DEATH GAME ー宝玉争奪戦

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2章

25話 madder

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madderの配下"アレクサンダー"を無傷で撃破した和歌太郎

「よし、中央に向かおうかな。」

気合を入れ、村の中央へと向かおうとした時

--!!

空気を振動させるような爆発音が鳴り響いた。

「この音!?中央の方からだ。………何の音なんだ」

和歌太郎は五感を集中させる。すると、ヨーキの匂いが音のした方からしていた。

「もしかして先に戦いが始まったのかも」

 ヨーキの分析だとmadderは村人を操り、2人の強い配下のプレイヤーへ指示を出し、防衛、攻撃を行う後方支援タイプ。個人の武力は称号持ちといえど低いと見積もっている。
 故に本作戦のキモは、村人を即座に行動不明にし、指示系統を乱し、2人の配下プレイヤーを各個撃破すること

 ちなみに本作戦のターゲットである"madder"への襲撃は、どちらかが配下プレイヤーを倒せない場合も考慮して、先に倒した方が向かう事になっていた。

 和歌太郎は先に着いたであろうヨーキに早く合流するため、急いで村の中央へと移動する。

************

 ついに和歌太郎はヨーキの匂いがする方、村の中央部に辿り着いた。村の中央部は木柵で囲われた広場になっている。
広場の中央には家屋があるのだが、今は倒壊している。

(えっ……女性?)

 その倒壊した家屋の残骸跡に赤縁の眼鏡を掛けた小柄な女性が優雅に椅子に座り、足組みをしている。
 服装は黒のパンツタイプのレディーススーツ。ロングの赤のコートを肩に羽織っている。

「あら、新手のようね」

女性が表情を一切変えず、和歌太郎の方を一瞥して呟く。

(え!?どういうこと!?「あっ!ヨーキ!」

和歌太郎はこの場には不似合いな女性の姿に気を取られるが、ヨーキの姿を見つけ、そちらへと近づいていく。

「来たか。この女が《鮮血の姫王》"matter"だぜ」

「え!?この女性が!?ちなみにその傷は?」

先に来ていたヨーキの上着は破れ落ち、軽い火傷を負っていた。

「家は囮で爆弾が仕掛けられていたんだ。途中で異変に気付いて逃げたが、少しだけ喰らってしまった」

和歌太郎が聞いた先程の轟音は爆発の音だったらしい。
madderがいると思われた場所は、罠であったのだ。

「無事で良かったよ。でも、中々なことするね」

和歌太郎は視線を椅子に悠然とす"madder"に向ける。
その見た目からは即死級の爆発の罠を仕掛けるようには見えない。

(とりあえずは鑑定だ。)

和歌太郎はmadderに鑑定を試みる。
出てきた情報は事前にヨーキから聴いていた通りであった。
種族は人族、名前はmadder、そして、称号という欄があり"鮮血の姫王"と載っていた。

「人の情報を見るなんて無粋ね。私に何かよう?」

鈴を転がすような澄んだ声が響く。
無表情だが瞳はしっかりと和歌太郎とヨーキを観察している。

「えーと、君が持っている宝玉を貰えないかな。正直手荒な真似はしたくない」

和歌太郎がmadderに対して提案する。
その言葉から和歌太郎の無駄な争いをしたくないという優しさが滲んでいる。
しかし、そこでmadderの表情に変化が現れた。

「やはり宝玉というわけね。それは無理。あなた達を殺すしかないみたいね」

淡々と話しつつも、眼鏡の奥の瞳に凍てつく殺意が宿る。

「こっちは2人だ。村人達も配下のプレイヤーもいない。頼みの罠も不発。諦めろ。宝玉を渡せば何もしない。」

ヨーキがmadderの置かれている状況を説明し、降伏を促す。

「君にも引けない訳があるんだろうけど、無駄な戦いは避けたいんだ」

和歌太郎もヨーキの意見を援護する。
今のmadderは1人。
強みであった配下のプレイヤーと村人全員も今はいない。
個人で強いとしても1対2では勝ち目は限りなく薄い。

だがmadderに焦りの色は一切感じられない。
むしろどこか余裕を醸し出すmadder

「何を勘違いしてるのかしらね。あなた達程度が私に勝てると思ってるのかしら……"笑えるわね!"」

眼鏡の奥の目をガッと開いた。
その瞬間、地面から手が突き出て白い何かが這い出てきた。

「あれは何!?」

「魔物、いや、人形?」

地面から出てきたのは白いマネキンのような物体。
だが普通のマネキンとは違い、手の先がランスのように鋭く尖っている。

「"アロン"目の前の2人を殺しなさい」

madderの言葉により、白いマネキンの身体がヨーキと和歌太郎の方へとゆっくり向きーー

「なっ!?」

アロンと呼ばれた白いマネキンは一瞬にして和歌太郎の目前に迫った。
和歌太郎は反射的に剣を目の前に構える。

間一髪、アロンの鋭利な腕と和歌太郎の剣が交錯し、鍔迫り合い。
アロンの腕と和歌太郎の剣が拮抗する。

しかし、徐々に押される和歌太郎。
アロンの力が和歌太郎を上回っているのだ。

(ヤバい…吹き飛ばされーー)

和歌太郎は数メートル後ろへと吹き飛んだ。

「なっ!?何が……」

あまりに一瞬の出来事にヨーキは驚きで固まる。

「残念ね。私は誰にも負けられないのよ。例えこの世界で何人を人を殺めようともね」

吹き飛ばされ倒れる和歌太郎の視界にヨーキと同様の宝玉奪取のクエストが表示された。

ついに宝玉所持者madderとの戦いが始まった。
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