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2. さようならお父様…
しおりを挟む「お兄様!玉蘭(ぎょくらん)様!星蘭様!何処にいるのお兄様!返事して下さい!」
沢山の男達が屋敷にやって来てからどれくらいたつのだろう。
私はまだ衣装箱の中にいた。
足音が近づいてきたのがわかる。
「お兄様!お兄様!!」
穴から覗くとお父様にしがみついて泣いている見知った人の姿があった。
「茉央…」
私はお母様からの言葉を思い出し声を出していた。
『茉央が来るまで出てはいけない…』
お母様…。
「…星蘭様?」
お父様にしがみついて泣いていた茉央が顔を上げて周りをキョロキョロと見回し始めた。
「星蘭様!何処にいらっしゃるのですか?!」
私は衣装箱を中からドンドンと蹴った。
茉央がそれに気がついて衣装箱の蓋を開けて服を出し底板をのけた。
「星蘭様!!」
茉央は私をきつく抱きしめて泣いていた。そしてすぐに私の目を自分の手で覆ってしまった。
「星蘭様…私がもう良いですよと言うまで決して目を開けてはいけませんよ。良いですか?」
茉央もお母様と同じ事を言うのか…。
「なっ!どうされたのですか!?この手の指は!」
私の手の指は自分で噛んで傷つけた跡だらけになっている。
私は黙って衣装箱のある方向を指差した。
目を塞がれているので茉央がどうしたかはよく分からない。
「これは…」
たぶん茉央は衣装箱の中を見てくれたんだと思った。
衣装箱の底には私の血で書いた文字と絵が沢山あるはずだ。
それを見て茉央は私の頭を撫でてくれている。
「星蘭様…お一人でよく耐えましたね…」
私は茉央をギュッと力強く抱きしめた。
怖かった!怖かった!怖かった!
叫びたいほど怖かった!
お父様が目の前で殺され…お母様は拐われてしまった。
泣きたかったし、叫びたかった!
でも、お母様との約束があるから出来なかった…。
それは今も同じ…。
お母様の姿がない今も叫んではいけない気がする。
私はお母様と会うことが出きるまで大声をあげてはいけない!泣いてはいけない!強く生きなくては!
子供心にそう思った。
茉央は人を雇い衣装箱の中にまた私を隠して、そのまま外に運び出した。
お父様の遺体は持ち出すのは危険だと判断したらしく、お庭に埋めてもらったみたい。
人に話しいるのを盗み聞きした。
お父様…いつも私に甘くてお母様に怒られていたお父様が私は大好きだった。いつまでも、あの暮らしが続くと思っていたのにな…。
「星蘭様、私の旦那様の実家までこのまま行きます。少しお辛いとは思いますが辛抱してくださいね」
衣装箱の中の私に茉央は小さな声で話しかけてきた。
もう、お父様達と住んでいた屋敷とはお別れなんだ…。
子供ながら2度と帰って来られない気がしていた。
さようなら、お父様…。
いつかきっと星蘭がお父様を殺した人達に復讐します!
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