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Prologue Side/透 後編

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「それではライアンさん、お世話になりました。」

[こちらこそ本当に申し訳なかった、あんな事態になってしまって、もうあの実験は中止になったから安心してほしい。これから君の世界に帰れるまで少し大変だが、アリスがナビゲートするから気をつけて戻ってほしい。]

「まあ冒険だと思って楽しんで帰ります。では!」

『世界跳躍開始します。カウント開始5、4…』

 そして彼は自分の世界に戻るべく、次の世界に跳ぶのであった。
 そこで色々な冒険があったのだが、長くなるので別の機会に…。



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 時は戻って、昭和59年、透と桜が魔法陣に飲み込まれる数分前。

『マスター、またあの子があとついて来ますよ~、ストーカーですかね? またまいちゃいますか?』

「なんかこの一年でかなり饒舌になりましたねアリスさんや。ん~困ったなあ、買い物もできないじゃん。」

『エッチな本も買えないですしね!』

「おい! 確かにネットがないと本に頼るしか……て何言わせるんだよ、お前は。」

 透がこの世界に戻ってきてはや一年が過ぎていた、その間AIは確実に色々学習したいた。ほぼ人間と同じように会話ができるようになっていた。
 透の方はこの時代、家は貧乏だったのだが、チート化したため、色々な事を駆使し、中流よりも上の暮らしをしていた。
 勉強も元々はかなり昔に習っていた事だがプロセッサーのおかげで記憶のアクセスが楽になり忘れていたことさえ思い出すことができていた。おかげで授業なんか聞いていなくても余裕で満点を取れていた。

「そのおかげで、桜がくっついて来てんだろうけどやっかいだな。」

 実は前の高校生の時は桜はクラスで高嶺の花、文武両道、容姿端麗。本当に憧れの的だったので接点がなかったのだ。
 それが今回は、なぜか席は隣で、俺は学年2位、彼女は3位、新しく買った家は彼女の家の隣だったりとやたら接触することとなっていた。

「まったくクラスの男どもは敵対の眼を向けてくるし、女子はなんかうるさいし困ったもんだ。」

『うれしい悲鳴ってやつですね、ふふふ。モテ期ですよそれ!』

「どこから覚えたそれ!この時代にまだその言葉はないぞ~気を付けろ!」

『大丈夫です。この世界の人間で私の声を聞けるのはまだマスターだけですし、体内のナノマシンズを起動させたのはマスターの家族だけですから。』

 そう、体内のナノマシンズは、疑似プロセッサーを作ることができ、要は洗脳のような状態にする事ができた。透の両親は、透曰くバカで人の意見を聞かないギャンブル好きの甲斐性なしだった。そこをナノマシンズの力で、ある程度お金を作り(作り方はナイショだが)それを元手に真面目に働いて増やしていくようにさせたのだった。

「まあもうちょっとしたら適当に加速して帰ろう。」

『マスター!緊急事態です、このあたりの空間が解析できない何かの力で壊されようとしています。』

「なんだって? また違う世界からの跳躍でも起こるのか?」

『違います、世界跳躍ジャンプではなく別のなにかです。もしかするとこの次元ではないどこかに飛ばされるかもしれません! よくわからない? 何これアルゴリズムが解析できないよ、マスター!』

「突然、素に戻ったぞ! アリス、どこだどこが臨界点だ?」

『あっ! 桜ちゃんのところで崩壊が始まりました、飲み込まれます!』

「まずい!」

 透はそう言うとすぐ、加速しマッハのスピードで桜の側に行き手を出した。
 桜は少し躊躇したようだが、すぐ透の手を掴み、透も桜の腕を掴んだ。
 透は、2トントラックも持ち上げれる力があるが持ち上がるどころか、透までも亀裂に呑み込まれて行くのだった。

「マズいマズい! ナノマシンズにネットを展開させてくれ! アリス!」

『ダメです! ナノマシンズ制御不能、と言うか、この辺りにナノマシンズがいません!』

「マジかよ! どこに行くんだ? クソっ!」

 透と桜は白いチューブのような中を下に落ちていくのであった……。

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