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31. 目覚め 〈サファイア視点〉

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「あ!サファイア様!私が誰か分かりますか?!」

私が目を開けると侍女のイルラさんが涙を流しながら話しかけてきた。

「はい…イルラさんです」

私の声を聞いて更にイルラさんが号泣した。

「旦那様ー!サファイア様が目を覚まされました!」

執事のバルダさんが部屋から出て大声で叫ぶと、廊下でバタバタと凄い音が響いていた。

「本当かー!!!」

この声は…アデル様ですね。

でも、バルダさんが大声を出すのも、旦那様が廊下を走るのも珍しいですわね?

どうしたのかしら?

「サファイア!良かった~、本当に良かった!」

部屋に入ってくるなりアデル様は同じ事ばかり言っています。

「本当に良かった…あのまま目が覚めなければどうしようかと思っていた」

アデル様が私の頬を触りながら泣きそうな顔をしています。

「アデル様…?」

皆さん、どうしたのかしら?

手を動かしお腹に触れた時違和感を感じた。

「サファルは?!サファルは無事ですか?!」

大きかったお腹がへこんでいる。

「心配ない、無事だよ。イルラ、サファルを連れてきてくれ」

「はい…」

「サファルは私と同じ部屋で寝ていたんだ。サファイアが目覚めるまでにいろいろと聞く必要があってね…」

私が目覚めるまで?

それに誰に何を聞いていたのかしら?

「その顔だと今までの事を覚えていないみたいだね。君は倒れてから一週間くらいずっと寝ていたんだよ」

「え?」

「そして、君が寝ている間にサファルが生まれた…」

「私が寝ているのにですか…?」

「ああ…」

何でしょう…混乱しています。

周りの女性に出産は物凄く痛いから覚悟しないといけないと聞かされていたのに…私が寝ていた間に生まれるなんて事があるのでしょうか…?

私が理解に苦しんでいると、イルラさんが部屋に戻ってきました。

「サファル!」

目の前に夢で見たサファルがいます。

やはり私は寝ている間に本当に出産したのですね。

イルラさんがアデル様にサファルを渡し、アデル様が私の寝ている横にサファルを寝かせて下さいました。

サファルにそっと触れ、優しく撫でます。

「良かった…無事で…」

『おかあさま、しんぱいさせてごめんなさい』

「え?!」

頭の中に直接話し声が…これはお腹の中にいた時と同じ感じですね。

チラッとアデル様を見ると口の前に人差し指をあてて「シー」と小声で言われました。

この反応はアデル様も知っているということですね。

「本当話せるんだけど、皆の前で話すことが分かると大変だからね…」

またまた小声でアデル様が説明してくれました。

…?え?!何だかとんでもないことを聞いたような。

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