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 犯人は、風貌や持ち物からこの国と敵対する帝国の男だったらしい。らしい、というのは、捕まった後自害してしまったからだ。国王陛下は兵士から使用人まで、もう一度身分を洗い直し、今後の警備も強化することを決めた。

 そして私とコックたちも一応取り調べを受けた。もちろん、いくら調べられても帝国との関係などはなく、すぐに解放された。なぜシリル様の危機がわかったのかは、とにかく【虫の知らせ】で押し通したし。コックたちも、何か胸がざわついたからだと証言してくれたのも追い風となった。

 目覚めたシリル様は事の顛末を聞き、すぐに私に会いたいと仰ったそうだ。私はシリル様のお部屋に伺い、まだ横たわっているシリル様のベッドの横に腰掛けた。

「全て聞いたよ、ベジャール嬢。私を助けてくれたそうだね」
「いえ、私は何も……。コックたちが取り押さえてくれたのですから」
「だけど、君が彼らに命じてくれなければ、あの男に手出し出来なかっただろう。本当にありがとう。君は私の命の恩人だ」
「もったいないお言葉でございます。殿下がご無事で本当に良かったです……」

 あの時の恐怖がよみがえり、私はまた涙をこぼした。

「泣かないで、ベジャール嬢……いや、アネット」

 シリル様にアネットと呼ばれ、私は顔を上げた。

「私はアネットが好きだ。ずっと私の側にいてくれないか」
「シリル様……」
「父も母も、君をたいそう気に入っている。既に許可も得た。君さえ良ければ、すぐにでも婚約者として発表したい」

 信じられない。まさか、シリル様が私を好きだと仰るなんて! でもコリンヌはニコニコして私を見つめているし、ベルナールはコリンヌの肩を抱いて笑っている。そしてこう言った。

『遠慮しないで、彼の気持ちを受け取りなさい。人生は一度きり。チャンスは逃してはなりません』

 私は頷くと、シリル様に返事をした。

「はい、殿下。私も殿下をお慕いしております。どうか、私をお側において下さい」
「アネット……」

 シリル様は私の手を取り、固く握りしめて下さった。私よりも大きくて温かな手。私はこの瞬間、世界で一番幸せな女の子になった。


 
 そして一年後。私とシリル様の結婚式が盛大におこなわれた。国民の祝福を浴び、花びらが舞う中、馬車に乗ってパレードをする。私たちの頭の上には同じように幸せなカップル、ベルナールとコリンヌがいる。

『あなたたちが長生きできるように、私たちはこれからも見守りますからね』

 コリンヌが微笑み、ベルナールが満足気に言う。

『ありがとう、ベルナール。これからもよろしくね』

 上を向いて笑う私に、シリル様が不思議そうに尋ねる。

「どうしたの、アネット。天使でもいるのかい」
「ええ、そうよ。とっても素敵な天使たちがね」

 私は微笑んでシリル様の頬にキスをした。
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みんなの感想(2件)

にいな
2022.10.24 にいな

面白そうな設定だなぁと読ませていただいたら、やっぱり面白くてあっという間に読み切りました。
すっごくステキなお話しで、笑顔になりました✨ありがとうございました✨✨

月(ユエ)/久瀬まりか
2022.10.24 月(ユエ)/久瀬まりか

にいなさま

コメントありがとうございます😊
独自設定の前世でしたが、
お楽しみいただけたようで良かった💕
とっても嬉しいです❣️
ステキな話と言っていただき
私も笑顔になりました🥰
ありがとうございました✨✨

解除
kokekokko
2022.10.24 kokekokko

いくつか作品を読ませていただいていますが、このお話もほんわかで、とっても好きでした。また読みに来ます!

月(ユエ)/久瀬まりか
2022.10.24 月(ユエ)/久瀬まりか

kokekokkoさま
コメントありがとうございます😊
わぁ💕
ほんわかを目指したのでそう言っていただき嬉しいです🥰💖
暗い作品もあったりするのですが(汗)、
またぜひいらしてください❣️
ありがとうございました✨✨

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