そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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4 決戦

192 敵の目的

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「うおー」
男たちの掛け声を聞くと体がすくむ。

ガシッ!ガン!ガン!
ケイレブが先頭に立ち、男たちの武器を弾いていく。
騎士たちもどんどん敵の武器を弾き、全く勝負にならない。
武器を弾かれた男たちは、それでも諦めずに私に向かってきた。

「あの女を連れて行けば、1000ゴールドだ!それに一人100ゴールドだぞ!」

リーダーらしき男が叫ぶ。
男たちは武器の間をくぐり抜け、何とか私を捕まえようと、ちょこまかと逃げ回りながら、私の方に来ようとした。ところが…

ずぽっ

「うわっ」

先頭にいた男の足が湿地にはまった。

「うわっ」「うわーっ!!」

あちこちから男たちの悲鳴というか奇声が上がる。

「何だここはーーー!!」

叫び声が上がったその時、ザッと音がすると、ビルとライが男たちをロープでぐるぐる巻きにしていた。
え?何がどうなったの?
「ビルたちがロープを仕掛けてあったんだ」あっけにとられる私にジョセフが説明してくれた。
つまり、最初からここに追い込むつもりだったってこと?
だから、私が水の際に座らされたってこと?そういうことだったのかーー。

「ぐわーっはっはっは。お前たち、単純すぎるぞ!読みどおりすぎて張り合いがないぞ!!」

湖の湖畔にはケイレブの高笑いが響いていた。

「まあ、予想はついてたんでね。」
大声で笑った後、振り返ったケイレブがドヤ顔で言った。

「絶対ここで襲ってくると思ってたんですよ。予想通りすぎて、ちょっと拍子抜けですよ」

ケイレブ、ものすごく生き生きしてる・・・アドレナリン出っぱなし?この人って、心から戦いが好きなんだね。

「聖女様には申し訳ないけど、囮になってもらいました!」

にこにこしながら悪びれずにいうケイレブに毒気を抜かれ、何も言葉が出てこない。


「事前に調べさせたところ、大規模な軍はいなかったので多分寄せ集めでくるだろうと。そして今日は小手調べかなと。いや、あまりにも予想通りすぎてねえ」

ケイレブの鼻が天に向かって伸び始めている。
こ、これは褒めるべきところ?
でも力の差がありすぎて、なんだか。

「ま、このあとも油断できませんが、相手の目的を考えると、ここが一番襲撃しやすいんで間違いなく、ここかなと。他の場所だと難易度が上がっちまうんでね」
「・・・目的?」
「えっ?」
ケイレブはしまった、とでもいうように、目を見開いた。

「目的って何ですか?わかってるんですか?」
「え、いや?その、多分その、いやー」
「なぜ隠すんですか?」
「いや、まあ、聖女様は知らなくてもいいかな、と」
「ケイレブ」
「敵は、聖女様を邪魔したいんですよ!王都に入れたくないんです。だから足止めしようとしてるんですよ」
「・・・・さっき、私をとらえると1000ゴールドって言ってましたよね?」
「そうでしたか?」
「そうでした」
ケイレブの目が泳ぐ。
「おおっと、ビル何だ?急用か?」
「はあ?」ケイレブはビルの肩をぐっと掴むと男たちの方に行ってしまった。

「なにそれ」何で教えてくれないの?
「ジョセフはわかる?」私は振り返ってジョセフに聞く。
「まあ・・・スーを安全に王都まで届けたいってことだよ」
ジョセフがなだめるように言う。

「知ってるけどさあ。教えてくれてもいいと思うんだけど」
「知らない方がいいと思ってるんだろ。思いやりなんだよ」
「うーん、でも気になるし」
「まあ、そうだろうけど。でも、ケイレブの作戦見事だったな。干潟に踏み入れさせて動けなくさせた時には、感心したよ」
「確かに・・・」
何となく話をそらされた気がする。
「まあ、今日はこれ以上なにもないといいけどな」
「そうね」
ちょっと不満が残るけど、ケイレブもジョセフも絶対に話す気がないオーラがビシビシでてて、これ以上聞いても無駄ってことはわかった。

ジョセフの言葉どおり、その日はそれ以降何もなくアイザックの宿に到着することができた。
頑張って走ってくれた馬たちには本当に感謝。

**************************************************

その日の夜。宿では翌日の作戦会議が開かれていた。
「しっかし、しょぼすぎないか?あいつら。もっとこうさ、なんかやる気出させてくれないと、腕がなまっちまうよ」
ケイレブが軽くエールを飲みながら愚痴っている。
「聖女様が魔の森を浄化してくださってから、魔物もでないし。隣国もすっかり大人しくなっちまって、どうもな・・・」
「戦闘狂ですか」ライは呆れ返ったようだ。
「まあ、でも確かに歯ごたえがなさすぎましたがね」
「だろー?」

「あれだけの人数がいれば、十分なはずだったんですよ」
ビルが横から口を出した。
「辺境までは、姫とジョセフだけで聖女様をお守りしてたんですから。まさか、帰りにはコンラッド家が庇護しているとは思いもよらなかったでしょう。それに、ああいう奴らは、地元の裏通りには精通してますからね。あいつらが上手いこと娼館に売り払えば、相当長い間隠し通すことができる計算ですよ。見つかった時には、聖女様はすっかり穢され、死んだ方がましだと思うほど酷い目に遭わされた後でしょう。生きていたとしても、正気を保ってられるかすらわからない」

「おっかねーな。おい、絶対に聖女様にはこのことを知られないようにしろよ。命を狙われたり、娼館に堕とそうとされているなんて知ったらきっと、お心を痛めるに違いないからな。こんな過酷な旅の中、耐えられんだろ。聖女様は泣き言ひとつ仰らないけど、若い女の子には、酷な話だよ」
「歳は関係ないですよ。誰だって命を狙われて喜ぶ人はいませんから」
「そりゃそうだ」

「あいつら、一体何を考えているんだ?聖女を排斥しようとしてるってことなのか?そもそもそんなこと、許されるのかよ」
「少なくとも、王太子殿下のそばから永久に排除しようとしようとしてるとは思いますけどね。低級な娼館の娼婦じゃ、愛妾にすることすら不可能だし、それにもしかしたら、王太子殿下が愛想をつかすことも考えらるでしょう?もうちょっとソフトな方法で排除しようとしたのが全く効果がなかったのか、それとも、妬みか、恨みか・・・いずれにせよ、強い憎しみを感じますね」
ライが冷静に状況を分析する。
「うーん、ただ、はっきりしてるのは、聖女様を王都に入れる気はないってことだな。王都に入ったら、教団の本拠地もあるし、聖女様を害するにはちーっとばかり不便だからな」
「じゃ、明日ですか」
「そう、明日だろうな」
男たちは頷きあった。

「ひとつお願いがあるのですが」
それまで黙っていたジョセフが口を開いた。
「何だ、言ってみろ」
「王都に連絡をしたいのですが、できますか。できれば大至急で」
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