そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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4 決戦

216 幼い頃のハル様

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なぜハル様に魅了の痕跡があったのかわからない。
今まで私に対してなんとなく誤解が解けてきたような、緊張がゆるみはじめたような雰囲気だったのに、突如議事堂の中は敵だらけになった。

「私は、魅了などかけておりません!掛け方すらわかりません!」
必死にいっても誰の耳にも届かない。
ルシアナはあざ笑うかのように私を見ていた。
「ステラ、あなたにコクルルの実を売った者を知っておりますのよ!」
「コクルル?それって、なんですか・・・?」
「何をとぼけてるの。あなたが魅了に使った木の実ですよ」
「え・・・?」

「お静かに!」
突然、ヴィダル先生が立ち上がった。
「ステラ嬢が魅了をかけたと何を根拠におっしゃっているのですか。まだ何もわかっておりません。クラーク医師の診断結果を拝聴すべきではありませんか」

「その通りです」宰相閣下が言った。
「みなさん、静まりなさい。憶測でものを言ってはなりません。クラーク医師、お願いします」
「はい、了解致しました」クラーク医師は深く一礼すると話を続けた。
「王太子殿下に魅了の痕跡を認めましたが、それほど重症ではありません。おそらく、現在思考を操られるなどの症状は全くないほどの微量の痕跡です。放っておけばなくなるかもしれませんし、そうでないかもしれません。個人差があるので断定はできませんが、現時点で痕跡が見られたからなんらかの判断ができなくなるとは考えづらいです」

ヴィダル先生が挙手した「質問してもよろしいでしょうか」
宰相閣下が頷くと、ヴィダル先生はまた立ち上がった。
「王太子殿下への魅了はいつごろ行われたものと考えられるでしょうか」

「そうですね・・・おそらく幼少時ではないかと思われます。私の経験則から言うと、おそらく、数回にわたり幼少期に投薬されていると考えられます。幼い子どもであれば少ない量でも効果は強く出るものです、そしてその効果は長く続きます」
「やはりそうでしたか!」
ヴィダル先生が膝を打った。
「私に仮説がございます。ここでご披露してもよろしいでしょうか」
宰相閣下が頷き、ヴィダル先生が続ける。
「その前に、王太子殿下の幼少期について知っている方に証言をいただきましょう。この会場には王太子殿下の元婚約者候補の方が複数おられます。まず、タチアナ・グラン嬢に証言をいただきましょう」

タチアナ様が立ち上がった。

「グラン嬢、あなたはハルヴァート殿下を幼少時から知っておりましたね。婚約者候補として指名されていた時期もあったと。あなたから見た殿下の印象を教えてください」
「はい。正直に申し上げても?」
「もちろんです」
「ありがとうございます。では遠慮なく。正直申し上げて、幼少期の殿下は機械としか思えませんでした。王妃陛下の忠実なロボットとしか思えない存在です。指示通りに動き、完璧な受け答え、表情筋は動かず、感情の動きもない。今の人間的な殿下の方がよほど好ましい存在です」
「ふむ、忌憚のない意見をありがとうございました。キース嬢も何か言いたそうですな?」

エリザベス様も話し始めた。
「タチアナ様と全く同意見です。完璧な機械みたいな人だと思っていました。同じことをおうむ返しに繰り返し、感情も温かみもない方です。今の殿下からは時々ですが人としても温かみも感じます。私はこのような方の治める国をより良くするために努力したいと思いました」

「ふむふむ、良い意見ですな。他に意見を言いたい方や反論される方は?」

「王太子殿下は機械じゃなかったです!ちょっと感情を表すのが苦手なだけだったんですから!私にはわかりました」
ルシアナ様が悔しげに言った。
「なるほど、それがあなたのご意見ですね。承りました」
ヴィダル先生が優しく答えた。

「これまでの話をまとめると、王太子殿下は幼少のみぎり、感情を表すのが苦手もしくは感情を持たない存在であったと。私も幼少のころより王太子殿下の家庭教師として教えさせていただいておりますので、よく覚えております。
正直、人間味にかける方でした。でも時折、性根の暖かさがのぞくことがあり、それが人としての魅力だったんです。ですので、どなたの意見も正しいと考えます。そこで、クラーク医師に専門家としてのご意見を伺いたい。

殿

王太子殿下は、幼少時に「魅了」をかけられていた?
それは一体どういうこと?
その場にいた全員が固唾を飲んでクラーク医師の言葉を待った。

ごほんと咳払いするとクラーク医師が話し始めた。

「ヴィダル師のおっしゃる通り、典型的な「魅了」の副作用と思われます」
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