そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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3 ヒロインへの道

168 王妃登場(王太子ハルヴァート 9)

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「先ごろ、フォーク公爵家ルシアナ・アドランテご令嬢より、王太子ハルヴァート殿下が聖女を名乗るステラ・ディライト男爵家令嬢より魅了の術をかけられている、との告発がありました。もしこの告発が事実であれば、一国の王太子が禁術をかけられ操られた由々しき事態となります。このため、我々はこの告発を真摯に受け止め、慎重に調査を進めてまいりました。それでは、まず医師団より報告願います。」

初老の紳士がすっと立ち上がると、王妃が扇をパチンと鳴らした。

「お待ちなさい。この場に聖女を信仰する者たちがいるのはなぜですの?それに、本来であれば大神官が同席するのが筋であろうに。そもそも、聖女を信仰する者が今回の件を公平に判定できるのか」

王妃の女性にしては少し低い声が空気を震わせる。生まれながらにして、国内最高の家柄に生まれた者特有の高貴さと高慢さが入り混じる、威厳に満ちた声に部屋の中は静まり返った。

「ヴィダル」
「はい。王妃陛下」
ヴィダル神官長が恭しく進み出た。
「このたびの魅了についての件は、アドランテ家のご令嬢より発したものでございます。また、合わせてステラ・ディライト嬢が聖女であるかについての疑問も呈されております。つきましては我々は真偽のほどを確認させていただく必要があり同席させていただいております。また、なぜ大神官が不在なのかとのご質問についてです。大神官ジェイデンはアドランテ家に繋がる者。かのルシアナ嬢は姪に当たり関係が近いため、公平を期するため今回の件については一切関与しないことを宣言しております」

パシッ
王妃が扇で椅子を叩いた。
いらだちと不快感が伝わってくるその音に、緊張が高まる。息を吸うことすら非礼にあたると言わんばかりだ。

「それは、まことにジェイデンの意思か。教団の総意であるのか」
「御意にございます。ジェイデン師は清廉な方でございますので、教団の判断に対して髪の毛一筋ほどの疑いの余地が生じてはならないと申しておりました」

王妃が目を細め、ヴィダルを見た。

「教団の者どもは、ステラ・ディライトなる者を聖女と崇めていると聞いておる。まことか」
「まことにございます」
「いまだ聖女として公式に認められていないと聞いておるが」
「御意にございます。ステラ嬢からはもう少し待って欲しいと申し出があり、教団といたしましても聖女の準備が整う前に無理やりと言うわけにはいきませんので」
「偽聖女ではないのか」
「私はステラ嬢が真の聖女であると信じております。万一誤った時には、神官長の職を捨て、野に下る覚悟でございます」

発言を許されていない二人の神官長たちも同意するかのようにヴィダルに合わせて頭を下げた。

「そもそも、聖女とは何か。国を豊かにする存在として私も学んだが、抽象的すぎてわからぬ。もっと具体的に、聖女である事がどう言う事なのか説明できぬのか。神官長たちに発言を許す。説明せよ」
「発言の許可をいただき、ありがとうございます」ベリ神官長がその場に進み出た。

「まず、当代の聖女様の顕現についてです」
ベリ神官長の低い声がゆっくりと空気を満たす。
「占星術により、当代の聖女様が現れる予言があったのは15年ほど前のことにございます。聖女様はここ100年ほど現れておりませんし、国が落ち着いている証とも取れますので、顕現がない事が必ずしも悪いこととは限りません」
「ふむ」
「また、聖女様が世に現れる時には、必ず東の空に明の星が二つ輝くと伝えられております。明の星はわが国では王位を現します。このたびの聖女様が現れる時には、常の明るさをはるかに凌ぐ強い光を持つ2つの星が並び立ちました。占星術により、聖女様顕現の地を確認し、男爵領を訪れますと、金環の瞳を持つ聖女様がいらっしゃいました」
「ふん、占星術な?単なる偶然と聞こえるが?」
「偶然ではございません。偶然にしては重なりすぎているのです。そもそも、金環の印を持つものなどおりません。聖女様は体のどこかに必ず金環の印をお持ちです。初代様は剣を振るう右腕に金環を宿し、建国の際に大いなる力を発揮されました。2代様はひたいの中央に金環を宿し、類稀なる英知にて国の礎を築かれました。さらに3代様は瞳の中に宿し、多方面に力を発揮されました。人々の心を癒す力はこの方が最も高かったと言われています。4代様は足の甲に金環があり、旅の聖女と呼ばれました。また、5代様は手のひらに金環をお持ちで癒しの力に長けておられました。6代様は手の甲に金環をお持ちで我が国の工芸の発展に寄与されました。
ステラ様は3代様と同じ金環の瞳の持ち主。大きな期待がかけられています」
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