祓え 溝口華南

斉藤 延廣

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1章 妖を祓え

1話

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 夜の繁華街、人々は飲食をしたり気持ち良さそうに歩いたりして賑わう。


 人目につかないように走るネズミが一匹。
 細い路地裏に来ると謎の声を聞く。

「?」

 ネズミはそれ聞くと立ち止まり見回していると目の前に大きな陰が迫って来る。






バクッ






 酒に酔った男が細い路地に入って嘔吐するとクチャクチャと音がする。

「?」

 酔いが覚めないまま見ていると謎の陰が迫って来る。


「・・・・・・!!」




『 それは近くに潜む 』




 人通りの少ない道を歩く一人の少女(華南)。
 チンピラの男達が向かって来て肩がぶつかる。
「いてっ! 痛えなコラ!」
 華南はなにも反応しないまま過ぎようとする。
「待ちやがれコスプレ女 」
 男が掴みかかろうとすると華南は手を掴んでひねる。

チンピラ「いてて・・・!!」
華南「ぶつかって来たのはそっちだろ。」
 他のチンピラが殴りかかろうとすると握っていたチンピラの手を引っ張ってぶつける。

「もうやめましょう、ケガどころじゃ済まなくなりますよ。」
「クソ、おぼえてろ!」
 チンピラ達は逃げるように去る。
華南「いけない、あんなやつら相手にするだけ時間の無駄じゃない。」

 ふと華南は何かの気配を感じる。
 気配を感じて来たのは廃工場。

 中に入ると上から何かが落ちてきてカランという音がする。 華南は振り返る。
 転がったスプレー缶の中から煙が回りに立ち込める。
 華南が中で混乱していると見えないところから複数の謎の影が霧散する。

 華南は気配を追ったがそこにはなにもいなかった。
「・・・・・・。」



 会社のオフィス、明らかに年下の上司達が中年の男をこき使っている。
上司「ナカオくーん、書類できたの?」
部下「はい、ただいま!」
 コピーされた書類を見る。 いろんなデータが書かれている。
上司「まだ間違ってるよ。こんな簡単なこともできないの?」
 部下の男に用紙を投げつける。
上司「散らかったよ、後で掃除して。」

上司「ナカオく~ん、お茶まだなの?」
部下「は、はい!」

 別の上司の男に呼ばれ部下の男はお茶を出す。
上司「苦い、茶殻ばかりだ。 こんなカスみたいなものを飲ませるのかお前は!!」
 湯呑みのお茶を部下の男の頭にかける。

「まったく本当にダメだな。」
「立ち振る舞いが下手だからどの科でもやっていけないんだよ。」
「それを渋々俺達が使ってやってるんだ、感謝しろよ。」
「どうせなら一生こき使ってやるわ。」
 高笑いをする上司三人、部下の男は唇を噛み締める。

 男性トイレ、洗面台で頭を抱えながらうなる部下の男。

「なぜだ!? なんであんなやつらばかり上にあがれるんだ!
 上司の懐に入って意見にイエス言ってるだけじゃないか!
 年下のくせに上の地位に立ってるからって 」

「 それはイジイジしちゃうよね。 」

男「誰だ?」
「 恨みなら晴らしてあげられるよ、僕に任せればね。 」
男「・・・?」
「 ついでに悩むことからも解放されるし一石二鳥だ。 」
 男は頭に何かを刺されたような感触。
「!!」

 オフィスでは机に足をかけたりしてケータイゲームを楽しんでいる三人の上司。
 そこに部下の男が来る。

「ナカオくーん、遅かったね。」
「一階に降りて買うだけだよね。 何してたの?」
「言われたこともできないの、だからお前はダメなんだよ。」
「買ったものは君にツケるから。」
「上に言っても無駄だよ、僕たちの方が信頼されてるんだから。」
「むしろ告げ口したらあんたの首が飛ぶよ。」
「そうだな、俺が今はいてるパンツむさぼってくれたら許してやるよ。 さっきションベンして少しついたけど 」
「あ、それともさ、こいつの写真を添付して( 女性社員 )ちゃんに“××××させて”ってメールで送るのは?」
「あ、それいいね。」

部下「もううんざりだ・・・」
「?」 「?」 「?」

部下「散々コケにしやがって・・・


 お前ら全員地獄行きだ!!」

 部下の男の目元は変貌し、頭の中を虫のようなものが這っている。
 さらにカッターナイフに取り出すとケータイを持っていた上司の一人の手を切りつける。 激しく血が出る。
「な・・・ 何しやが 」
 上司が手を押さえながら言ってる途中で部下は顔にナイフを刺す。
 刺された上司は動かなくなる。

 上司の一人は恐怖のあまり逃げ出す。
上司「・・・こんなことしてタダじゃ済まねえぞ、課長に 」
 部下は上司の首を切る。
 首から空気が抜けるような音がしながら倒れる。

 もう一人の上司は撒いたように感じて安堵していると前から部下が笑いながら来る。

部下「ゲヘゲヘゲヘ・・・」
上司「すま、 ごめんなさい。 もうなめた口聞きませんから許してください!」
部下「ゲヘへへへ・・・ 」

 部下は自分自身の首を切って倒れる。
 上司はその様子を見る。

「た、助かった、のか?
 あははははは 脅かしやがって! 結局死んでんじゃねえか!!」

 上司は笑っていると部下の首だけがわずかに動く。

 上司の背後からフラつきながら来る最初に切られた上司の男性。
「どうした? 大丈夫か?」
 頭の中を何かが這い、近寄ると目や口から虫の足のようなものが突き破る。



「ハ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」



 華南も悲鳴を聞くと社のビルに入って行く。


 上司は慌てて逃げていると華南は上司にぶつかりそうになるが避ける。
 上司は途中でよろけながらさらに逃げていく。

 天井から這っていた上司の生首は飛んで華南の腕に噛みつく。
「!!」
 華南は引きはがそうとするとまわりから虫の足を生やした部下の生首と寄生された上司が来る。



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


〔 頭虫 〕

生物の頭部に寄生する妖
脳の養分を吸い動きをコントロールする
養分が吸い尽くすと首を噛み切って胴体と分離、個体によっては口から出る、または首から足を這わせて行動をする


(妖の書 イメージ:斉藤 作)

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



 華南が噛みついた生首を回したり殴ったりするが離れず、生首の額を刀で刺して振り払う。
 飛ばされた生首は顔が変形したり額が二つに割れるが動き続ける。


 頭虫の一体は最後の力で口から出て華南に向かって飛んで行くが華南に切られて黒い霧状に消滅する。


  最後の生首を背負った頭虫を見つけると華南は切る。

「 ギャアーーーーー!!! 」

 頭虫は生首ごと消滅する寸前に首の声帯をいじって上司の男性が悲鳴にする。



「誰かいるのか!?」
 声を聞くと華南は急いで走り去る。
 警備員を連れて逃げていた上司の男は来る。

警備員「おかしいな、声は確かにこっちからしたんだが・・・」
上司「そういえばさっき、見かけないやつが 」

 二人は廊下やオフィスで首が無くなって倒れている遺体を見つける。

「!!」
  上司の男はひどい恐怖を感じる。


 翌日、新聞やテレビのニュースに[ 男性3人 謎の変死体 ]という内容。
 目撃した警備員はインタビューを受けている。

 病院・精神科、上司の男はベッドにいる。
 脳裏には妖に会ったときの記憶。


「助けて~~~~~   殺される~~~~~~~~~!!!  」





 華南は人通りのない道を歩き町を去っていく。



[報告書]
怪異調査協会本部宛

________社の妖を討伐

溝口 華南

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