35 / 81
2章
34話 馬根 月
しおりを挟む村外の竹林まで吹き飛ばされ、フードが取れ、ついに露わになった黒衣の男"パイン"の相貌
その顔を見て固まるmadder。そしてポツリと言葉を溢す
「お前だったの…馬根 月…」
馬根 月
madderの人生を狂わせた原因
心の底から憎んだ人間
madderの恩人"さやえ"を殺した犯人であった。
多少の変化はしているが、薄ら生えた無精髭、低い鼻、たらこ唇などmadderの記憶にある馬根であった。
衝撃を受け、固まったmadderであったが、次の瞬間には一転、口角を三日月の如く吊り上げ、残忍な笑みを浮かべる。
「フフフフフフっ!笑いが止まらないわね。無期懲役にしか出来なかったあなたを殺せるなんてね!!」
今まで無表情で口数がすくなかったmadderが、口数が多くなり豹変。前髪を乱雑にかき上げる。
その変化に村の入り口で取り残されている和歌太郎とヨーキは呆然としていた。
「うわぁ…急にどうしたんだろう!」
若干引き気味で驚く和歌太郎と
「女はいくつも顔があるんだぜ」
まるで女はそんなもんだと飄々としているヨーキ
ちなみに二人は予測不能なmadderの動きのせいで作戦のタイミングを完全に見失っていた。
「それにしてもあの顔、神族ってのが関係してるのかな?」
ヨーキがパインの顔に疑問を持った。
パインの顔には生気がなく肌は異常に青白い
しかし、真紅の双眸は強い殺意を放っている。
「力の代償ってやつかもな……うん、様子が変だぞ!?」
ヨーキが"パイン"改め馬根の変化に気づく
「……ァル……ナァ…ドゥ…ル」
まるで呪文のようにブツブツと呟き始めた馬根
そして自らの肩を抱き、カタカタと震えだし、急いでフードを被る。
「あいつ様子が変だぜ!madder一旦離れろ!!」
ヨーキが後ろからmadderに叫ぶ
「あなた達は黙ってて!こいつは私が殺す!私が殺さないとダメなの!!」
madderはヨーキ言葉に耳を貸さない。
馬根に目を向けたまま動かない
「ダメだぜ。あいつ冷静さを失っているぜ」
「それってまずい……?」
「あぁ激マズだぜ!俺たちも参戦するぞ!」
和歌太郎とヨーキはmadder達がいる村の外の竹林へと駆け出す。
ーーだが一足遅かった。
馬根が再び動き出したのだ。
起き上がると同時に右手をmadderに突き出した。
触れれば破壊される即死の一撃
「避けて!!」
和歌太郎が叫ぶ!
だが馬根の眼前にいるmadderは表情を変えず動かない。
むしろ待っていたかのようにニヤリと笑い、突き出された右手を避けると同時に腕部分を掴み、背負い投げを放った。
脳天から地面に叩き下される馬根
あまりの威力に地面が陥没する。
(えっ!投げた……)
あまりに見事な一本背負いに足が止まる。
「アンタには聴きたい事あったけどその状態じゃ無理みたいね。だからアンタがあの人を殺したように私が殺してあげるわ!」
そういうとmadderは、倒れた馬根の足を掴み、そのまま上に振り上げ、下に叩き下ろした。それを何度も繰り返す。
馬根が地面に打ち付けられる音が繰り返し響く。
小柄で細身の女性が大の男をまるで人形の如く振り回す
(あれって死んでるんじゃ……)
全身を何度も地面に叩きつけらる馬根を見て、和歌太郎が生存を疑う。
「おい、止まるな和歌太郎。おそらくだがダメージはあまり通ってないはずだぜ。作戦通りあの黒衣を剥ぐんだ」
ヨーキが和歌太郎にゲキを飛ばす。
ちなみに作戦とは馬根の黒衣を剥ぐ事
あの黒衣に攻撃無効の効果があると踏んだヨーキによる作戦だ。
「うん、わかった!」
和歌太郎とヨーキが馬根の黒衣を剥ぐべき再び動き出す。
だがその時
ーーmadderの左手が破裂した。
「あっぁぁぁぁ!」
madderの悲鳴が辺りに響く。
馬根を放り出し、うずくまるmadder
馬根の足首を掴んでいた手が肘の部分まで失われていた。
大量に流れる血。
どうやら馬根の破壊の力は足でも可能だったのだ。
「madder!!」
和歌太郎がmadderの元へと行こうとする。
しかし
「和歌太郎!!後だ!」
ヨーキが短い言葉でmadderの元へ向かおうとする和歌太郎を止める。
「あいつの黒衣を剥ぐには今しかねぇ!!」
madderが放り出した馬根は、近くの竹に頭から激突し、ダメージなのか何なのかまだ起き上がっていない。
今がチャンスなんだとヨーキが和歌太郎へ言葉と共に鋭い視線を向ける。
「…くっ!…分かった!」
一瞬戸惑いを見せる和歌太郎だったが、すぐにヨーキの後を追い馬根の元へと向かう。
竹のもたれ掛かるように倒れる馬根。
一切動きはない。
「いくぜ!」
「うん!」
「「せーのっ!」」
和歌太郎とヨーキは決死の覚悟で馬根の黒衣に手をかけ、無理やり引き剥がしたー
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる