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43・ライナスの毛布
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呆れていると、彼はおれの腕を掴むや否や、速攻でドアノブに触れる。
そして次の瞬間には、おれは玄関でぎゅうぎゅうと彼に抱きしめられていた。
全く。ライナスの毛布にでもなった気分だ。
「らいなす?何それ?」
知らないか?
ス〇ーピーで有名な漫画に出てくる、何時も毛布を持った少年キャラなんだが。
「………ああ。何か見た事ある、かも?」
その少年キャラの名前がライナスだ。
そしてそのライナスが、精神的安定を得る為の心の拠り所が、毛布。
別名を、安心毛布とか、ブランケット症候群とも言うな。
まあ、要は精神安定剤だ。
「………………そっか。そうだね、合ってるかもしれない」
弱弱しい声音に、ひとつ、瞬く。
日本最強。最上級探索者。ダンジョン攻略第一位。
彼を表す代名詞は強いものばかりだが。
この人の中身は、案外脆いのだろう。
例えば、高度10を誇るのに落としただけで割れてしまう、ダイヤモンドの様に。
まあ、それも当然、なのかもしれないが。
何故なら彼はまだ20歳。成人はしているが、若造と言っても良い年だ。
しかもこの世界は一部例外はあるが、安全で、豊かで、平和である。
自然の驚異からはある程度自衛出来るし、盗賊なんてものもいない。
しっかりとした道徳教育が施され、法はきちんと整備されている。
おれの知る、前の世界に比べて生温いのだ。
そんな温室で育てられた人間の、身も心も強靭なのかと聞かれれば。おれは首を捻る。
前の世界は厳しかった。余裕がなかったし、荒んでいた。全く命の軽い世界だった。
けれどだからこそ、逞しい人間が沢山いた。
純粋な体力腕力の話じゃない。
酷薄で、狡猾で、貪欲に。良いか悪いか、楽しいか辛いか、そんな事は関係なく。ただひたすらに、生き汚い程に生き藻掻いていた。
だからこそ。
未だ腕の力を緩めない彼の背を撫でる。
常に飄々としたこの人の、柔い部分。人間らしい弱さ。
それが悪いという訳ではない。
完璧な人間など何処にもいない。いたとして、それはもう人間でない何かでしかない事を、おれは知っている。
ただ、危うい。
精神の安定を外部に求める程度に。
で、あれば。
―――………まあ、丁度良い、のかもしれない。
勘違いのままに、しておきたかったというのが、本音ではあるんだが。
仕方ない。絆された自分が悪い。面倒とか言ってられん。
おれも、腹を括ろう。
ところで何時までこの状態を続けるんだ?
「ん。もう少し」
そうか。もう少しか。
………吸うだけで、良いのか?
途端。がばりと彼は身を起こした。
両肩を掴まれて、普段は切れ長の眼をこれでもかとばかりに見開いておれを凝視する。
そんな彼の前で。おれは殊更ゆっくり。マスクを外し、眼帯を剥がして、こてり、首を傾げる。
そして、もう一言。
吸うだけで、良いのか?
「………………良いの?」
さて。
何が“良いの”なのか良く解らん。
そういうのは、もっと具体的に言ってくれないと。
そう、何時もの様に。
「何時もの、って………本当に、良いの?そういう風に、受け取っちゃうよ?」
具体的に、と言ったぞ。
そういう風、とは?
そして次の瞬間には、おれは玄関でぎゅうぎゅうと彼に抱きしめられていた。
全く。ライナスの毛布にでもなった気分だ。
「らいなす?何それ?」
知らないか?
ス〇ーピーで有名な漫画に出てくる、何時も毛布を持った少年キャラなんだが。
「………ああ。何か見た事ある、かも?」
その少年キャラの名前がライナスだ。
そしてそのライナスが、精神的安定を得る為の心の拠り所が、毛布。
別名を、安心毛布とか、ブランケット症候群とも言うな。
まあ、要は精神安定剤だ。
「………………そっか。そうだね、合ってるかもしれない」
弱弱しい声音に、ひとつ、瞬く。
日本最強。最上級探索者。ダンジョン攻略第一位。
彼を表す代名詞は強いものばかりだが。
この人の中身は、案外脆いのだろう。
例えば、高度10を誇るのに落としただけで割れてしまう、ダイヤモンドの様に。
まあ、それも当然、なのかもしれないが。
何故なら彼はまだ20歳。成人はしているが、若造と言っても良い年だ。
しかもこの世界は一部例外はあるが、安全で、豊かで、平和である。
自然の驚異からはある程度自衛出来るし、盗賊なんてものもいない。
しっかりとした道徳教育が施され、法はきちんと整備されている。
おれの知る、前の世界に比べて生温いのだ。
そんな温室で育てられた人間の、身も心も強靭なのかと聞かれれば。おれは首を捻る。
前の世界は厳しかった。余裕がなかったし、荒んでいた。全く命の軽い世界だった。
けれどだからこそ、逞しい人間が沢山いた。
純粋な体力腕力の話じゃない。
酷薄で、狡猾で、貪欲に。良いか悪いか、楽しいか辛いか、そんな事は関係なく。ただひたすらに、生き汚い程に生き藻掻いていた。
だからこそ。
未だ腕の力を緩めない彼の背を撫でる。
常に飄々としたこの人の、柔い部分。人間らしい弱さ。
それが悪いという訳ではない。
完璧な人間など何処にもいない。いたとして、それはもう人間でない何かでしかない事を、おれは知っている。
ただ、危うい。
精神の安定を外部に求める程度に。
で、あれば。
―――………まあ、丁度良い、のかもしれない。
勘違いのままに、しておきたかったというのが、本音ではあるんだが。
仕方ない。絆された自分が悪い。面倒とか言ってられん。
おれも、腹を括ろう。
ところで何時までこの状態を続けるんだ?
「ん。もう少し」
そうか。もう少しか。
………吸うだけで、良いのか?
途端。がばりと彼は身を起こした。
両肩を掴まれて、普段は切れ長の眼をこれでもかとばかりに見開いておれを凝視する。
そんな彼の前で。おれは殊更ゆっくり。マスクを外し、眼帯を剥がして、こてり、首を傾げる。
そして、もう一言。
吸うだけで、良いのか?
「………………良いの?」
さて。
何が“良いの”なのか良く解らん。
そういうのは、もっと具体的に言ってくれないと。
そう、何時もの様に。
「何時もの、って………本当に、良いの?そういう風に、受け取っちゃうよ?」
具体的に、と言ったぞ。
そういう風、とは?
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