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第18話「またまた! ど~してこうなった?」

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 ここは国王セザールから譲られて『ダンの自宅』となった、魔境付近に在る廃城である。
 巣食っていた元魔王軍らしいノーライフキング一体と、数多の亡霊達を天へ還したダン、スオメタルではあったが……
 何故か「成仏」せず残っていた不思議ちゃんの亡霊メイド少女タバサ、
 そして復活した不死者アンデッド、スパルトイ軍団を従える結果となってしまった。

 結局眠る事は出来なかったが……
 とりあえず城の中で、一夜を過ごしたダンとスオメタルは……
 翌朝、大いに首を傾げていた。

『ううむ。またまたか。ど~して……こうなった? 一気に居候いそうろうが増えた。俺とスオメタルのふたりで、のんびり暮らそうと思っていたのに』

『いろいろ原因はあると思いますが……やはりマスターと私の唯一の弱味によるところが大きいでございますね』

『う~ん……唯一の弱味って、つまりどが付く不幸な相手に対しては、つい情に流されるって奴だ』

『御意でございます』

 歴史は繰り返される。
 というか……
 ダンとスオメタルは全く同じやり取りを繰り返していた。

 今ダンとスオメタルのふたりは、外のベンチに腰掛けている。

 ベンチに座った、ダンとスオメタルの視線の先には、
 雑草がぼうぼう生い茂り、荒れ果てていた畑が、綺麗に整地されており……
 結構な数の者が忙しそうに立ち働いていた。

 しかし違和感がある。
 立ち働いているのは人間ではなかった。

 何と!
 骸骨である。
 そう、付き従った不死身のスパルトイ達50体余りが「まめまめしく」畑仕事をしているのだ。
 
 立ち働くスパルトイ達は、意外にも!
 畑仕事に手慣れていた。

 彼等の前世は半農半士だったらしい。
 
 ちなみに半農半士とは……通常は農村等に居住、農林業に励み、
 緊急時には出動体制をとる戦士の事だ。
 なので、戦うだけではなく、いろいろ生活に密着した優れた技術を持っているらしいのだ。
 知識も豊富らしく、ダンとスオメタルは嬉しい誤算というか、良き配下を得た事となった。
 
 それにしても骸骨の農夫とは……
 他者が見たら「何という、シュールな光景だ」と言われそうではある。

 やがて、その内のひとりがぎくしゃくしながらも、
 素早い動きでダンとスオメタルの下へ歩み寄って来た。
 
 このスパルトイが恭順の意思を示した、
 彼等のまとめ役『スパルトイリーダー』である。
 
 ダンへ向かい、「びっ!」と敬礼をする。

『ダン様、城内の清掃と片付けが終了。その後の畑の草むしりと整地、そろそろ終わります』

『おいおい、良く働くなあ……城内の掃除と片付けは俺達でやると言ったのに……ありがとう。そしてごくろ~さん、じゃあ休んで良いよ』

『いえ、我々スパルトイは疲れないので休みは不要です。 何か仕事を申し付けてください』

 と、そこへ……
 黒ゴスロリメイド服姿の亡霊少女がひとり、「びゅっ」と飛んで来た。

 亡霊少女はダンとスオメタルが座るベンチの背後に浮かんでいる。
 こちらは……
 ほぼ無理やりついて来たタバサであった。

『ね~ね~、ダーン様ぁ。城でまったりするのも飽きちゃったぁ。ノーライフキングが持ってた魔導書読むのも昼寝するのもぜ~んぶ飽きちゃったよぉ~~、何とかして~! 暇だったら相手してよ、ね~~!』

 超が付く怠惰なセリフにむかついたのか……
 スパルトイリーダーが「がちゃっ」と骨を鳴らし、
 タバサを威嚇する。

『こら!』

『わう、びっくりした、いきなり脅かさないでよぉ、骨吉ほねきちぃ!』

『何が骨吉だっ! 無礼者め!』

 スパルトイリーダーはタバサを睨むと、ダンとスオメタルに向き直る。

『ダン様、スオメタル様、こ~いう役立たずの怠惰な性悪ゴーストは我々の敵です。すぐに解雇すべきだと思います』

 対して、タバサも負けていない。

『何だとぉ、肉体労働しか能がない骨野郎。あ、笑っちゃう~。骨だけでぇ、肝心の肉体がね~でやんの』

『黙れ、クソ怠け者!』

『うるせ~、馬鹿ワーカホリック!』

 骸骨と亡霊の、不毛な争いが激化して来た。
 なのでダンとスオメタルはふたりを分断する。

 ダンはスパルトイリーダーへ告げる。

『ほらほら君達は、そこの空き地でストレス発散に武道訓練でもして来なさい』

『了解致しました、ダン様』

 そしてスオメタルはタバサをなだめる。

『タバサには今夜、魔法を教授するでございます。だから予習として、与えた部屋で魔導書じっくり読むでございます』

『ホント? イエッサーです、スオメタル様』

 結果、スパルトイリーダーは仲間達と荒れ地の整地を始めた。
 一方、タバサの姿はあっという間に消えていた。
 自分の部屋へ戻ったらしい。

『困ったもんだ』
『でも居候達も、適性と立ち位置が見えて来たでございますよ』

『だな! まあ俺とスオメタルのふたりだけだったから、城の住人が増えたと思えば良いか』
『御意でございます』

『という事で、朝メシにしようか。昨日、王都で買った弁当が収納腕輪に入れてある』
『御意でございま~す』

 ダンとスオメタルは顔を見合わせ、苦笑すると……
 仲睦まじく、城へ歩いて行った。
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