そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

文字の大きさ
147 / 247
3 ヒロインへの道

143 一本の矢

しおりを挟む
朝起きると、リーラのベッドは空になっていた。

(朝早いんだな。鍛錬かな?)

そう思いながらリーラを探しに階下に降りると、宿はピリピリするほど緊張した空気に包まれていた。
リーラは男の人たちに囲まれて何かを話している。
小柄な体はおじさんたちの肩までしか届かないけれど、朝慌てて起きたのか、いつもまとめている髪をまとめずにそのまま垂らし、ゆるくウエーブを描く金髪が光り輝くのが見えた。
でも、鋭い目つきで話すその姿は、戦士そのものだった。

(リーラは天使みたいに可愛い女の子なのに、立派な戦士なんだ)

初めて気がついた。
学校で見せている姿とは全然違う。私といるときの屈託なく笑う姿とも違う。
日常的に命のやり取りをする、辺境の戦士なんだ。
誰もリーラのことを女だからって見下したりしない。
お互いに、戦士として信頼しあって話し合っているその姿に私は声が出なくなってしまう。

そのとき、誰かがリーラに私がいるって指差して合図した。

「おはよう、ステラ」
「お、おはよう。リーラ」

リーラにっこりと笑って私に挨拶した。私も慌てて返事をする。

「まずは朝食にしましょう。とにかく体が資本です。食べれる時にしっかり食べないと、ですよ」

そう言うと、私を朝食の席に促した。

昨日はうっかりとテーブルに食べ物を置かれてしまったけど、今日はここのルールがわかったから、お皿がテーブルに置かれる前に、量を半分にしてください!って言えた。
置かれちゃったらアウトだもんね。

宿の女給さんは遠慮しないでと言ってくれたけど、すみません、遠慮してません。
本当に辛いんで。

感謝しながらも、一度下げて量を半分にしてもらった。
ここは戦う人が多く泊まる宿だから、食事の量が半端ない。
この宿から少し行ったところにある河から先は武装地帯になるそうで、何があるかわからない場所に入ってくるそうだ。ここでしっかり食べないと、場合によっては2日も3日も何も食べられない可能性がある宿だから、たくさん盛ってくれることが最高のもてなしらしい。食事をとりながらリーラが説明してくれた。
昨日の大量の肉とジャガイモは、心からのおもてなしだったってことね。
そう考えただけで、私の心はふんわりと暖かい気持ちに包まれた。

感謝しながら、でも、半分にしてもらってもやっぱり喉の奥から食べたものが戻ってきそう。
昨夜に続く満腹で、すっかり体が重くなってしまった。
こんなことじゃ乗せてもらう馬たちに申し訳ない。

「はーちゃんに昨日より重いって思われないかな‥‥‥」
私がため息をつくと、リーラの雰囲気ががらりと変わった。

「そのことなんだけど、ステラ。話があるの」
真剣な声色に私とジョセフは顔を上げてリーラを見た。
「実は今朝、宿の入り口のドアに矢が打ち込まれた」
「えっ?」
「矢には特徴があって、矢じりとか矢羽とかでどこの家のものかわかるものなんだけど、今回打ち込まれた矢は」
リーラが私の目を見た。
「王都のどこでも手に入る、練習用の弓を改造したものだから、どこの家のものかはわからない。でも、あえてそんな矢を打ち込んだってことから、相手はアドランテ家の手のものだって簡単に予測がつく」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
矢を打ち込むなんて、穏やかじゃない。それどころか宣戦布告だ。
「アドランテ家じゃなかったとしても・・・そう安全じゃないってことだよね」
「わかった」ジョセフが静かに言った。
「護衛は増やしていただけるのか」
「もちろん。我がコンラッド家への宣戦布告と見てもいいでしょう。相手を舐めくさったこと、後悔させてやりますよ」
リーラがニヤリと笑った。
「うちの者たちも、ガウデン候に喧嘩を売るなら買ってやろうじゃないかと返って意気が上がってます。護衛はとりあえずすぐに集められる腕利きを5人追加することにしました。ですが、一つ困ったことがあるんですよ」
ジョゼフが頷き、先を促した。

「実は、馬に薬を盛られました」
「うそっ」
私は思わず立ち上がった。
「そんなバカな、そんな・・・」

私の頭の中で昨日甘えるように喉を鳴らしながら頭をこすりつけてきた3頭の姿が浮かび上がり、ぐるぐると渦をまいた。
「馬に薬を盛るなんて、そんなひどいこと」
まさか、まさか・・・
そんなひどいこと、するわけないよね。
膝ががくがくと震えて力が入らなくなってくる。
私は頭を抱えながら、椅子に座り込んでしまった。


****************************************************
すみません、夏バテってしまっています。
昨日更新できませんでした。すみません。

なんか、このやる気の無さと集中力のなさをなんとかしてほしいです。
夏ってこんなに辛いんでしたっけ?
今年の暑さはほんとにきついです。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

処理中です...