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3 ヒロインへの道
130 男好きな聖女
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高等部ではそれぞれ自分の興味に従って教科を選択するけど、朝だけは同じクラスの全員が揃って15分程度のホームルームを行っている。
「おはようございます」
ある日、いつも通りに朝の教室に入っていくと、教室がざわついた。
誰も私と目を合わせない。
なにがあったの?
教室の隅に固まっている女子生徒たちは私に棘のある視線を送ってきた。
隣の席の生徒に視線を送ると、ブンッと音が鳴るほどの勢いでそっぽを向く。
筋痛めるよ?いつも笑って挨拶してくれるのに。
まるで私の周りに空気でできた分厚い壁ができたみたい。
誰も私に近づかない。
ひそひそ声が聞こえてくるけれど、何を話しているのかはわからない。
でも私が噂の的になっているらしい。
しかも、悪い方の。
話しかけようとすると、相手は急に用事ができたり、宿題を慌ててやらなきやいけなくなったりするらしい。
私は、小さくため息をつくと教科書を広げた。
予習してるふりっと。
一つも内容が頭に入ってこない。
なんで、どうして?身に覚えがない。
私は思わず胸元のハル様の指輪を握りしめた。
少し遅れて教室に入ってきたセオドアは一瞬で教室内の空気に気がついたようだけど、知らん顔でいつも通り接してくれた。級長のロナルドもいつもどおり。
でもそれ以外の生徒は、皆、話しかけると気まずそうな笑みを浮かべ、そっと席を立ってしまった。
私何かした?なんで?
その答えは、放課後に分かった。
「ステラ、あなた、王太子殿下の婚約者として扱われながら、複数の男性をはべらせていい気になってると思っていたけど、とうとう婚約者のいる男性に手を出したんですって?」
アリアが意地悪そうな笑みを浮かべながら私に近寄ってきた。
アリアとはクラスメートとして必要最低限でしか話をしない。
お互いに関わらない約束をしたからだと思ってたけど、違うのかしら?
モリモリに盛られた縦ロールと厚い化粧でずずいっと迫られると、香水くさくて辟易とする。
「なんでも、先日ジェシカが婚約を解消した原因はあなたなんですって?」
腰に手を当てたアリアがぐいっと胸を反らせて、上から言い出した。
露出度の高いドレスからは胸が溢れそうだけど。
何アピールなのよ、それ。
「は?なんのこと?」ジェシカってどこの人?婚約?解消?
「家同士で幼い頃から結婚の約束をしていたジェシカとトビアスの破談の原因を作ったのはあなただって評判になってるけど?」
トビアスは剣術で同じクラスを取っている男爵家の子息だけど、特別な関係なんてない。
顔を合わせれは挨拶する程度の、ただのクラスメイトだ。
「いつも剣術の時間に馴れ馴れしく笑いかけて、気のあるそぶりばかりしてるって評判だったのよ。相変わらず品がないわね」
意味がわからない。
馴れ馴れしく笑いかける?気のあるそぶりばかりしてる?
身に覚えが全然ない。
タチアナ様に注意を受けて、男子生徒とは必要最低限にしか会話をしないようにしていた。
どの生徒とも、剣を渡してもらった時に、お礼を言う程度の付き合いしかないのに。
トビアスに特別に何かをしたことは当然ない。
「ふん、事実だから反論もできないってところかしらね」
「えっ?」
「全くハルヴァート様もこんな女のどこがいいのかしら。不思議でしょうがないわよ」
「事実無根です。なんのことかすらわからないぐらい」
「なんのことかすらわからないですって?あれだけ男をはべらせて何言ってるのよ」
「はべらせた?」
「セオドアってあんたのはとこなんでしょ。弟って嘘なんじゃない。それに、ジョセフとだっていつもイチャイチャしてるじゃない」
「イチャイチャ?」
「婚約者でもないのに距離が近すぎるのよ」
「友達なのに?」
「年頃の男女に友情なんてあるわけないでしょ」
「え、そーなの?」でも、友達なのに。
じゃあ、なんで同じクラスにいるのよ。
話すことすら罪悪なんだったら男女を同じクラスに入れなければいいじゃない。
「級長のロナルドだってあんたの前では犬みたいに言うこと聞いてるじゃない。全部あんたがたぶらかしてるからでしょ!」
「犬‥‥‥」確かに、犬っぽい。
ロナルドを見てると、言いつけを待っている犬みたいに感じることがある。
でも、ちょっと待って。
まさか、もしかして。
攻略対象者だから?
すっかり忘れてたけど、トビアスはともかく、セオドアもジョセフもロナルドもみんな攻略対象者じゃん。
強制力?これって強制力なの?
ハル様だって、攻略対象者‥‥‥
でも、誰のことも攻略してないけど。
これは一体どう考えたら?
それに、ゲーム的に考えれば今私は「ハルヴァートルート」に入ってるんじゃないの?
そうだとしたら、他の人たちは自動的にルート外になるんじゃないの?違うの??
まさか、ハーレムエンド?
それって意識しないと達成できないんじゃないの?
例えば全員攻略した後にもう一巡プレイするとか、そんなんじゃなかった?
いや、ハーレムエンドは現実にはあり得ないから。
でも、セオは家族だし、ジョセフもロナルドもいい友達だし、なんで今更そんなこと言われなきゃいけないんだろ?
「ちょっと、聞いてるの!!」
アリアの金切り声で、我に返った。
すっかりアリアの存在忘れてたわ。
「身に覚えがありません。反論のしようもありません」
「なんて生意気なの!調子に乗って!卑しい私生児の分際で!!」
アリアが激昂した。
「おやめなさい」
穏やかだが、有無を言わせないきりりとした声が教室の中に響いた。
「アリア、ご自分の立場をお忘れになったの?品がありませんよ」
「ルシアナ様、なぜここに‥‥‥」
アリアが動揺したように目を泳がせた。
「あなたが立場も忘れて教室で聖女様を怒鳴りつけているって知らせてくださった方がいらっしゃるのよ」
「‥‥‥」
アリアは悔しそうに唇を噛んだ。
「おやめなさい。それが事実であろうとなかろうと、あなたの出る幕ではありませんよ」
ルシアナ様は有無を言わせない微笑みをアリアに向けた。
「お久しぶりでございます。聖女様」
にっこりと微笑むとルシアナ様は私に膝を折った。
「おはようございます」
ある日、いつも通りに朝の教室に入っていくと、教室がざわついた。
誰も私と目を合わせない。
なにがあったの?
教室の隅に固まっている女子生徒たちは私に棘のある視線を送ってきた。
隣の席の生徒に視線を送ると、ブンッと音が鳴るほどの勢いでそっぽを向く。
筋痛めるよ?いつも笑って挨拶してくれるのに。
まるで私の周りに空気でできた分厚い壁ができたみたい。
誰も私に近づかない。
ひそひそ声が聞こえてくるけれど、何を話しているのかはわからない。
でも私が噂の的になっているらしい。
しかも、悪い方の。
話しかけようとすると、相手は急に用事ができたり、宿題を慌ててやらなきやいけなくなったりするらしい。
私は、小さくため息をつくと教科書を広げた。
予習してるふりっと。
一つも内容が頭に入ってこない。
なんで、どうして?身に覚えがない。
私は思わず胸元のハル様の指輪を握りしめた。
少し遅れて教室に入ってきたセオドアは一瞬で教室内の空気に気がついたようだけど、知らん顔でいつも通り接してくれた。級長のロナルドもいつもどおり。
でもそれ以外の生徒は、皆、話しかけると気まずそうな笑みを浮かべ、そっと席を立ってしまった。
私何かした?なんで?
その答えは、放課後に分かった。
「ステラ、あなた、王太子殿下の婚約者として扱われながら、複数の男性をはべらせていい気になってると思っていたけど、とうとう婚約者のいる男性に手を出したんですって?」
アリアが意地悪そうな笑みを浮かべながら私に近寄ってきた。
アリアとはクラスメートとして必要最低限でしか話をしない。
お互いに関わらない約束をしたからだと思ってたけど、違うのかしら?
モリモリに盛られた縦ロールと厚い化粧でずずいっと迫られると、香水くさくて辟易とする。
「なんでも、先日ジェシカが婚約を解消した原因はあなたなんですって?」
腰に手を当てたアリアがぐいっと胸を反らせて、上から言い出した。
露出度の高いドレスからは胸が溢れそうだけど。
何アピールなのよ、それ。
「は?なんのこと?」ジェシカってどこの人?婚約?解消?
「家同士で幼い頃から結婚の約束をしていたジェシカとトビアスの破談の原因を作ったのはあなただって評判になってるけど?」
トビアスは剣術で同じクラスを取っている男爵家の子息だけど、特別な関係なんてない。
顔を合わせれは挨拶する程度の、ただのクラスメイトだ。
「いつも剣術の時間に馴れ馴れしく笑いかけて、気のあるそぶりばかりしてるって評判だったのよ。相変わらず品がないわね」
意味がわからない。
馴れ馴れしく笑いかける?気のあるそぶりばかりしてる?
身に覚えが全然ない。
タチアナ様に注意を受けて、男子生徒とは必要最低限にしか会話をしないようにしていた。
どの生徒とも、剣を渡してもらった時に、お礼を言う程度の付き合いしかないのに。
トビアスに特別に何かをしたことは当然ない。
「ふん、事実だから反論もできないってところかしらね」
「えっ?」
「全くハルヴァート様もこんな女のどこがいいのかしら。不思議でしょうがないわよ」
「事実無根です。なんのことかすらわからないぐらい」
「なんのことかすらわからないですって?あれだけ男をはべらせて何言ってるのよ」
「はべらせた?」
「セオドアってあんたのはとこなんでしょ。弟って嘘なんじゃない。それに、ジョセフとだっていつもイチャイチャしてるじゃない」
「イチャイチャ?」
「婚約者でもないのに距離が近すぎるのよ」
「友達なのに?」
「年頃の男女に友情なんてあるわけないでしょ」
「え、そーなの?」でも、友達なのに。
じゃあ、なんで同じクラスにいるのよ。
話すことすら罪悪なんだったら男女を同じクラスに入れなければいいじゃない。
「級長のロナルドだってあんたの前では犬みたいに言うこと聞いてるじゃない。全部あんたがたぶらかしてるからでしょ!」
「犬‥‥‥」確かに、犬っぽい。
ロナルドを見てると、言いつけを待っている犬みたいに感じることがある。
でも、ちょっと待って。
まさか、もしかして。
攻略対象者だから?
すっかり忘れてたけど、トビアスはともかく、セオドアもジョセフもロナルドもみんな攻略対象者じゃん。
強制力?これって強制力なの?
ハル様だって、攻略対象者‥‥‥
でも、誰のことも攻略してないけど。
これは一体どう考えたら?
それに、ゲーム的に考えれば今私は「ハルヴァートルート」に入ってるんじゃないの?
そうだとしたら、他の人たちは自動的にルート外になるんじゃないの?違うの??
まさか、ハーレムエンド?
それって意識しないと達成できないんじゃないの?
例えば全員攻略した後にもう一巡プレイするとか、そんなんじゃなかった?
いや、ハーレムエンドは現実にはあり得ないから。
でも、セオは家族だし、ジョセフもロナルドもいい友達だし、なんで今更そんなこと言われなきゃいけないんだろ?
「ちょっと、聞いてるの!!」
アリアの金切り声で、我に返った。
すっかりアリアの存在忘れてたわ。
「身に覚えがありません。反論のしようもありません」
「なんて生意気なの!調子に乗って!卑しい私生児の分際で!!」
アリアが激昂した。
「おやめなさい」
穏やかだが、有無を言わせないきりりとした声が教室の中に響いた。
「アリア、ご自分の立場をお忘れになったの?品がありませんよ」
「ルシアナ様、なぜここに‥‥‥」
アリアが動揺したように目を泳がせた。
「あなたが立場も忘れて教室で聖女様を怒鳴りつけているって知らせてくださった方がいらっしゃるのよ」
「‥‥‥」
アリアは悔しそうに唇を噛んだ。
「おやめなさい。それが事実であろうとなかろうと、あなたの出る幕ではありませんよ」
ルシアナ様は有無を言わせない微笑みをアリアに向けた。
「お久しぶりでございます。聖女様」
にっこりと微笑むとルシアナ様は私に膝を折った。
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