頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話

東導 号

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第34話「初出勤!③」

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 いずれ秘書を配属させると、長官のアレクサンドラから事前に聞いてはいた。
 しかし、いきなり初出勤の当日、秘書本人が単独で、朝一番に自分の部屋へ尋ねて来るとは思わなかった。
 ストロベリーブロンドの美女エステル・ソワイエに「ふいをつかれた」事で、シモンは『女子苦手病』が再発してしまったのだ。

 制服姿のエステルは素敵だったが、スーツ姿の彼女も「きりっと」して、素晴らしい。

 年若い少年のように真赤になってもじもじし、うつむくシモン。
 対して、エステルは、少し戸惑いながらシモンをいたわる。

「あの、局長、大丈夫ですか? 顔、真赤ですよ」

「い、い、いや! じ、実は、お、俺、女子が苦手なので……わ、悪いけど、鎮静ちんせいの魔法を使わせて貰います」

「え? 女子が苦手? 鎮静の魔法を使う?」

 補足しよう。
 鎮静の魔法とは、文字通り騒ぎや高ぶった気分などを、鎮め落ち着かせる魔法である。
 
「よ、よいっと!」

 シモンは、「ささっ」と鎮静の魔法を発動。
 気持ちを落ち着かせた。

 再び補足しよう。
 実は……
 この鎮静の魔法こそ、シモンが自分自身へ行使する治癒魔法において、最も頻度の高い魔法なのである。
 シモンはトレジャーハンターデビュー当時、未知の場所に赴く際、結構多用していた。
 現代地球の我々ならば、初めてのお化け屋敷へ入る時、またはホラー映画を見る時にも有効な魔法だといえよう。

「はああっ……ようやく、落ち着きました。……まあ、とりあえず座ってください」

「え? 今、魔法を発動したのですか? 発動に必要な言霊ことだま詠唱えいしょうがほとんど聞こえませんでしたけど」

「ああ、大丈夫。既に発動しましたから」

「…………確かに、魔力の放出は感じましたが、本当に?」

 エステルは思い切りジト目である。
 「本当に魔法を使ったの?」かという、半信半疑な雰囲気だ。
 
 ここで言霊の詠唱はなしとか、発動時間もかからずとか、能書きをたれると単なる自慢となる。
 話題を変えた方がベストである。
 改めて行う挨拶が無難である。

「ええっと、じゃあ、俺も自己紹介しましょう。先日、王国復興開拓省に赴任。局長となったシモン・アーシュです。宜しくお願い致します」

 シモンは遅ればせながら、丁寧に自己紹介をした。
 しかし、エステルは反応しなかった。
 もっと気になる事があるようだ。

「あの、局長」

「はい、何でしょう?」

「女子が苦手って……私が、苦手なのですか?」

 私が苦手? ……とは、微妙な質問である。
 シモンはストレートに答えられなかった。
 
 はっきり言って、答えは『いろいろな原因』により……だ。
 シモンの『女子苦手症』はいろいろな原因がありすぎる。
 幼い過去に戻ってじっくり話をする必要もあるし、初対面の女子に告げてはまずい内容もある。

 話せば話すほど、ややこしくなりそうである。
 第一、話が長くなる。
 時間がかかって不毛だとシモンは考えた。

 なので、更に話題を変える事にした。

「ええっと、エステルさん」

「はい、アーシュ局長」

「念の為、お聞きしますけど……貴女が俺の秘書さん……なんですか?」

「はい、本日付けで、人事部より辞令が出て、私エステル・ソワイエはシモン・アーシュ局長の専属秘書になりました。お聞きになっていませんか?」

「え? 専属秘書? 長官から、秘書がついてくれるとは聞いていましたけど」

「多分、人事部担当の連絡ミス。つまり行き違いですね。通常ですと、間違いなく連絡が行きますから」

「そうなんですか……まあ、良きサプライズという事にしときます。でも俺に専属秘書さんがついてくれるなんて、全然現実感がないんですよ」

 シモンがそう言うと、エステルは花が咲くように微笑んだ。
 とても魅力的な笑顔である。
 鎮静の魔法がなければ、舞い上がってしまうに違いない。
 王都で人気の有名美人女優みたいだと思ってしまう。

「そういえば、局長にお会いするのは2度目でしたよね?」

 シモンが落ち着き、エステルの発言も差し障りのない話題に変わった。
 安堵したシモンは軽く息を吐く。

「ふう、ああ、1階の魔導昇降機ホールで会いましたよね?」

「ですね! あ!」 

 シモンが調子を合わせた時。
 エステルがハッとした。
 彼女の視線は壁にかかった魔導時計に注がれていた。

「ああっ! きょ、局長! た、確かもう幹部会議の時間ですよ。早く長官の執務室へ急がないと」

「あ、やば!」

「局長、誠に申し訳ありません。私に引き留められたと仰って構いません」

「いやいや、集合時間を失念していた俺が全て悪い。そんな事言わないですから!」

 エステルと「なんやかんや」と話している間に……
 時刻は会議開始直前の午前8時58分となっていた。
 シモンは慌てて、5階の長官執務室へ走ったのである。
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