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5. 俺…凄い
しおりを挟む「す、凄い…。まさか実在したなんて…。」
ルイス達に連れてこられた家にいるのだが、そこにいた男にじっと見られている。何だコイツ…。
「アーセナル様、ポチはそんなに珍しいの?」
ルイスは俺を男の前に置いて自分は椅子に座っている。何で俺をここに置いたんだ?
「珍しいなんてものじゃないよ。聖獣様に匹敵するよ。昔に絶滅したと言われている動物なんだ。しかも癒しの効果や守護の効果もあったと伝えられている。謎の多い動物なんだ。聖獣様なのではないかと言われているくらいだよ。」
ルイスもリタも呆気にとられているみたいだな。俺の凄さがやっと理解できたみたいだな。この男は役に立つみたいだ。もっと俺の事を教えてやってくれ。
「嘘…。そんな凄いの。」
リタよ、口を開けすぎたぞ。
「ああ、凄いよ。私もまさかこの目で実際に見られるなんて感動しているくらいだ!学会に発表…いや、そうなると研究対象として連れていかれるかもしれないな…。」
ん…今嫌な言葉を聞いたようなきがするんだが?
研究対象?連れていかれる?
俺はご主人様に会えるまではルイス達と一緒にいるつもりでいるんだが、それができないということなのか。それは断るぞ!
『大丈夫だよ。ご主人様は優しいからね。』
話しかけてきたのは半透明の様な薄い水色をしたプルプルの生き物だった。
なんだコイツは…。
『僕はスライムのプルーフだよ。君の名前を教えてくれる?』
スライム?見たことがない生き物だな。
『俺は柴犬のポチだ。』
『柴犬?聞いたこともないし見たこともないね。どこから来たの?』
どこからと言われても俺自身もよくわからないんだけどな…。
『ここでは無いことは確かだ。』
『…ん~、もしかして分からないってこと?』
俺は何も答えなかった。
「おや?プルーフどうしたんだ、気になるのか?」
「え!このスライムはアーセナル様のペットなのですか?」
リタがプルーフを見て驚いている。
「そうだよ。私はスライムの研究をしているんだ。特にこのプルーフは賢くてね。私達の話すことを理解しているし、私とも意志疎通ができる。素晴らしいんだ。」
すごい褒めてるな。だけど俺も人間の話していることは理解しているし、意志疎通もできる…と思うぞ。俺も褒めろ。
「そうなんですね…。」
リタは驚きの表情を隠せていない。ルイスは逆に目を輝かせてプルーフを見ているな。
「すごいね君。アーセナル様、プルーフちゃんを触っても良いですか?」
ルイス…俺だけではダメなのか。
「良いよ。プルーフは大人しいからね。良いよなプルーフ。」
プルーフはプルプルな身体を揺らして返事をしているみたいに見えた。
「良いってさ。」
ルイスが嬉しそうに笑っている。
「じゃあ、触らせてね。」
ルイスはそっとプルーフに手を伸ばして触れた。
「うわぁ~、プルプルだ。見た目もプルプルだけど触ってもプルプルなんだね!気持ち良い~!」
俺よりも?俺よりもか!?
「え?そんなに気持ち良いの。それなら私も触ってみたいわ。」
何!リタまで裏切るのか?!
リタも怖々ととプルーフに手を伸ばしてプルーフに触れた。
「本当…気持ち良い。夏場にずっと触れていたいわ。」
うっとりしたような顔をしているじゃないか!裏切り者!!俺を触ってもそんな顔をしたことはなかったよね。…別に悔しくなんかないし。
「そうだね、夏場にスライム欲しいかも!」
ルイス…。俺では物足りないのか。いや、嫉妬している訳ではないからな。
「2人ともポチ様が焼きもちをやいているよ。先程から凄い目付きで睨んでいるみたいだけど大丈夫かな?」
アーセナルよ、見ていたのだな。やっと2人が俺の方を見てくれた。
「「ごめんポチ、忘れてた。」」
な~に~!
2人揃って声を揃えて言った言葉が忘れてただと!?こうなればあの手段を使うしかあるまい。
必殺!無視!!チラ見だけよ~!!!
俺はチラッと2人と目線を合わしてすぐにそっぽを向いた。
「え?!ポチ怒ってるの?」
ルイスが俺に触れようとしてきたが触らせないし、顔も見ない。
「何で怒ってるの?スライムに触れたから?分からないわね。」
リタは相変わらず鈍感だな。ご主人様とは大違いだ。早く俺の感情が理解できるようになってもらわなければいけないぞ。
「ポチ~、機嫌を直してよ。ほら、ポチの好きなお菓子をあげるから。ねっ?」
ルイスがポーチから小さなクッキーを出してきた。これは俺が好きなお菓子ではないか?!隠していたのか。
いかん、つい尻尾が揺れてしまう。抑えろ…。
俺は気になるが、プイッと顔を背けた。
「これでもダメなの…。ポチ…。」
ルイスが泣きそうな顔になっているな。
『ねぇ、かわいそうだから許してあげたら?』
プルーフが俺のそばに来て顔を覗き込んできた。
もとはといえばお前のせいだぞ。
『ご主人様を悲しませるのは良くないよ~。』
ルイスは仮のご主人様だけど確かにご主人様を悲しませるのは良くないというのは知っている。昔に母ちゃんから教えてもらったからな。
仕方ない…俺は大人だから許してやるか。
ルイスが手に持っていたクッキーをパクりと食べた。
「あっ、機嫌を直してくれたんだね。」
ルイスは俺の頭を優しく撫でた。
あれ?そう言えば俺の凄さを話してくれていたはずなんだけど…それはどうなったんだ?
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