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「にーたままって~!!」
「エリュ。はやくはやく!!」
私はすくすくと育ち、もう3歳になっていた。
精霊にとって3年なんてほんの短い時間。
そして新しい名前を貰った。
といっても…元の名前とあんまり変わらないけどね。
エルーシア・ピルテーヌだって。
にー様はアルトニア・ピルテーヌって言うんだよ~。
にい達は…元気にしてるかな?
「ふにゃ!!」
その時私は石につまづき転んでしまった。
「ふぇぇん…いちゃいよぉ…」
「エリュ。だいじょーぶ?」
にー様はすぐに私の元へ駆け寄ってくれた。
「お嬢様。手当てをしましょう」
「てあて…」
メイドは私を抱え上げると館の中へ入っていった。
「あらあら。エル?どうしたの?」
「かーたま!!」
「お膝から血が出てるわよ?また転んじゃったの?」
「うにゅにゅ…いちゃいいちゃい」
「そうね。早く手当してあげて。そのあとわたくしの元へ連れてきてちょうだい」
「かしこまりました」
メイドは素早く私の手当てを終えると母様のところへ連れていってくれた。
「エル。いらっしゃい」
「かーたま~!!」
私は母様の膝に飛び乗った。
「エリュ!!ここにいた!!」
「にーたま!!」
にー様はソファによじ登ると私の手を握った。
「エリュ。いたいのなくなった?」
「うん!!にーたまありあと!!」
「どういたしまちて」
私達はまだ上手く言葉が言えない。
まぁ…双子だからなのか何となくは伝わるけどね。
その時私は素早く起き上がった。
何か…来る!!
「エル?どうしたの?」
「…くりゅ…ま…もの……ちがう…ひと?…ちがう…これは…どっち?…エリュ…?…エクシュカリバー…?」
…感覚を研ぎ澄ます…。
大丈夫…エルなら分かる。
ぴっ…と肌に線が入った。
「「「え…」」」
次々に皮膚が切れ…血が流れだした。
「いちゃ!!」
「早く!!お医者様を!!それと包帯!!」
「はいっ!!」
「エリュ。エリュ。だいじょーぶ。にーたまがいっしょにいる。だいじょーぶ」
痛い!!
何かが中から溢れる!!
これは…魔力?
体が…耐えきれてない…のかな?
私は放出する魔力を増やした。
するとそれ以上肌が切れることはなくなった。
よかった…。
でも…まだ痛い…それに…すっごく…だるい。
私はへたっとママにもたれかかった。
「…エル。大丈夫よ」
「かーたま…あにょ…ね」
その時扉が開き、医者がやってきた。
「奥様。どうされましたか」
「ヘンヴィ。エルの肌が何もしていないのに切れたのよ」
「何もしていない…?」
医者はぺたぺたと私の体を触ったあと傷口に薬を塗り、包帯で覆った。
「…おそらく魔力かと」
「魔力?」
「体から上手く余分な魔力を排出できなかったのでしょう。今は元の魔力より半分ほど減って落ち着いたようです」
「これは…どうしたらいいの?」
「魔道具をつけて吸収する魔力を抑えるか…体から排出するためにまだ魔力の入っていない魔法石を身につけるか…ですね」
「ヘンヴィ。ありがとう。やってみるわね」
…魔道具。
人間はすごいね。
精霊は何でも自分で出来るからそんな考え方はできないよ。
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