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婚約破棄のその後
その後で2
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「見張りはいないのかしら?」
暫しの抱擁の後、直ぐに私達は行動を始めた。いつもの様に、肌の露出の多い衣装の私に、ロダンは上衣を着せかけたが、それはすぐに突き返した。
「夜は冷える。君の服は露出が多すぎる。病気にでもなったらどうするんだ」
憮然としつつも気遣う彼に、私は思いっきり顔を顰めてみせる。
「顔色が悪い人が、何言ってるのよ。貴方が倒れたら、私やソフィラじゃ背負えないんだから、風邪なんて引いたら絶対に承知しないから」
砕けた口調に、何時もの揶揄いではなく本気の心配だと伝わったようで、大人しく上衣を着直す。彼自身、自身の体が脆い事を知っている。
こういう危機的状況なら、前に立って同い年の女の子二人を守りたいのかも知れないが、それは彼の場合い現実的ではない。酷く歯がゆそうにしながらも、最善の選択を選ぶしかない。万に一つも倒れてお荷物になる訳にはいかない。
まあ、もし、本当にロダンが倒れたら、私達は二人がかりでだって抱えて進む。
「それよりも見張りよ。武装した兵士まで用意されて居たのに、どうしてこんなに手薄なのかしら」
「……あれは君の仕込みじゃないのか?」
王都内の隠し通路に入り込めた事で、少し声量を上げる。
「違うわ。ソフィラが怖がるかと思って、腕の立つ従者が揃うようにして置いたのだけど……じゃああれは誰かの介入?」
「一応確認するけど、あの婚約破棄の台本も誰かの手が入って居たりは?」
その問いに、こくりと頷く。
「私も気に成っていたの。微妙にだけど台詞が変わっていたわ。もっと私にキツイ印象が着くように書かせたのだけど、所々表現が弱くなっていた」
「マーガレット」
「祝宴では剣まで突き付けているのに、妙な所で私への当りが弱いの。介入した人間の思惑が全く読めないわ……」
「マーガレット」
「ひょっとして、手を加えた人間が複数、なにかしら?」
私達の今後に関わる事の為、必死に考えを巡らせる私にロダンが呼びかける。
「そこは私のアドリブだ」
「え、何故そんなことを?」
せっかく娯楽に敏感な貴族達が喜びそうな、劇的なシナリオを書かせたのに。
「いや、演技で、ただ示された文章を読んで居るのだとしても、好きな女性の名前に婚約破棄とは言いたくなかった……」
「……そんな真っ正直に言われると照れるから止めてくださる?」
「あ、あのね」
暗く狭い通路を、迷わない様にとロダンの服の裾を握って歩いて居たソフィラがやっとというように口を開く。
「やっつけたよ!」
「なにを?」
私とロダンの声が重なる。
「見張りとか! いろいろ!」
ふんす、とどこか誇らしそうにソフィラが胸を張る。
私達は顔を見合わせる。
「……詳しくは、予定の隠れ家に着いてからにしましょう」
暫しの抱擁の後、直ぐに私達は行動を始めた。いつもの様に、肌の露出の多い衣装の私に、ロダンは上衣を着せかけたが、それはすぐに突き返した。
「夜は冷える。君の服は露出が多すぎる。病気にでもなったらどうするんだ」
憮然としつつも気遣う彼に、私は思いっきり顔を顰めてみせる。
「顔色が悪い人が、何言ってるのよ。貴方が倒れたら、私やソフィラじゃ背負えないんだから、風邪なんて引いたら絶対に承知しないから」
砕けた口調に、何時もの揶揄いではなく本気の心配だと伝わったようで、大人しく上衣を着直す。彼自身、自身の体が脆い事を知っている。
こういう危機的状況なら、前に立って同い年の女の子二人を守りたいのかも知れないが、それは彼の場合い現実的ではない。酷く歯がゆそうにしながらも、最善の選択を選ぶしかない。万に一つも倒れてお荷物になる訳にはいかない。
まあ、もし、本当にロダンが倒れたら、私達は二人がかりでだって抱えて進む。
「それよりも見張りよ。武装した兵士まで用意されて居たのに、どうしてこんなに手薄なのかしら」
「……あれは君の仕込みじゃないのか?」
王都内の隠し通路に入り込めた事で、少し声量を上げる。
「違うわ。ソフィラが怖がるかと思って、腕の立つ従者が揃うようにして置いたのだけど……じゃああれは誰かの介入?」
「一応確認するけど、あの婚約破棄の台本も誰かの手が入って居たりは?」
その問いに、こくりと頷く。
「私も気に成っていたの。微妙にだけど台詞が変わっていたわ。もっと私にキツイ印象が着くように書かせたのだけど、所々表現が弱くなっていた」
「マーガレット」
「祝宴では剣まで突き付けているのに、妙な所で私への当りが弱いの。介入した人間の思惑が全く読めないわ……」
「マーガレット」
「ひょっとして、手を加えた人間が複数、なにかしら?」
私達の今後に関わる事の為、必死に考えを巡らせる私にロダンが呼びかける。
「そこは私のアドリブだ」
「え、何故そんなことを?」
せっかく娯楽に敏感な貴族達が喜びそうな、劇的なシナリオを書かせたのに。
「いや、演技で、ただ示された文章を読んで居るのだとしても、好きな女性の名前に婚約破棄とは言いたくなかった……」
「……そんな真っ正直に言われると照れるから止めてくださる?」
「あ、あのね」
暗く狭い通路を、迷わない様にとロダンの服の裾を握って歩いて居たソフィラがやっとというように口を開く。
「やっつけたよ!」
「なにを?」
私とロダンの声が重なる。
「見張りとか! いろいろ!」
ふんす、とどこか誇らしそうにソフィラが胸を張る。
私達は顔を見合わせる。
「……詳しくは、予定の隠れ家に着いてからにしましょう」
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