そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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3 ヒロインへの道

128 ルシアナ様のお茶会

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翌日はルシアナ様のお茶会に招かれた。
ルシアナ様は、時折、高位令嬢たちとの橋渡しに、と私をお茶会に招待してくださる。

令嬢たちは最低でも伯爵令嬢ランク。
お金があっても男爵家では招待されないし、エリザベス様のように爵位を買って伯爵家になった「成り上がり」では招待してもらえない。
そんなメンバーの中に私が招待されるのは「聖女」ブランドあってこそ。
ルシアナ様はいくら止めてもいつも私のことを「聖女様」と呼んで立ててくださった。
高位令嬢の中には、そうしたルシアナ様の態度に眉をひそめる方もいらっしゃったけれど。

実は私も、あまり高位貴族の令嬢方とのお付き合いが得意じゃない。
タチアナ様やエリザベス様のような相手の人間性と付き合う人ばかりではなくて、どちらかというと皆さん相手に紐づいている「家門」とお付き合いなさっている感じ。
没落したら当然口もきかないというか、付き合っていた事実さえ抹消しそうな希薄な人間関係には、どうしても馴染めないものを感じていた。
腹の探り合いをしながら高級なお茶を飲むよりもナタリーの噂話に耳を傾けながら水を飲んでた方が楽しい。

「聖女様、お茶をいかがですか?」
お茶会の時、なぜかルシアナ様は私を一番上座に座らせて、最初にお茶を注いでくださる。
もちろん、最初は辞退したよ?
だって、針のムシロだし!
高位貴族のお嬢様方のつめたーい視線に凍りつく。
言わなくてもわかります、皆さん。あんたなんかがそこに座れる立場じゃないって、皆さんお顔に書いてありますから。
「ありがとうございます」
私は小声でお礼を言って、お茶を受け取った。
完璧なルシアナ様の微笑みと令嬢たちの冷たい視線‥‥‥慣れないなあ。

「皆さんも遠慮なく召し上がってくださいね」
ルシアナ様が微笑みながら令嬢たちに話しかける。テーブルの上には宝石のように美しい焼き菓子やコンフィチュールがキラキラと光を放っていた。
「皆さんのためにパティシエが腕を振るいましたのよ」
「いつも、ルシアナ様のお茶会はおもてなしのお手本のようですわ」
「本当に。こちらのお茶はもしかして、隣国の山間地でしか採れない幻の茶葉ではありませんの?」
「まあ、さすがですわね。目利きでいらっしゃる」
令嬢たちは品良く目を輝かせてみたり、褒めたりしながらお茶を楽しんでいるようだ。

そして私は空気と化してなるべくお邪魔にならないように静かにお茶を飲んでいた。
皆、私をチラチラとは見るが、話しかけては来ない。

「そういえば!聖女様の御領地では絹が特産ですわよね?私、今度ディライト領の絹でドレスを仕立てようと考えておりますの。腕のいい職人をご紹介いただけますかしら?」

突然、ルシアナ様が私に話を振った。

「は、はい、もちろんです。ありがとうございます」

私が慌てて答えると、誰かがくすりと笑う。意地悪そうな笑い声。
今の答えは不正解ってこと?
あー、もう何が何だか。
何を言ってもバカにされるこのお茶会は本当に苦痛でしかない。
でも、筆頭公爵家のルシアナ様からのご招待は断れない。
しかも、ルシアナ様は良かれと思って、ご令嬢たちと私の交流の機会を作ってくれているのだろう。
そう思うと断りきれない。

「お嬢様、奥様がお呼びですので少しだけよろしいですか」
執事がルシアナ様を呼びに来て、退出すると、隣に座っていたアリアが話しかけてきた。

「あんたって、本当にバカ。ルシアナ様にお茶を注がせたり、こんなお茶会に招待させたりして、卑しさが態度に出てるっていうのはあんたのことを言うのよ。ルシアナ様がお優しいからってすぐに調子に乗るところは相変わらずね」
相変わらず、意地悪そうな顔をしている。
安定の厚化粧と縦ロールを見ると、言葉が出なくなる。
反論のしようがない。
お茶を注がせてないって言ったら、注いでもらっておきながら恩知らずと言われる。
招待させてないって言えば、招待されて当然だと思っているの、王太子の威光をかさにきてると言われる。
調子に乗ってないって言えば、反論するところが調子に乗ってるって言われる。
つまり、何を言ってもダメ。
私は口の中でため息を殺す。
他の令嬢だって同じことを考えているのだろう。
皆、私に嫌味をぶつけるアリアを満足気に見ている。

いつもいつもこのお茶会に出るたびに退屈で嫌な思いになる。
そしてどんどん私に対する評価が悪くなってくる気がするのは不思議なほど。
ヒロインやるのも楽じゃない。
あーあ、早く終わらないかな。
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