祓え 溝口華南

斉藤 延廣

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3章 妖の使いと死の呪い

23話

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『 あなたの声が聞きたい 』



 町の中で二人のカップルが公園のベンチに座っている。

男性(シーモン)「アリーシア、かわいいよ。」
女性(アリーシア)「え・・・? あ、ありがとう。」
シーモン「好きだよ。」
 キスしようとするとアリーシアは先手を打ってさらに濃厚にキスをし返す。

シーモン「?」
アリーシア「ちょっと恥ずかしいけど、私もこれくらい好き!」

シーモン「そうだ、今度 結婚式をしよう。 これでいつまでも一緒にいられるね。」
アリーシア「うん。」



 数週間後、町の病院。
 ベッドで寝そべるアリーシアを見て泣きじゃくるシーモン。

シーモン「そんな・・・、 どうしてだよ・・・ アリーシア!!」
医者「申し訳ありません、見つけた時にはすでに 末期症状 でした。」





 数年後、シーモンは壊れたように泣き、家の中や庭は荒れまくっている。
「アリーシア~・・・・・・」

 窓の外からダークマンは覗くとマントの片方を開き、黒い影が出てくる。
 影は横たわるシーモンの耳に入る。










「          狭くて苦しいの、私をここから出して            」










 幻聴を聞く。
「!! アリーシアの声!?」


 家を飛び出すと墓場に来てスコップで掘り起こす。


「狭いよね、苦しいよね、 いま自由にしてあげるからね。」



 バラバラになった遺骨を拾い上げると別の場所に移し、並べると魔方陣のようなものを書く。
 シーモンは祈り 手を広げると魔方陣は光り、ある人物が召喚される。

「あ・・・・・・、 アリーシア・・・」
 アリーシアは野獣のようにうなり、見た目は変わらないがゾンビのような感じ。
「会えて嬉しいよ。」
 アリーシアはシーモンに抱きついて何かをする。

「・・・はっはっはっはっはっはっ・・・・・・」





 数年後、茂みの中をかきわけて進む五人の男達。
「この先の町 出るんだって。 楽しみだな。」
「なあ やっぱり怖えよ。 もうやめようぜ。」
「どうってことねえよ。 特ダネ取れりゃテレビ局に送って儲けになるんだ。」

 制止も聞かずにさらに進む。

「なあみんな 」


 振り返るが誰もいない。

「おい、みんなどうしたんだよ!?
 悪ふざけはやめてくれよ。」

 叫ぶが返事はない。

「頼むから出てきてくれよ!
 そうだ、迷ってもいいようにロープを 」
 たぐり寄せるが途中で切れている。
「?」



「  ―――――――――――――――――――――― !!!  」

 男に向かって何かが寄ってくる。
「お前は何だ !?」
 慌てて十字架を突き出す。
「ここから去れ!!」
 何者かは十字架を奪うと バリボリ と音を立てる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・   !!!  」





 さらに数年後、現在。
 茂みの中を行く華南とメタモ。

メタモ「ここを抜けたら町だって、なんだってこんなところを。」 気味悪すぎ
華南「内容では地図からも消滅しているとも書いていた。」

 途中で何かを気にしてメタモは立ち止まるがすぐに去っていく。
 そこには木についた黒い痕。


 茂みを抜けると町の中。

メタモ「茂みの中じゃわからなかったけど、本当に 日 もぜんぜん差してこない。」
華南「ここに来るまでに、人にも会わなかったな。」



 華南とメタモは手分けして探る。

 場所によっては壁に手の跡がついている。
 ほかの場所では植え込みの中に伸びる何か。

華南「・・・・・・」
 ヤツデかと思ったら違う。


 メタモは民家の犬小屋を見つける。
 中から鎖を引っ張り出すが何も繋がれてなくて首輪だけ。
「・・・・・・。」



 華南は民家の中に人の影を見る。
 その姿は二人が言い争っているよう。

 中に入り 人影が見えたリビングに来る。
「!!」
 二人は着ているものはそのままで白骨化している。

「華南?」
 あとからメタモも入ってきて扉を勢いよく閉めるとぐらついた後で白骨は倒れてバラバラになる。
華南「驚くべきことだ。 ここには・・・・・・






 生きている人が誰もいない・・・・・・」



「  アアァァァ・・・・・・!!!  」


 二人は外でうなり声を聞く。



 声のする方へ行くとふらつく女性(アリーシア)。

華南「・・・・・・。」 メタモ「・・・・・・。」

 アリーシアは荒い息を吐きながら二人を見る。

メタモ「妖がついてるの?」
華南「いや、また何か別の 」

 アリーシアは二人に襲いかかる。

アリーシアの突進を避けて華南は刀で切る。 しかし刃は通らずに止まる。
「!?」
 アリーシアに弾かれて振り飛ばされる。

 メタモは手をライフルに変えて遠くから撃つが弾は通らない。

 華南は火の玉、メタモは手を斧にして叩くが効かない。

華南「なんて硬いんだ。」
メタモ「まるで鋼鉄人形だよ。」


「 ―――――――――――――!!! 」

 アリーシアは咆哮をあげて華南とメタモに襲いかかる。



 戦いの最中に割って入る。

華南「そこをどけ!」
シーモン「アリーシアを傷つけるな!
 オレはようやくまた取り戻すことができたんだ、もう大事なものを奪われるわけにはいかない。」

 アリーシアを連れて去ろうとすると華南は追いかけようとする。
シーモン「さっさとここから消えるんだ、大変なことになる前にな。」

 メタモは急にそっぽ向いて液体になって去っていく。
華南「おいメタモ、どこに行く?」


 メタモは液体から体育座りの体勢になり複雑な表情。

華南「どうした? らしくないぞ。」
メタモ「分かるんだ、あいつの気持ち。
 アタシも大事な人を奪われたから。」
華南「・・・いまのメタモならわかるはずだ。 どんなに相手のためを思ってやったところで失われたものは戻ってこない。
 自分が不幸だからって、他を不幸にしていいことにはならないんだ。」
メタモ「そんなこと! 」
 胸のポケットに手を当てる。
華南「私もかつて共に戦い、共にいようと誓い合った人がいた。
 だがそれを妖に、 黒いあいつ に奪われてしまった。
 だけど誓ったんだ、犠牲になったみんなの分まで生きてやるんだと。」
メタモ「なんか・・・・・・、 似てるんだね。」

華南「それにしてもほかの人があんな感じで。」
メタモ「あの二人が関係してるってこと?」
華南「もう少し調べてみよう。」


シーモン「ヒドいことするやつらもいるもんだ。 大丈夫かいアリーシア?」

 アリーシアはシーモンを抱くと何かする。

シーモン「もう、くすぐったいよ。」


 町の中を探索する華南。

 足元に何かが落ちていて拾う。


“AM”


 破れた布切れに血で書かれていて、あたりを見回す。
「AM、朝? ・・・時間なんて分からないな。」


 さらに探っていると白い布切れが何かに引っかかっている。
 華南は取ると引っかかった何かも取れて落下すると潰れる。
「!! ・・・・・・。」


“RE”


「RE・・・、くり返し?」


 町の中にある墓場に来ると一角に違和感。
 華南はその場に来ると掘り起こされた跡と空になった棺桶。


[ Aliecia ]
[ 1969~1990 ]
[ Död i leukemi ]
(訳:白血病により死去)


「まさか・・・・・・!!」



 メタモも探索中。


「!!」
 木に引っかかって落ちた布切れ、風に飛んで来た布切れが顔につく。
「ああもうなに!?」
 顔についた布切れを地面に叩きつけそうになると。
「これ・・・・・・、 血?」

 赤く滲んでいることに気づき足で踏んでいた布切れも合わせて三枚広がる。


“V” “I” “P”


「VIP? 特別って何が?」


「 ――――――――――――――――――――――――!!! 」

 何者かが勢いよく走ってくる。
 しかしアリーシアとは違う姿。

メタモ「なんか急にガタイがよくなって・・・」

 何者かはメタモに襲いかかり、布切れは踏みつけられる。


メタモ「華南~~!!」

 華南と合流する。

華南「なんだその慌てようは?」
メタモ「あ、その布切れ。 さっき同じようなものが落ちてたんだけど、血でそれぞれ書いてあって、V・I・P って。」
華南「これには AM と RE と。 」
メタモ「それだけじゃないんだよ! なんかあの野獣女とは違う何かが。」

 二人の前にやってくる存在(ドッペル6号)。

華南「またか、いまこいつの相手してる場合じゃないのに!」
メタモ「華南も鍛えたらこうなるの?」
華南「のん気なこと言ってる場合か。」

 ドッペル6号の攻撃で布切れは飛んでいく。
 メタモは液状になって攻撃するがそれも弾き返される。


 攻撃を避けながら別の場所に来ると再びアリーシアと遭遇。
 血のついた布切れをむさぼっていてよく見ると血の部分を主に吸っている。

「――――――――――・・・・・・」

 華南は今までに見つけた文字を頭の中で並べ替える。
「あれは、もしかすると・・・・・・」



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


〔 ヴァンパイア ( VAMPIRE ) 〕

生き血を吸って生きる妖
多くは不死身とされている
生まれながらのものもいれば死した人間が特殊な術によりヴァンパイアとして蘇ったものもいる


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



 アリーシアは口を開けて襲いかかり華南は刀を突き出して受け止めるがそれでも勢いは止まらない。

 メタモはドッペル6号と戦ってる最中に振り飛ばされる。
 転がった先で何かが倒れてきて干からびた状態で首を押さえる死体。
「・・・・・・。」
 ドッペル6号はメタモの片手と片足を持って振り回す。


 メタモは華南の近くに来る。 華南に向かって骨を持って襲いかかるシーモン。
 途中で骨を弾き落とす。

シーモン「アリーシアを悲しませるな!」
華南「何を言ってるんだ! あれがアリーシアなわけないだろ!
 アリーシアは死んだんだ!! 10年前に病でな!」
シーモン「嘘だ!! そんなもの信じられるか!」

 華南はシーモンの胸ぐらを掴む。

華南「目を覚ませ!!
 愛する者の為なら、それ以外はどうなってもいいのか!?」

 シーモンは払う。

シーモン「そんなもの決まってるだろ!
 俺にはアリーシアさえいればいい! それ以外のクズなんかいらない!!」
メタモ「こいつ・・・、どうかしてるよ。」


 アリーシアを見つけると近くに来る。

シーモン「そんなに悲しまないで、二人の恋路を邪魔するやつらはやっつけてしまおう。」

 アリーシアはシーモンの頭をつかむとぶん投げる。
 転げた勢いでシーモンは気絶。


 華南とメタモが戦ってる途中でドッペル6号も来る。
 二人の攻撃はどちらも効いていない。

 アリーシアが嚙みつこうと突進したときに華南とメタモはドッペル6号を突き飛ばす。 ドッペル6号の首に噛みつく。
「―――――――――――――――――――――――――!!!」

 よろけるドッペル6号の首に華南とメタモは攻撃すると首がちぎれそうになりながら倒れて消滅。

「!!」
 華南は激しい激痛に襲われてのたうつ。
 アリーシアが襲い掛かろうとするとメタモは銃で撃って動きを止める。
 その後で手をハンマーに変えてアリーシアを叩く。
 華南は遠くで何かを見つける。

メタモ「大丈夫、しっかりして。」
華南「あそこで何かが光ってる。」

 メタモは華南の肩を組み、起き上がるアリーシアを銃で足止め。

 華南とメタモは光る場所に来るとその後にシーモンもふらつきながら別の場所から来る。
足元には魔法陣があり中心に人骨。

シーモン「よ、よせ!!」
 アリーシアもやってきて襲い掛かると華南とメタモは頭蓋骨を上に投げて切る。

「――――――――――!!」
 アリーシアの頭の真ん中が赤く光り、やがて全身が真っ二つに光る。
「・・・・・・・・・・・・       !!!」
 やがてアリーシアの体は弾け飛びシーモンは目を伏せる。


 シーモンは足元に転がってきた半分に割れたアリーシアの頭蓋骨を抱えてキスを繰り返す。
「愛してるよ、愛してるよ、愛してるよ、愛してるよ・・・・・・   」





茂みを通って町を去る華南とメタモ。

メタモ「華南・・・、 本当に人間って・・・・・・。」
華南「・・・・・・。」




 夜の宿舎、脱衣所で服を脱ぐ華南。
 タオルを抱えるとメタモが勢いよくドアを開ける。

華南「!!」
メタモ「華南さあ、なにか隠してない?」
華南「なんのことか分からんな。」
 シャワー室に入っていく。
メタモ「・・・・・・・・・。」







 暗い場所で暗躍するダークマン。
 回りには複数の不気味に光る目。





 ‐  つづく  ‐
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