27 / 88
27. 危険な相手 〈アデル視点〉
しおりを挟むア~!
できればサファイアと離れたくないんだけどな…。
何でこんな時に国境付近で火事が頻発しているのかな?
空気だって乾燥する時期ではないし、例年こんな時期に火事なんてあまりおこらなかったよね。
やはり人為的なものなのかな?
だとして、火事を起こしてなんの得になるんだ?
隣国から攻めてくるなら村ごと燃やしてしまうだろうし…。
火事になったのは教会や宿屋ばかり、そこに何かの意図が感じられる。
教会と宿屋に共通するものは…。
…人が来る場所。
しかも、色々な人達がやって来る場所だ。
誰かを捜しているのか、もしくは殺そうとしているのか?
殺すなら全員殺して終わりだな。
火事にするメリットは…。
殺さず、生かしたまま捕らえることができる…。
あぶり出しか…。
火事をおこせば皆が外に出てくる。
宿屋なら、1部屋ごとに確認する手間が省けるし、教会なら匿っているかもしれないから火事をおこした方が捜しやすいな。
犯人を捜すなら、火事になる前に人捜しをしていた奴を見つけたほうが良いかな。
「すいません、少しお聞きしたいのですが。よろしいですか?」
声をかけたのは、燃えてしまった宿屋の主人だ。
「なんだい…」
「火事になる前、宿屋に人捜しに来た人はいませんでしたか?」
「あ?何だ…そんな事が火事と関係があるのか?」
「あるかもしれないのです。だから思い出して頂けませんか?」
「いた…いたよ!火事がおこる少し前に男が来た」
宿屋の主人は少し考えた後、急にうつむいていた顔を上げて話しだした。
「あっ、そうだ。…確かに来たよ。少女を捜しているっていう男が…」
「ご主人は何と答えたのですか?」
「母子で泊まっていた客の娘が、男が話した少女に似ていると思ったから、いるかもしれないと答えたんだ」
「いつも、そんな簡単に教えるのですか?」
宿屋としてはどうなんだ?セキュリティーがなっていないだろう。
「いや、あの時は自分の娘が誘拐されたから捜しているんだ、泣きながら言われたから教えてたんだ」
…簡単に信じるんだな。
「どんな特徴を言っていたのですか?」
「シルバーグレーの長い髪で青い目をした、可愛いらしい少女だと言われたよ…」
「………。」
僕にはすぐに誰を捜していたのかがわかった…。
………サファイアを捜しているんだ。
サファイアを見つけるために火事までおこすのか?
手段を選ばないんだね…。
それだけ危険な相手という事か…。
サファイアに家から出ないように言ったのは正解だったよ。
「男の顔を覚えていますか?」
「覚えているけど…もうこの世にいないよ」
「え?」
「昨日、遺体で見つかったから…。顔を見た時に、見覚えがあるなぁ…と思ってたんだよ。今、あんたに言われて思い出したんだあの男だった」
やられた…。
死人に口なし。
やり方が手慣れてるね。プロかな?
「そうなんですね。教えて頂いてありがとうございました」
僕はお礼を言いながら宿屋の主人にお金を渡した。
復興の足しになればと少し多めに…。
良い情報も貰ったしね…。
僕の可愛いサファイアを狙っている奴がいる。
猫の姿にされているのも、記憶を無くしているのもそいつらが関係していると考えて間違いないだろう。
僕の可愛いサファイアに何かしたら…フフフッ…。
想像しただけで腸が煮えくり返るね。
僕の可愛いサファイア…。
僕が守ってあげるからね。
心配いらないよ。
その代わりに帰ったら、一緒に入浴しようね。
君が、嫌がりながらも僕に身を委ねるしかできない…あの姿を見るのが堪らなく好きなんだ…。
…あぁ、今から楽しみだよ。
10
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる