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2 学園編
73 公爵令嬢 アリア・デュポネ
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今日もメイド二人掛かりで立派な縦ロールを作り上げる。
ライバルたちを出し抜くためには、努力を惜しんではいられない。
長いこと真剣に美しさを追求した結果、成長とともにますます美しさを増してきた自分の姿に酔いしれる今日この頃ではあるが、王太子殿下の美しいスカイブルーの瞳はどうやら節穴らしい。
出会ってから何年たっても私の美しさに気がついた気配すらないどころか。
あの女‥‥‥インチキ聖女のヒロイン気取り、ステラ・ディライトに夢中になっているという噂すらある。
ちょっと、ご趣味がおかしいのではないのかしら‥‥‥アリアはうっかり眉を顰めそうになり、美容のために慌てて表情を戻した。眉間にシワが寄ってはいけない。
「将来、王妃となるために、常に美しくあるように心がけよ」
父からの指示はまるで呪いのようにアリアの心に染み込んでいた。
デュポネ家は3大公爵家の一角ではあるが、ここ何代かは王妃を輩出しておらず、王妃になり次代の王を産むことがアリアに期待されていた。
王妃の懐妊の噂が流れた瞬間に、妻だけではなく愛人たちをなんとか妊娠させ、王子にあてがうための娘を作ろうと父が必死になった、ということは口さがない噂によりアリアの耳にまで入っていた。
愛人たちが産んだ娘の中で一番美しかったアリアは正妻の子として引き取られ、公女として育てられた。
実の母は、アリアを産んだ褒美として多額の褒美をもらい、二度と王都に足を踏み入れない約束をして、ホクホクしながら去っていったとか。
メイドたちが聞こえよがしに噂する声は幼いアリアの心を傷つけたが、同時に、「母」という名の美しい人が自分に対して思いやりのある態度を一度たりともとったことがない理由をさとり、妙に納得したような気分になったこともはっきりを覚えている。
貴族なんてそんなもんだと頭では理解していたので。
「必ず王妃になり、王太子を産むのだ。お前はそれだけの価値のある人間なのだ。」
幼い頃から繰り返し繰り返し教え込まれ、自分が将来の王妃として生まれついたことに疑いを持つことすらなかった。物心ついた時には、将来必ず王太子妃に、そして王妃になり将来の王を産むのは自分であることが当然であると知っていた。
王太子の立太子とともに、婚約者候補が指名され、当然自分が婚約者になるものと思っていたが、初めて婚約者候補の集まるお茶会に行った時は心から驚く羽目になった。
なんと、婚約者候補は自分だけではなかったのだ。
婚約者候補とは形式的なもので自分が本物の婚約者であることを疑ってすらいなかったのに、他に4人も候補がいるなんて‥‥‥
しかも、ルシアナとリーラはアリアの目から見ても美しかった。
もしかしたら、アリアよりも美しいかもしれない。
そんなはずはないのだが、人によってはそう感じる人もいるかもしれないと、不安になった。
ますます美容の追求に身が入る。
万に一つも王太子に選ばれないようなことがあってはならない。
その時は、良くて政略結婚悪ければどこかの金持ちの後添いか妾に出されるか‥‥あの父ならやりかねない。
化粧で不安を塗りこめるように、美容と化粧にのめりこんだ。
作り込み過ぎじゃないの、との声も聞こえてきたが、妬んでいるだけだろうと相手にもしなかった。
ルシアナの楚々とした美しさやリーラの天使のような可愛らしさの前には、作り込み過ぎたアリアの容姿はちょっとやり過ぎにしか見えないが、もう誰の声も聞こえなくなってしまっていた。
妬んでいるからに違いない、そうとしか思えなくなってしまっていた。
王妃になれなければ生まれてきた意味がない、生きている価値すらない、と幼い頃から刷り込まれ続け、王妃になることはアリアの信念にも近い思い込みになっていった。
毎月開催される王太子のお茶会でのハルヴァートは礼儀正しく、全員に公平に話しかけるのが歯がゆくてならない。
私だけに微笑みかけ、私だけに話しかけるべきなのに。
なぜ今更平等な振りなどなさっているのかしら。イライラする。
早く婚約者として正式に指名してほしい。
その望みはいつしか王太子と婚約者候補の全員への苛立ちに代わり始めていた。
王族の結婚に感情は不要。
お互いに愛情などないに決まっているではないか。
家門のために王太子妃になることは絶対に必要なこと。
王太子は私を王妃にするために存在しているのだから、早く決めてほしい。
そうすれば、父にこれ以上叱られなくて済むようになるのに。
よくやったと褒めてくださるかもしれない。
王太子の儀礼的な微笑みに対し、うっとりと頬を染めるルシアナも、関心がなさげなリーラも、人形のように形式的な笑みを浮かべるタチアナも嫌い。
エリザベスは身分が低過ぎて同じ空気を吸うことすらイヤ。
アリアはお茶会の度に苛立ちが募るようになっていった。
ライバルたちを出し抜くためには、努力を惜しんではいられない。
長いこと真剣に美しさを追求した結果、成長とともにますます美しさを増してきた自分の姿に酔いしれる今日この頃ではあるが、王太子殿下の美しいスカイブルーの瞳はどうやら節穴らしい。
出会ってから何年たっても私の美しさに気がついた気配すらないどころか。
あの女‥‥‥インチキ聖女のヒロイン気取り、ステラ・ディライトに夢中になっているという噂すらある。
ちょっと、ご趣味がおかしいのではないのかしら‥‥‥アリアはうっかり眉を顰めそうになり、美容のために慌てて表情を戻した。眉間にシワが寄ってはいけない。
「将来、王妃となるために、常に美しくあるように心がけよ」
父からの指示はまるで呪いのようにアリアの心に染み込んでいた。
デュポネ家は3大公爵家の一角ではあるが、ここ何代かは王妃を輩出しておらず、王妃になり次代の王を産むことがアリアに期待されていた。
王妃の懐妊の噂が流れた瞬間に、妻だけではなく愛人たちをなんとか妊娠させ、王子にあてがうための娘を作ろうと父が必死になった、ということは口さがない噂によりアリアの耳にまで入っていた。
愛人たちが産んだ娘の中で一番美しかったアリアは正妻の子として引き取られ、公女として育てられた。
実の母は、アリアを産んだ褒美として多額の褒美をもらい、二度と王都に足を踏み入れない約束をして、ホクホクしながら去っていったとか。
メイドたちが聞こえよがしに噂する声は幼いアリアの心を傷つけたが、同時に、「母」という名の美しい人が自分に対して思いやりのある態度を一度たりともとったことがない理由をさとり、妙に納得したような気分になったこともはっきりを覚えている。
貴族なんてそんなもんだと頭では理解していたので。
「必ず王妃になり、王太子を産むのだ。お前はそれだけの価値のある人間なのだ。」
幼い頃から繰り返し繰り返し教え込まれ、自分が将来の王妃として生まれついたことに疑いを持つことすらなかった。物心ついた時には、将来必ず王太子妃に、そして王妃になり将来の王を産むのは自分であることが当然であると知っていた。
王太子の立太子とともに、婚約者候補が指名され、当然自分が婚約者になるものと思っていたが、初めて婚約者候補の集まるお茶会に行った時は心から驚く羽目になった。
なんと、婚約者候補は自分だけではなかったのだ。
婚約者候補とは形式的なもので自分が本物の婚約者であることを疑ってすらいなかったのに、他に4人も候補がいるなんて‥‥‥
しかも、ルシアナとリーラはアリアの目から見ても美しかった。
もしかしたら、アリアよりも美しいかもしれない。
そんなはずはないのだが、人によってはそう感じる人もいるかもしれないと、不安になった。
ますます美容の追求に身が入る。
万に一つも王太子に選ばれないようなことがあってはならない。
その時は、良くて政略結婚悪ければどこかの金持ちの後添いか妾に出されるか‥‥あの父ならやりかねない。
化粧で不安を塗りこめるように、美容と化粧にのめりこんだ。
作り込み過ぎじゃないの、との声も聞こえてきたが、妬んでいるだけだろうと相手にもしなかった。
ルシアナの楚々とした美しさやリーラの天使のような可愛らしさの前には、作り込み過ぎたアリアの容姿はちょっとやり過ぎにしか見えないが、もう誰の声も聞こえなくなってしまっていた。
妬んでいるからに違いない、そうとしか思えなくなってしまっていた。
王妃になれなければ生まれてきた意味がない、生きている価値すらない、と幼い頃から刷り込まれ続け、王妃になることはアリアの信念にも近い思い込みになっていった。
毎月開催される王太子のお茶会でのハルヴァートは礼儀正しく、全員に公平に話しかけるのが歯がゆくてならない。
私だけに微笑みかけ、私だけに話しかけるべきなのに。
なぜ今更平等な振りなどなさっているのかしら。イライラする。
早く婚約者として正式に指名してほしい。
その望みはいつしか王太子と婚約者候補の全員への苛立ちに代わり始めていた。
王族の結婚に感情は不要。
お互いに愛情などないに決まっているではないか。
家門のために王太子妃になることは絶対に必要なこと。
王太子は私を王妃にするために存在しているのだから、早く決めてほしい。
そうすれば、父にこれ以上叱られなくて済むようになるのに。
よくやったと褒めてくださるかもしれない。
王太子の儀礼的な微笑みに対し、うっとりと頬を染めるルシアナも、関心がなさげなリーラも、人形のように形式的な笑みを浮かべるタチアナも嫌い。
エリザベスは身分が低過ぎて同じ空気を吸うことすらイヤ。
アリアはお茶会の度に苛立ちが募るようになっていった。
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