姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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5. 王子は姫の願いを承諾した

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 なぜ私なのか気になって聞いたけど姫野は答えにくそうにしている。噂になっている彼女と何かあったのかな?聞いてはダメなやつだったのかもしれない…。

「…あれはデマだ。彼女はいない」

「え!そうなの」

 じゃあ、言いにくそうにしていたあの間はなんだったの?

「確かに食事にはいったがあの時は他にも人がいたんだ。あの写真を見ればまるで二人だけで行ったみたいに見えたけど違うんだ」

「ふ~ん、そうなんだね」

 なんだ、あのスクープ報道は間違いだったのか。だけど…。

「でもなぜ私なの?他に頼めそうな人が沢山いると思うんだけど?」

 いつも回りに綺麗な女性が沢山いるよね。あの人達なら喜んで引き受けてくれると思うんだけどな。

「ハッキリ言う。王子なら勘違いすることなく恋人役をやってくれそうだからだ。他の女性に頼むと恋人役で済みそうにないと思って…色々と考えた結果、王子が一番良いと思ったから頼んでいる」

 なるほどね。私なら後腐れなく期間終了したら恋人役をすんなり止めてくれるだろうと思ったわけか。理解はできるけど。

「ん~、でも大丈夫?私だよ?相手の女性が私が恋人で信じるのかな。自分で言うのも何だけど今でも男性に間違えられる女だよ」

 自分で言って悲しいが本当の事だから仕方ない。

「いや、お前だから納得してくれると思う」

 姫野が自信ありげに言ってるけどなぜなのか教えてほしい。

「その顔は納得いってないな」

 私は姫野の言葉に頷いた。

「俺と王子は幼い頃からプリンス&プリンセスとして雑誌に取り上げられてきただろう?その二人が付き合っているとなっても不思議はないだろ」

 うわぁ~、懐かしい言葉を聞いたよ。雑誌に載るときは必ず書かれていたプリンス&プリンセス。黒歴史として葬りさってたわ~。

 確かに今でもネットで検索すれば出てくるらしいから姫野のファンなら知っているのかもしれないけど…。

「そうかな…。あの時の掲載の仕方も少年ぽさを全面に出した演出されてたんだけど。全然女らしさみたいな演出された覚えがない」

 衣装もスカートなんてなかったし、いつも姫野がパステル系統の色の服装で私がブルー系統の服装だった覚えしかない。

 親友の柚菜ちゃんの部屋にはその当時のポスターが額に入って飾られている。今でも一部の方達の間で高額で売買されているらしい。

 いくら付き合いが長い二人でも信じてもらえない確率の方が高いと思うんだけど。

「王子…俺達は26歳になったよな。その二人が再会して付き合ってますと言ったらまわりは信じると思うぞ」

 年齢を出しますか。確かに歳はとったけど困ったことに中身は全然変化がないんだよね。私も昔はこの年齢の女性を見て大人だな~って思っていたけど、いざ自分がこの歳になってみると中身は子供の頃とたいして変わりはないと言うか…。

 私の場合は今まで誰ともお付き合いしたことがないのもそう感じる原因なのかな。でもきっと姫野は違うんだろうな。色んな女性と付き合ってきて色んな経験を積んで精神年齢的に大人になってるんだろうな…。

 何だろうか…複雑な気持ちだな。

「さっきから何を考え込んでいる?」

 いつの間にか姫野が私の隣に来て顔を覗き込んでいた。

「うわぁ!ビックリさせないでよ」

 間近に爽やかイケメンの顔なんて心臓に悪い。

「ずっと声をかけているのに返事がないからどうしたのかと思ったんだ。驚かせたなら悪かったな」

 姫野が自分の席に戻っていった。

 ちょうどそのタイミングでお料理が運ばれてきたので私達は食事をすることに集中した。

 デザートも食べ終わり一息ついた時、姫野がテーブルの上に置いていた私の手を握ってきた。

「なぁ、さっきの話なんだけど前向きに考えてくれないか?頼む」

 私の手を握ったまま姫野が頭を下げた。

 異性に免疫のない私は手を握られていることに緊張していたのと、姫野が困っているのが理解できたのとですぐに返事をした。

「わかった。私で良いなら恋人役引き受けるよ」

 姫野は下げていた頭を上げてとびきりの嬉しそうな顔を見せた。

 こんな顔初めて見た。

 なんだろう…また自分の体が熱い感じがする。

「ありがとう王子。感謝する」

 姫野の嬉しそうな顔を見る事が出来て、人助けできたのでこれで良かったのだと思うことにした。


 だけどこの時、私はまだ何も知らなかったのだ。

 姫野の本当の真意と決意を…。

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