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2 学園編
75 うさばらしの現行犯
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ビリビリビリ
ステラの教科書を破り捨てる。
もう何冊破ってやったかわからない。
下賤の者は平気な顔をしている。
まるで少しも堪えていないように。腹が立つ。
昨夜も実家の父からいつになったら殿下の心を掴むことができるのか、という叱責と苛立ちを含んだ手紙に腹ただしさが増したところだ。
悔しい。
どれだけ努力しても殿下はこちらには目も向けてくれない。
ご趣味が悪いとわかっていても、腹ただしい。悔しい。
そして、胸の奥底に巣食うこのモヤモヤの正体がわかってしまったような気がする。
妬み。
私が見向きもされない殿下に追いかけ回されて、婚約者として扱われているステラを見ると腹が立つ。
しかも、それがまるで当然なことでもあるかのように受け止めている姿も腹ただしい。
一緒にいる義弟も美しく、ステラと並ぶと聖女と守護天使のようだとまで言われている。
勘違い甚だしい噂を否定すらしない態度にまたイライラする。
消えてなくなればいいのに。
その思いをついつい嫌がらせに向けてしまう。
気がつくとすぐ口をつく嫌味。
でも一番効果があるのは教科書を破ること。
物理的に破られた教科書を見ると、悪意が形になったようで、ステラにもっと強いダメージを与えられる気がする。
この間教科書を破ってやった時には一瞬傷ついたように瞳が揺らいだことに気が付いた。
もっともっと傷つけてやりたい。
私が嫌な思いをするのは全てステラのせい。
今は本気でそう思っている。
**********************************************************
「もういい加減にやめてあげてよ」
後ろから声がかかる。
「セオドア・ディライト‥‥‥」
口の中で名前を呟き振り向いた。
そこには、守護天使とまで噂されるほどの美貌の持ち主が悲しそうに立っていた。
濃い茶色の巻き毛が顔の周りを縁取り、何よりも目をひく淡いグリーンの瞳が悲しそうに潤んでいる。
教室の入り口には細身の体を制服に包んだステラの義弟が立ちすくんでいた。
その立ち姿の美しさまでが妬ましい。
(見られた‥‥‥)
現場を押さえられたのは初めてだ。
アリアの心臓は大きく不穏な音を立てる。
まずいかもしれない。1回でも問題だが、何回教科書を破り捨てたのかわからないほど、繰り返し嫌がらせをしてきている。
学校や親に伝えられたら、まずい。
アリアの背中を嫌な汗が伝った。
慌てて、教科書をスカートの下に隠す。でも隠しきれるわけがないのもどこかでわかっていた。
「どうしたのセオ?」
明るい声が後ろから聞こえる。
(本人まで来た)
アリアは小さく舌打ちした。
**********************************************************
ステラは教室の中にいるアリアと破れた教科書を見て一瞬で状況を理解した。
(あー‥‥‥いつもの嫌がらせね。)
セオドアを見ると心配そうにステラを気遣うように見つめている。
(キョーダイ、ありがと。私、頑張る)
ステラはセオドアに向かって小さく頷くと、アリアに向かい合った。
最初は笑い飛ばしてやれと思っていた。犯人もわかっている。浅はかすぎる。
でも教科書を破るなんて悪意そのもの。
少しずつ、少しずつ、心を蝕んでいく。一瞬一瞬楽しい瞬間が削られていくのだ。
繰り返される嫌がらせを笑っては済ませられなくなってきた。
これ以上、目の前にいるこの人のしたことを許す必要もなければ、なかったことにすることもできない。
超えてはいけない線をこの人はとっくに超えてしまったのだ。
でも、立ち向かうのは怖い。
悪意にこれ以上傷つけられたくない。
恐怖から心臓が飛び出してしまうのではないかと思うくらい大きな音を立てている。
でも、向き合わなくては。未来のために。
「アリア様、私の教科書を返していただけますか」
声の震えを抑え、やっと出てきた言葉は意外と平凡な言葉だった。
ステラの教科書を破り捨てる。
もう何冊破ってやったかわからない。
下賤の者は平気な顔をしている。
まるで少しも堪えていないように。腹が立つ。
昨夜も実家の父からいつになったら殿下の心を掴むことができるのか、という叱責と苛立ちを含んだ手紙に腹ただしさが増したところだ。
悔しい。
どれだけ努力しても殿下はこちらには目も向けてくれない。
ご趣味が悪いとわかっていても、腹ただしい。悔しい。
そして、胸の奥底に巣食うこのモヤモヤの正体がわかってしまったような気がする。
妬み。
私が見向きもされない殿下に追いかけ回されて、婚約者として扱われているステラを見ると腹が立つ。
しかも、それがまるで当然なことでもあるかのように受け止めている姿も腹ただしい。
一緒にいる義弟も美しく、ステラと並ぶと聖女と守護天使のようだとまで言われている。
勘違い甚だしい噂を否定すらしない態度にまたイライラする。
消えてなくなればいいのに。
その思いをついつい嫌がらせに向けてしまう。
気がつくとすぐ口をつく嫌味。
でも一番効果があるのは教科書を破ること。
物理的に破られた教科書を見ると、悪意が形になったようで、ステラにもっと強いダメージを与えられる気がする。
この間教科書を破ってやった時には一瞬傷ついたように瞳が揺らいだことに気が付いた。
もっともっと傷つけてやりたい。
私が嫌な思いをするのは全てステラのせい。
今は本気でそう思っている。
**********************************************************
「もういい加減にやめてあげてよ」
後ろから声がかかる。
「セオドア・ディライト‥‥‥」
口の中で名前を呟き振り向いた。
そこには、守護天使とまで噂されるほどの美貌の持ち主が悲しそうに立っていた。
濃い茶色の巻き毛が顔の周りを縁取り、何よりも目をひく淡いグリーンの瞳が悲しそうに潤んでいる。
教室の入り口には細身の体を制服に包んだステラの義弟が立ちすくんでいた。
その立ち姿の美しさまでが妬ましい。
(見られた‥‥‥)
現場を押さえられたのは初めてだ。
アリアの心臓は大きく不穏な音を立てる。
まずいかもしれない。1回でも問題だが、何回教科書を破り捨てたのかわからないほど、繰り返し嫌がらせをしてきている。
学校や親に伝えられたら、まずい。
アリアの背中を嫌な汗が伝った。
慌てて、教科書をスカートの下に隠す。でも隠しきれるわけがないのもどこかでわかっていた。
「どうしたのセオ?」
明るい声が後ろから聞こえる。
(本人まで来た)
アリアは小さく舌打ちした。
**********************************************************
ステラは教室の中にいるアリアと破れた教科書を見て一瞬で状況を理解した。
(あー‥‥‥いつもの嫌がらせね。)
セオドアを見ると心配そうにステラを気遣うように見つめている。
(キョーダイ、ありがと。私、頑張る)
ステラはセオドアに向かって小さく頷くと、アリアに向かい合った。
最初は笑い飛ばしてやれと思っていた。犯人もわかっている。浅はかすぎる。
でも教科書を破るなんて悪意そのもの。
少しずつ、少しずつ、心を蝕んでいく。一瞬一瞬楽しい瞬間が削られていくのだ。
繰り返される嫌がらせを笑っては済ませられなくなってきた。
これ以上、目の前にいるこの人のしたことを許す必要もなければ、なかったことにすることもできない。
超えてはいけない線をこの人はとっくに超えてしまったのだ。
でも、立ち向かうのは怖い。
悪意にこれ以上傷つけられたくない。
恐怖から心臓が飛び出してしまうのではないかと思うくらい大きな音を立てている。
でも、向き合わなくては。未来のために。
「アリア様、私の教科書を返していただけますか」
声の震えを抑え、やっと出てきた言葉は意外と平凡な言葉だった。
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