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4 決戦
188 聖女は剣が持てない?!(命狙われてるのに)
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「大丈夫か、スー?どうしたんだ!」
焦ったようなジョセフの声が聞こえる。
「聖女様ああああ」
遠くから聞こえるリカルドの絶叫。
全身が震え、冷や汗が噴き出してくる。
「な、なに・・・?」
自分でもわからない。突然のことに戸惑い、どうしたらいいのかわからない。
ジョセフの腕をこわごわと掴み、なんとか顔を上げた。
「聖女さまぁ!」
ちかっ!
リカリドが目の前で泣いていた。一体何が起こってるの?
「お命を縮めるようなことは・・・お控えくださいましいいいいい」
戸惑いながら周りを見ると、全員が呆然としていた。
困り切ってリカルドを見ると、リカルドも気がついたらしい。
「ご説明いたします。聖女様をどこか座れるところに」
騎士さんたちが慌てて、食堂の端の座れそうなところを空けてくれた。私は足が震えて立てず、ジョセフが抱きかかえて運んでくれる。リーラが慌てて持ってきたクッションを当て、なんとか話が聞ける状態になると、リカルドが口を開いた。
「神聖聖女録に記録がございます。聖女様が力に目覚めると、人を傷つけることに極端な嫌悪感を覚える、と。おそらく、聖女様は剣を持って人を傷つけることを嫌われたのでは?それと、激しい症状から考えるに、もしやこの剣は血を吸ったことがあるのではありませんか?」
「・・・まあ、母の使っていた剣なので。辺境ですから、綺麗事ばかりじゃ・・・」
ケイレブが気まずそうに言う。
「聖女様に、血を吸った剣をお渡しするなど、ぶ、ぶ、無礼者が~~!!」
リカルドがブチ切れた。
「いや悪かった、悪かったよ。だけどそんなことわかるわけないだろ。これが軽い上に一番質のいい剣なんだよ!」
「悪気はなかったんですから、先に進めてください」
ジョセフが落ち着いた声で先を促す。
「きーっ」まだ興奮冷めやらないリカルドを困ったように見ると、「聖女様のおんため、聖女様のおんため・・・・」と口の中でブツブツ呟いている。
一応、私のためを思ってくれてるんだよね。
「リカルド。誰も悪くありません。私も含め知らなかったのですから」
取り成すように言うと、リカルドは大きく深呼吸した。
「取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。聖女様は自衛のためだろうと、人を傷つけることはできません。おそらく、人の善意への信頼が存在の根幹にあるからでしょう。刃物を持った相手の前に丸腰で立った記録すらあります。しかも複数・・・ですが、今回は・・・」
「あっさり殺されますよ」
ケイレブ腕組みをして考え込むように呟いた。
「大掛かりな情報操作だけで済むわけないでしょう。矢を打ち込んだり、馬に薬を盛ったり実力行使に来てるんだから。俺が敵なら聖女様が奇跡を行う回数を少しでも抑えるために早々に手を打つがね。」
ピリッと緊張した空気が流れる。
「奇跡を起こせば起こすほど、聖女様を支持するものは増えていくだろうからな。今日、河原にいた連中の態度を見たってわかるだろう?直接聖女に接すれば、くだらない噂なんぞふっとんじまう」
正直、ショックだ。自分を害そうとする人がいるなんて。考えたくもない。
でも確かに本気じゃなければ、大勢の人を雇って私の悪い噂を流すなんてするわけないし、矢を打ち込んだのは警告だろう。怖い。今度はさっきとは違う震えが止まらなくなり、私は自分を抱きしめるようにぎゅっと腕を組んだ。
「も、もちろん、それを阻止するために我々がいるんですから、ご安心ください!」
ケイレブが慌てて言う。
「スー」私の名を呼びながらリーラが抱きしめてくれる。
「味方もたくさんいるから。だから・・・」
リーラの腕が暖かい。私はリーラの手に触れ、握りしめた。
「聖女様は剣を持てないのか・・・」
ケイレブと騎士たちが顔を見合わせている。
「剣で襲ってくる相手に対して、丸腰か」
不安が私にまで伝わってくる。
「聖女様、尊いお気持ちはよくわかります。ですが、今は非常事態です。身を守るためにせめて短剣だけでもお持ちいただけませんか」
リカルドがすがるように言う。
(身を守るため・・・)
そう思うだけで、人を傷つけるイメージが広がる。
手が震え、吐き気がする。
(できない・・・)
「考えただけでも手に力が入らなくなるような感じがします。無理です」
みんなががっかりした気持ちが伝わってくる。
私のために申し訳ない。でも、どうしたらいいんだろう。
剣を持つことすらできないってのは確かに、この状況では問題だよね。
「神官殿、新しい刃物ならどうなんだ」ジョセフがふと思いついたように言った。
「気休めだが。ここに私が生まれた時に授けられたお守りがあるのだが」
そう言いながら、胸元から小さなナイフを手繰り出した。
「一度も使ったことがないし、お守りとして大切にしていたものなので、聖女の力と馴染むのではないか?」
「確かに、それならお持ちになれるかもしれませんね。聖女様いかがでしょうか」
私はジョセフが差し出したナイフにそっと手を伸ばす。
(あ、手が震えない。このナイフに込められた想いは・・・)
生まれたばかりの小さな命。
どうか、この子をお守りください。
願いが伝わってくる。
それは人を傷つけるための刃ではない、大切に守るための願いを込めたお守りだった。
焦ったようなジョセフの声が聞こえる。
「聖女様ああああ」
遠くから聞こえるリカルドの絶叫。
全身が震え、冷や汗が噴き出してくる。
「な、なに・・・?」
自分でもわからない。突然のことに戸惑い、どうしたらいいのかわからない。
ジョセフの腕をこわごわと掴み、なんとか顔を上げた。
「聖女さまぁ!」
ちかっ!
リカリドが目の前で泣いていた。一体何が起こってるの?
「お命を縮めるようなことは・・・お控えくださいましいいいいい」
戸惑いながら周りを見ると、全員が呆然としていた。
困り切ってリカルドを見ると、リカルドも気がついたらしい。
「ご説明いたします。聖女様をどこか座れるところに」
騎士さんたちが慌てて、食堂の端の座れそうなところを空けてくれた。私は足が震えて立てず、ジョセフが抱きかかえて運んでくれる。リーラが慌てて持ってきたクッションを当て、なんとか話が聞ける状態になると、リカルドが口を開いた。
「神聖聖女録に記録がございます。聖女様が力に目覚めると、人を傷つけることに極端な嫌悪感を覚える、と。おそらく、聖女様は剣を持って人を傷つけることを嫌われたのでは?それと、激しい症状から考えるに、もしやこの剣は血を吸ったことがあるのではありませんか?」
「・・・まあ、母の使っていた剣なので。辺境ですから、綺麗事ばかりじゃ・・・」
ケイレブが気まずそうに言う。
「聖女様に、血を吸った剣をお渡しするなど、ぶ、ぶ、無礼者が~~!!」
リカルドがブチ切れた。
「いや悪かった、悪かったよ。だけどそんなことわかるわけないだろ。これが軽い上に一番質のいい剣なんだよ!」
「悪気はなかったんですから、先に進めてください」
ジョセフが落ち着いた声で先を促す。
「きーっ」まだ興奮冷めやらないリカルドを困ったように見ると、「聖女様のおんため、聖女様のおんため・・・・」と口の中でブツブツ呟いている。
一応、私のためを思ってくれてるんだよね。
「リカルド。誰も悪くありません。私も含め知らなかったのですから」
取り成すように言うと、リカルドは大きく深呼吸した。
「取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。聖女様は自衛のためだろうと、人を傷つけることはできません。おそらく、人の善意への信頼が存在の根幹にあるからでしょう。刃物を持った相手の前に丸腰で立った記録すらあります。しかも複数・・・ですが、今回は・・・」
「あっさり殺されますよ」
ケイレブ腕組みをして考え込むように呟いた。
「大掛かりな情報操作だけで済むわけないでしょう。矢を打ち込んだり、馬に薬を盛ったり実力行使に来てるんだから。俺が敵なら聖女様が奇跡を行う回数を少しでも抑えるために早々に手を打つがね。」
ピリッと緊張した空気が流れる。
「奇跡を起こせば起こすほど、聖女様を支持するものは増えていくだろうからな。今日、河原にいた連中の態度を見たってわかるだろう?直接聖女に接すれば、くだらない噂なんぞふっとんじまう」
正直、ショックだ。自分を害そうとする人がいるなんて。考えたくもない。
でも確かに本気じゃなければ、大勢の人を雇って私の悪い噂を流すなんてするわけないし、矢を打ち込んだのは警告だろう。怖い。今度はさっきとは違う震えが止まらなくなり、私は自分を抱きしめるようにぎゅっと腕を組んだ。
「も、もちろん、それを阻止するために我々がいるんですから、ご安心ください!」
ケイレブが慌てて言う。
「スー」私の名を呼びながらリーラが抱きしめてくれる。
「味方もたくさんいるから。だから・・・」
リーラの腕が暖かい。私はリーラの手に触れ、握りしめた。
「聖女様は剣を持てないのか・・・」
ケイレブと騎士たちが顔を見合わせている。
「剣で襲ってくる相手に対して、丸腰か」
不安が私にまで伝わってくる。
「聖女様、尊いお気持ちはよくわかります。ですが、今は非常事態です。身を守るためにせめて短剣だけでもお持ちいただけませんか」
リカルドがすがるように言う。
(身を守るため・・・)
そう思うだけで、人を傷つけるイメージが広がる。
手が震え、吐き気がする。
(できない・・・)
「考えただけでも手に力が入らなくなるような感じがします。無理です」
みんなががっかりした気持ちが伝わってくる。
私のために申し訳ない。でも、どうしたらいいんだろう。
剣を持つことすらできないってのは確かに、この状況では問題だよね。
「神官殿、新しい刃物ならどうなんだ」ジョセフがふと思いついたように言った。
「気休めだが。ここに私が生まれた時に授けられたお守りがあるのだが」
そう言いながら、胸元から小さなナイフを手繰り出した。
「一度も使ったことがないし、お守りとして大切にしていたものなので、聖女の力と馴染むのではないか?」
「確かに、それならお持ちになれるかもしれませんね。聖女様いかがでしょうか」
私はジョセフが差し出したナイフにそっと手を伸ばす。
(あ、手が震えない。このナイフに込められた想いは・・・)
生まれたばかりの小さな命。
どうか、この子をお守りください。
願いが伝わってくる。
それは人を傷つけるための刃ではない、大切に守るための願いを込めたお守りだった。
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