先輩は。
「で、旨かったかい、マドレーヌ」
「まあ、それなりに」
帰り際、俺はマドレーヌをはじめとした焼き菓子の、見るからに高級そうな詰め合わせまで貰っていた。
「聖アウトン女学園に招待された男子なんてそう何人もいないだろう。ひょっとしてはじめてかもしれない。振興部を通してずいぶんと交友関係が拡がったようで何よりだ。先輩としても誇らしいぞ」
「…………」
「なんだい、ルーキー。何かいいたげじゃないか」
「十二月晩日先輩ってほんとうに振興部の部員なんですか」
「そうだよ」
…………。
「ワタクシ、こう見えていろいろと忙しい身でして」
何をいいたいのか察した十二月晩日先輩はそうのたまう。
「……じゃあ、今日は、」
呆れてそういいかけると、十二月晩日先輩は腹立たしくも味わい深い満面の笑みで食い気味に答えた。
「私、ぶっちゃけ今日ノリで来たんで」
……ったく。いい気なものだ。
それにしても、今日は参加者リストのはんぶんも来ていないことになる。なのに会には部員以上の生徒が列座しているという捻じれ現象。
「満員御礼、けっこうなことじゃないか」
十二月晩日先輩は誰にいうでもなくつぶやいてみせた。
生徒たちはみな、各自課題図書をテーブルに置き、別途ノートを確認したりと予習に余念がないが、ひとり十二月晩日先輩の前には何もなかった。
「本、渡されたんですよね?」
「いんや。読んだことあるから丁重に断った」
聞けば今日は手ぶらできたらしい。読書会に徒手空拳で参戦とはなかなか肝が据わってるというか、ぶっちゃけノリで来ただけのことはある。
「この方、とぼけた顔で記憶力が尋常じゃないんです」
さっき十二月晩日先輩に噛みついていた瓊紅保第一の生徒が感心とも呆れとも取れる目線を当人に投げつけた。その記憶力が尋常じゃない先輩はというと相変わらず退屈そうに左手に顎を乗せて前方を眺めていた。
「申し遅れました、私、十代田といいます。今日は宜しくお願い致します」
まるで我が部の先輩への当てつけのようなていねいな挨拶に面食らいながら会釈を返すと、十二月晩日先輩は引きつったような乾いた笑い声を上げた。
「振興部に六反園さんのような方がいらっしゃって安心しました」
「やったな、ルーキー」
十二月晩日先輩のやる気のない冷やかしを聞き流しながら俺のような方とはどういうことかとも思ったが、それ以上深くは考えずにただ柔らかな十代田さんの笑みを素直に受け入れようと決め、さっき彼女に抱いた、よりにもよって羽二生に似ているなどという負のイメージを心の中で殊勝に詫びた。
この流れで今回初参加ということで彼女から大まかな会の説明を受けた。……こういうのって、先輩である十二月晩日先輩の仕事なんじゃないのか。
「なんだい、ルーキー。何かいいたげじゃないか」
俺の視線に気づいた十二月晩日先輩がのんびりとこちらを見た。
「……別に」
婀徳会が主催する読書会には、大きく分けてふた通りあり、今回のように課題図書を各自読み込み、感想・意見を交わし合う研究会形式と呼ばれる【ストゥディア】とじぶんの推す本をアツく語り、審査員の多数決で勝者を決めて行くビブリオバトル形式の【パルティータ】があるという。後者は「詩のボクシング」ならぬ「本のボクシング」のような体裁で三分間のうちにじぶんの推したい一冊を熱心にプレゼンよろしく紹介するのだという。ときにはじっさいにボクシングの試合が行われる会場を貸し切って、本物のボクシングのごとくリングインしながらやるというから酔狂にもほどがある。
「でも映像でしか見たことのないリングにじっさいに上がって、照明が降り注ぐなかゴングまで鳴らされると、びっくりするくらい気持ちが高揚するんです。大げさですけれど、私みたいな本ばかり読んでるような者には非現実的じゃないですか、ああいうスポーツって」
……まあ、ふつうの女子には縁のないものだよな、ボクシングのリングにしろゴングにしろ。というか、『パルティータ』でリングに臨場した経験があるんだな、十代田さん。
「いい試合だったぜ。エッチなコスチュームに身を包んで、玄人はだしのいいパンチを連発するんだ。かと思えば物欲しげな顔で相手に何度も何度も執拗にクリンチなんかかましちゃったりしてさ。こんなにおとなしそうな顔して、けっこうやること大胆なんだよ、れんちゃんったら♡」
「……あの、六反園さん。分かってるとは思いますが、十二月晩日さんのいってることは」
「すみません、悪ふざけがすぎる先輩で」
俺はみなまでいわずとも分かってるという風に、頷いた。
「いい掛け合いだな、キミタチ」
俺は無視して、読書会についての説明をふたたび受けた。
その「本のボクシング」ともいえる『パルティータ』で勝ち上がった本がそのまま『ストゥディア』の課題図書になることも多々あるというが、今回の場合、幹事役たる瓊紅保第一高等学校の顧問の熱心な推薦によるものだという。瓊紅保第一高等学校といえば、数年前に瓊紅保商業と周辺の高校を統廃合してできた新設校で市内のみならず県内外でも話題になっているところだ。
そこの代表であるBBBの顧問、つまり今回の忌まわしい読書の仕掛け人であるミズ・エマヌードルは凶暴なまでに先鋭化された色香を容赦なく振りまきながら、唐突に現れた。
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拓海の生活はどうなるのか!?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
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