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5. 僕の嫁は姿を変えても可愛すぎる

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「サファイア~。遅くなってごめんね~」

屋敷に着くなりサファイアを探すが見当たらない。

もう、日が落ちているから猫の姿になっているはずだけど…。

「お帰りなさいませ…」

執事がやってきたので、サファイアの居場所を聞いてみる。

「サファイア様ですか…実は…あの…」

また嫌な予感がする…。

「サファイアは本当にそれが好きなのね~」

やっぱり…。

僕は声のする方へ急いだ。

「にゃ~にゃっにゃ」

「え~、そんなに気持ち良いの?」

部屋の扉を勢いよく開けるとそこには予想した人がいた。

「アフロディーテ様…今日はお越しにならない様に言いましたよね…」

「あっ!帰って来ちゃった」

「にゃ!」

サファイアも「にゃ!」じゃないよ。

それに、見覚えのない犬もいる。

「今日はサファイアにこの犬をプレゼントしに来たのよ」

「にゃにゃにゃ!」

サファイア…興奮してない?

「え~、お礼なんて良いわよ」

2人だけで会話するなんて狡い…。

僕も混ぜてほしい。

でも、予想はつく。

サファイアは大のモフモフ好きだ。

アフロディーテ様からプレゼントされた犬は長毛種でどう見てもサファイアの好みど真ん中なのでお礼を言っているに違いないだろう。

あ~、始まってしまった。

サファイアのモフモフタイムが…。

犬を横に寝かせてお腹の辺りに顔を埋めて幸せそうにグリグリしている。

時折興奮しすぎて鳴き声が漏れていたりするんだが…それもまた可愛いんだよ。

前は恥ずかしがっていたけど最近は隠さなくなってきたよね…良いんだけど。

前は僕だけの楽しみだったのに、今は…。

「いつ見ても変な事が好きなのよね~」

神様も一緒…。

「アデちゃん、疲れてるの?」

アフロディーテ様が僕によってきて顔を撫でる。

そうですね、ストレスは溜まっているかもしれないですね。

僕が黙っていると、アフロディーテ様が僕に当てている手が温かくなってきた。

「今、元気になるようにパワーを入れたからね」

「え?!そんな事をしていただけるなんて…」

「最近、サファイアちゃんとの時間を邪魔しているからお詫びも兼ねてよ」

分かっているんですね、邪魔してるって。

「ありがとうございます」

アフロディーテ様が微笑んだ。

やはり美の女神様だけあってお美しい。

僕が見とれていると、足元から鳴き声が聞こえてきた。

下を向くとさっきまで犬とのモフモフタイムを楽しんでいたサファイアがいた。

僕は優しくサファイアを抱き上げた。

サファイアは僕の頬にスリスリと顔を寄せてきた。

可愛すぎだろ!

「アフロディーテ様…我慢の限界がきそうなのて今日はこの辺で失礼しますね」

僕はサファイアを抱きしめて自分の部屋に急いだ。

「え…ちょっと、アデちゃん!」

後ろでアフロディーテ様が僕を呼ぶ声が聞こえていたが聞こえてないふりをして去っていった。

犬のお礼はまた今度しますね。

今日はお許し下さい、アフロディーテ様。

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