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第1話「連行された少年」
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剣と魔法が幅を利かせ、捕食者たる魔物が跋扈する、
次元の狭間に在る地球の中世西洋風異世界……
四方を大海に囲まれたスフェール大陸の中央部分に、
数多ある中でも有数の強国、リオン王国はあった。
その王都アンペラールは人口5万人を誇る大きな街である。
貴族など上級階級の人間からは『ど底辺』と馬鹿にされ、蔑まれる者達が潜む街……
ここは、最下層の貧民街と呼ばれる『スラム』である。
このようなスラムでも……
食料を始め、生活物資の売り買いが無ければ住人の暮らしは成り立たず、生きてはいけない。
なので毎日、市が立つ。
その市場の一角には店舗すらない、汚れた『むしろ』を敷いた上に、
粗末な品物を並べただけ……
貧しい身なりをした商人達の『店』がひしめいていた。
と、その時。
いきなり誰かが、大声で叫んだ。
手入れだぁ!
またも別の者が叫ぶ。
ヤバイ!
逃げろぉ~!
とも、聞こえて来る。
間を置かず、何と!
そのような場所には全く不似合いな者達が、
豪華なサーコートを着込んだ騎士の一団が、「どかどか」と踏み込んで来た。
彼等はテンプル騎士団と呼ばれる騎士達である。
テンプル騎士団は、創世神教会に在籍する神職者を守護するのが役割の特別な地位にある騎士達なのだ。
騎士達は誰かを探しているらしい。
周囲を鋭い視線で睥睨していた。
とその時。
騎士のひとりが大きな声をあげ、ある方向を指さした。
そこにはみずぼらしいブリオーを着たひとりの少年が座っている。
この少年も商人らしい。
だが少年の前にあるむしろに載っているのは、商品というよりは、
ほとんど壊れたガラクタである。
騎士達は走り寄り、少年を指さし、問い質す。
「おい、ジャンク屋のダン! ダン・ブレ―ヴというのは貴様か!」
高圧的に叱りつけるような物言い。
しかしダンと呼ばれた少年はあまり臆さずに、ゆっくりと答える。
「……何だよ、お前ら手入れか?」
「……………」
騎士達は無言である。
全員ねめつけるようにダンを見た。
少年は大袈裟に肩をすくめ、言葉を続ける。
「でも俺の売るもんで、ヤバい品はないよ。調べるだけ調べたら良いさ」
少年の言う通りである。
彼の前に並んで居る『商品』は、捨てられたものをそのままか、
少しだけ直してあるものばかりだ。
ダンがジャンク屋である事に間違いはなかった。
しかし騎士達は、ダンの質問に答えずに、「ずいっ」と詰め寄った。
直接言質を取るつもりらしい。
「答えろ! 貴様がジャンク屋のダンなのかと、聞いておるのだ!」
「う~ん、お前らは衛兵じゃなく騎士か。じゃあ手入れじゃないな。確かに、俺がジャンク屋のダンだけど……」
「そうか! 皆、聞いたな! コイツは間違いなく、ダンだ!」
リーダーらしき騎士がそう言うと、
「おおおおおっ!! よっしゃ~~!! 確保だああ~~っ!!」
騎士達全員が鬨《とき》の声をあげた。
ダンは……嫌な予感がした。
「おい、ダン! 創世神様にお仕えする巫女様のお告げだ!」
「み、巫女様のお告げ? じゃ、じゃあ! 俺には関係ない……」
「関係なくない! 信じがたいが、貴様如き最低のクズが救世の勇者様に認定されたのだ」
「はあ? な、何、俺が勇者様? 笑えない冗談だろ?」
「バカモノ! 冗談ではない! 聖なる神託が下されたのだ! 我らとて、このようなゴミ溜めに来たくはないわ!」
「お、おいおい! 言うに事を欠いて俺をクズ呼ばわりし、その上、ゴミ溜めは酷いだろ」
「黙れ! さっさと来い! 枢機卿様と巫女様がお待ちかねだ! その後は国王セザール陛下から、貴様は正式に救世の勇者として認定される!」
騎士達はむしろを跨ぎ、ダンへ詰め寄った。
置かれていた商品も構わず踏みつけ、蹴飛ばした。
「おい! お前ら酷い事するな! 俺がまた使えるよう、直したのに!」
「黙れ! 抵抗すると、力に訴えても連れて行くぞ!」
騎士のリーダーらしき者が剣を抜き放った。
刀身が陽の光を受け、ギラリと光った。
どうやら騎士達は『本気』らしい。
ダンは大きく息を吐き、頷くと、無抵抗の意思を示したのである。
次元の狭間に在る地球の中世西洋風異世界……
四方を大海に囲まれたスフェール大陸の中央部分に、
数多ある中でも有数の強国、リオン王国はあった。
その王都アンペラールは人口5万人を誇る大きな街である。
貴族など上級階級の人間からは『ど底辺』と馬鹿にされ、蔑まれる者達が潜む街……
ここは、最下層の貧民街と呼ばれる『スラム』である。
このようなスラムでも……
食料を始め、生活物資の売り買いが無ければ住人の暮らしは成り立たず、生きてはいけない。
なので毎日、市が立つ。
その市場の一角には店舗すらない、汚れた『むしろ』を敷いた上に、
粗末な品物を並べただけ……
貧しい身なりをした商人達の『店』がひしめいていた。
と、その時。
いきなり誰かが、大声で叫んだ。
手入れだぁ!
またも別の者が叫ぶ。
ヤバイ!
逃げろぉ~!
とも、聞こえて来る。
間を置かず、何と!
そのような場所には全く不似合いな者達が、
豪華なサーコートを着込んだ騎士の一団が、「どかどか」と踏み込んで来た。
彼等はテンプル騎士団と呼ばれる騎士達である。
テンプル騎士団は、創世神教会に在籍する神職者を守護するのが役割の特別な地位にある騎士達なのだ。
騎士達は誰かを探しているらしい。
周囲を鋭い視線で睥睨していた。
とその時。
騎士のひとりが大きな声をあげ、ある方向を指さした。
そこにはみずぼらしいブリオーを着たひとりの少年が座っている。
この少年も商人らしい。
だが少年の前にあるむしろに載っているのは、商品というよりは、
ほとんど壊れたガラクタである。
騎士達は走り寄り、少年を指さし、問い質す。
「おい、ジャンク屋のダン! ダン・ブレ―ヴというのは貴様か!」
高圧的に叱りつけるような物言い。
しかしダンと呼ばれた少年はあまり臆さずに、ゆっくりと答える。
「……何だよ、お前ら手入れか?」
「……………」
騎士達は無言である。
全員ねめつけるようにダンを見た。
少年は大袈裟に肩をすくめ、言葉を続ける。
「でも俺の売るもんで、ヤバい品はないよ。調べるだけ調べたら良いさ」
少年の言う通りである。
彼の前に並んで居る『商品』は、捨てられたものをそのままか、
少しだけ直してあるものばかりだ。
ダンがジャンク屋である事に間違いはなかった。
しかし騎士達は、ダンの質問に答えずに、「ずいっ」と詰め寄った。
直接言質を取るつもりらしい。
「答えろ! 貴様がジャンク屋のダンなのかと、聞いておるのだ!」
「う~ん、お前らは衛兵じゃなく騎士か。じゃあ手入れじゃないな。確かに、俺がジャンク屋のダンだけど……」
「そうか! 皆、聞いたな! コイツは間違いなく、ダンだ!」
リーダーらしき騎士がそう言うと、
「おおおおおっ!! よっしゃ~~!! 確保だああ~~っ!!」
騎士達全員が鬨《とき》の声をあげた。
ダンは……嫌な予感がした。
「おい、ダン! 創世神様にお仕えする巫女様のお告げだ!」
「み、巫女様のお告げ? じゃ、じゃあ! 俺には関係ない……」
「関係なくない! 信じがたいが、貴様如き最低のクズが救世の勇者様に認定されたのだ」
「はあ? な、何、俺が勇者様? 笑えない冗談だろ?」
「バカモノ! 冗談ではない! 聖なる神託が下されたのだ! 我らとて、このようなゴミ溜めに来たくはないわ!」
「お、おいおい! 言うに事を欠いて俺をクズ呼ばわりし、その上、ゴミ溜めは酷いだろ」
「黙れ! さっさと来い! 枢機卿様と巫女様がお待ちかねだ! その後は国王セザール陛下から、貴様は正式に救世の勇者として認定される!」
騎士達はむしろを跨ぎ、ダンへ詰め寄った。
置かれていた商品も構わず踏みつけ、蹴飛ばした。
「おい! お前ら酷い事するな! 俺がまた使えるよう、直したのに!」
「黙れ! 抵抗すると、力に訴えても連れて行くぞ!」
騎士のリーダーらしき者が剣を抜き放った。
刀身が陽の光を受け、ギラリと光った。
どうやら騎士達は『本気』らしい。
ダンは大きく息を吐き、頷くと、無抵抗の意思を示したのである。
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