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第2章
第20話 考えるしかない
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練習試合の翌日。
青陵中学校の体育館は、
いつも通り暑かった。
それでも、
昨日より静かに感じる。
佐藤 優真(さとう ゆうま)は、
ラケットを持ったまま、
コートの端に立っていた。
昨日の負けが、
まだ残っている。
ミスの感触。
決めきれなかった場面。
頭の中で、
何度も再生される。
「優真」
声をかけてきたのは、
水野 和樹(みずの かずき)だった。
部長になってから、
声のかけ方が少し変わった。
前より、
相手の様子を見る。
「昨日の試合さ」
水野は、
言葉を選ぶように続ける。
「悪くなかったよ」
優真は、
首を横に振った。
「勝てなかったです」
水野は、
すぐに否定しなかった。
「うん」
一拍置いてから、
言う。
「でも、
何で負けたかは、
分かってる?」
優真は、
答えられなかった。
「速さも、
回転も、
中途半端だった」
水野が言う。
「佐伯みたいに速くない」
「岡崎みたいに、
相手を崩せない」
「田村みたいに、
確実でもない」
全部、
思っていたことだった。
「だからさ」
水野は、
少しだけ笑う。
「考えるしかないんだと思う」
「どこで点を取るか」
「どこは、
我慢するか」
優真は、
その言葉に引っかかった。
考える。
それなら、
自分にもできるかもしれない。
その日の練習。
優真は、
無理に強く打たなかった。
相手の立ち位置を見る。
ラリーの長さを、
意識する。
サーブも、
変えてみた。
速くはないが、
深く。
相手が、
打ちにくそうなところへ。
三枝コーチが、
ふと足を止める。
優真の台を見る。
「……今の」
ぽつりと言う。
「いい選択」
それだけ。
褒め言葉ではない。
でも、
否定でもなかった。
ラリーが続く。
点にはならない。
それでも、
相手が先に崩れる場面が、
少しずつ増えていく。
「点の取り方、
変えたな」
練習後、
三枝コーチが言った。
「はい」
優真は、
正直に答える。
「速くも、
強くもないので」
三枝コーチは、
一瞬だけ黙った。
それから、
にこっと笑う。
「それ、
武器になるよ」
優真の胸が、
少しだけ跳ねた。
「スピード、
回転、
コース、
戦術」
「四つのうち、
今は戦術だね」
「まだ細いけど」
「ちゃんと、
自分の道」
優真は、
ラケットを握り直す。
昨日は、
結果が出なかった。
でも今日は、
少しだけ、
前に進んだ気がした。
勝つために、
自分はどう戦うのか。
その答えは、
まだ途中だ。
でも、
考えることをやめなければ、
止まらない。
優真は、
そう思えた。
青陵中学校の体育館は、
いつも通り暑かった。
それでも、
昨日より静かに感じる。
佐藤 優真(さとう ゆうま)は、
ラケットを持ったまま、
コートの端に立っていた。
昨日の負けが、
まだ残っている。
ミスの感触。
決めきれなかった場面。
頭の中で、
何度も再生される。
「優真」
声をかけてきたのは、
水野 和樹(みずの かずき)だった。
部長になってから、
声のかけ方が少し変わった。
前より、
相手の様子を見る。
「昨日の試合さ」
水野は、
言葉を選ぶように続ける。
「悪くなかったよ」
優真は、
首を横に振った。
「勝てなかったです」
水野は、
すぐに否定しなかった。
「うん」
一拍置いてから、
言う。
「でも、
何で負けたかは、
分かってる?」
優真は、
答えられなかった。
「速さも、
回転も、
中途半端だった」
水野が言う。
「佐伯みたいに速くない」
「岡崎みたいに、
相手を崩せない」
「田村みたいに、
確実でもない」
全部、
思っていたことだった。
「だからさ」
水野は、
少しだけ笑う。
「考えるしかないんだと思う」
「どこで点を取るか」
「どこは、
我慢するか」
優真は、
その言葉に引っかかった。
考える。
それなら、
自分にもできるかもしれない。
その日の練習。
優真は、
無理に強く打たなかった。
相手の立ち位置を見る。
ラリーの長さを、
意識する。
サーブも、
変えてみた。
速くはないが、
深く。
相手が、
打ちにくそうなところへ。
三枝コーチが、
ふと足を止める。
優真の台を見る。
「……今の」
ぽつりと言う。
「いい選択」
それだけ。
褒め言葉ではない。
でも、
否定でもなかった。
ラリーが続く。
点にはならない。
それでも、
相手が先に崩れる場面が、
少しずつ増えていく。
「点の取り方、
変えたな」
練習後、
三枝コーチが言った。
「はい」
優真は、
正直に答える。
「速くも、
強くもないので」
三枝コーチは、
一瞬だけ黙った。
それから、
にこっと笑う。
「それ、
武器になるよ」
優真の胸が、
少しだけ跳ねた。
「スピード、
回転、
コース、
戦術」
「四つのうち、
今は戦術だね」
「まだ細いけど」
「ちゃんと、
自分の道」
優真は、
ラケットを握り直す。
昨日は、
結果が出なかった。
でも今日は、
少しだけ、
前に進んだ気がした。
勝つために、
自分はどう戦うのか。
その答えは、
まだ途中だ。
でも、
考えることをやめなければ、
止まらない。
優真は、
そう思えた。
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