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3章
48話 神経衰弱
しおりを挟む室内の明かり暗転し、音も一切が遮断され、中央のホログラムの画面のみが光っている。
第1ゲーム"神経衰弱"
画面に大きく映し出された文字。
(神経衰弱?)
和歌太郎が疑問に思っていると画面の表示が切り替わった。
******
『神経衰弱』
各プレイヤーにナンバープレートが1枚与えられる。
ナンバープレートのナンバーは1~5の5種類、各2枚ずつ
○クリア条件
同じ数字のナンバープレートを1組揃え、チェックポイントに入る。
○リタイア条件
気絶、又は死亡
ゲーム終了時に未クリア
※ナンバープレートは胸に装着される。変更は不可。
※地図使用可能
*******
(数字を揃えるから神経衰弱ってわけだね。やっぱり戦い合わないとダメみたいだね。ま、こうなるんじゃ無いかとは思ったけど、本当に悪質だ。)
和歌太郎はこの展開を何となくだが読んでいた。
そして、それは参加した全プレイヤーも同じであった。
その証拠にどのプレイヤーも会話中一切として自身のスキルや経歴を真に語っていなかった。
表上のみの会話であったのだ。
(他のプレイヤーは皆称号持ち。おそらくかなり強い。だけど絶対に勝ち残る!)
今の和歌太郎に以前のような心の動揺は一切なく、確固たる決意を持っていた。
"開始まで10秒前"
開始までのカウントダウンが画面に表示される。
"9"
"8"
"7"
"6"
"5"
"4"
"3"
"2"
"1"
"転送を開始します。"
"神経衰弱開始"
和歌太郎の視界が一瞬白に染まり、次の瞬間には
「ここは……駐車場?」
和歌太郎のいたのは様々な自動車が点々と立ち並んでいる。全て停めると200台近く駐車できるほどの駐車場であった。
まさかの現在的な風景に呆気にとられる和歌太郎であったが、すぐに気を取り直し、自身の胸の部分、ナンバープレートに視線を向ける。
(俺の数字は4だね。ってことは4のナンバープレートを集める必要があるわけだね。よし、まずは地図を確認かな)
和歌太郎は地図を確認する。
(どこかの中小企業の敷地みたいだ)
地図を見ると、和歌太郎のいる広い駐車場が北に位置しており、駐車場の南側に隣接、地図では中央に大きな2階建の建物がある。
そして、その大きな建物の南西には3階建の建物。
駐車場から最も遠い、南には2回建のL字の建物がある。
また、地図の中央には中庭のようなトラックのロータリーがある。
(うーん、結構広いね。まずはここから見えてるし、あの大きな建物から行こうかな。)
和歌太郎は駐車場から見える2階建てのかなり大きい建物を目指すことに。
(それにしても場所が悪いね。嗅覚が全く役に立たない)
和歌太郎は五感を研ぎ澄まし、周囲の情報を探ろうとするが風上のため、優れた嗅覚を発揮できずにいた。
だが和歌太郎の場所は地図上で最も北に位置し、風上
それは他の嗅覚が鋭い獣人族のプレイヤーからは居場所がバレるということでもあった。
そして、不幸にも和歌太郎以外に獣人族のプレイヤーがいたようだ。
「くんくんくん。クセェっす。マジクセェっす!」
鼻をひくつかせながら現れたのは黄縁の四角い眼鏡をかけたチャラそうな男
「敵プレイヤー!?確か…君は……ポセイドン」
和歌太郎は覚えていた男の名はポセイドン
待合室では端の方でひっそりといた男である。
低身長ながらアスリートのような筋肉質な肉体
自衛隊の迷彩服に身を包み、右手には槍を持っている。
そして何より頭部に生えた犬耳
和歌太郎と同じ犬人族であった。
「ご名答っす!クセェ上にダセェ名前の和歌太郎君っすよね?」
「そうだけど、初対面で失礼じゃ無いかな」
和歌太郎はポセイドンの言にムッとしつつも、鑑定を実行する。
表示されたのは
【地震の主】ポセイドン/犬人族
(やはり称号持ち……)
現れたプレイヤー"ポセイドン"
彼も言わずと知れず称号持ちであった。
すると、何故かポセイドンが腹を抱えて笑い出した。
「グフフフフフッ!!やっぱヤベエっす!雑魚っす!マジ雑魚っす!」
「はぁ……もういいよ。君のナンバープレートは俺のとは違うみたいだし、俺はもう行くよ。」
ポセイドンの胸のナンバープレートは"1"
和歌太郎の"4"とは違っていた。
そのため和歌太郎は腹を抱えて笑うポセイドンを横眼に通り過ぎようとした。
しかし
和歌太郎の足は止まった。
止まりざるを得なかった。
「それ…なんの真似かな?」
和歌太郎の顔の前に槍の穂先が向けられていた。
和歌太郎が鋭い視線をポセイドンに向ける。
「称号も持ってない癖に生意気っすよ。その命もらうっす」
和歌太郎が称号を持っていない事はバレていた。
どうやらポセイドンは和歌太郎を逃すつもりはなく
ポセイドンの殺意が膨れ上がる。
「はぁ……仕方ないね。後悔しないでよ」
和歌太郎は肩を竦め、剣を異次元BOXより取り出した。
ーー始まって数分
和歌太郎とポセイドンの戦いが勃発した。
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